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On the Production
by 井口健二
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■シルク・ドゥ・ソレイユ、ボディ・ハント、カミハテ、宇宙人王さんとの遭遇、駆ける少年、ミロクローゼ、横道世之介、ダーケストアワー
りが点けられた時、彼女の前に座っていたのは、地上で迷子
になったET?だった。
そのETは、ローマのサンピエトロ寺院の近くのアパートに
現れ、そこで何かをしているところを住人が発見。その場は
逃亡したが、2週間後に再びアパートに現れたところを住人
に取り押さえられた。
しかもその時ETは何かを探していた様子で、回収されたそ
の品物の用途と、行方不明だった2週間の行動が尋問の対象
となっているようだ。ところがその尋問はあまりに過酷で、
ついに女性は隙を見てETの救出を試みる。
製作と脚本と監督はアントニオ&マルコのマネッティ兄弟。
すでに2007年の埼玉SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の長編コ
ンペティション部門に出品された作品や、それ以前にも参加
したオムニバス映画でファンタ系映画祭の観客賞なども受賞
しているようだ。
主演は、2009年10月17日付の「東京国際映画祭」で紹介した
『テン・ウィンターズ』に出演していたというフランチェス
カ・クティカ。本作が初主演のようだ。
他に、2011年『あしたのパスタはアルデンテ』でイタリア・
ドナッテロ賞受賞のエンニオ・ファンタスティキーニ、兄弟
監督の作品には3本目という常連のジュリエット・エセイ・
ジョセフらが脇を固めている。
なお本作に関して、ウォール・ストリート・ジャーナルは、
「中国の経済力と影響力が、西側に困惑と誤解をもたらして
いることの現れ」と論評し、これに対し「法制晩報」には、
「秘密警察はこの宇宙人(中国)を元々理解したくなかった
のだ」との反論とも取れる主張が載ったそうだ。
映画の結末は、SF映画ファンには今更と思えるものだが、
世界に論争の種を供給することにはなったようだ。

『駆ける少年』“...دونده”
2011年11月『カット』を紹介したイランのアミール・ナデリ
監督による1986年ナント三大陸映画祭グランプリを受賞した
作品。世界にイラン映画の実力を知らしめたと言われる作品
がようやく一般公開される。
主人公は、外国の船が多数往来する港の近くで浜に打ち上げ
られた廃船に1人で暮らす少年。ゴミ捨て場で廃品を拾った
り、嵐の後は数多く流れ着くという浜辺の空き瓶を集めたり
して現金を稼いでいるが、それらの仕事にはそれぞれルール
があって、なかなか仲間には入れない。
それでも少年は徐々に身入りの良い仕事を見付るなど、少し
ずつお金を貯めて行く。その間には小さな飛行場にセスナ機
を見に行ったり、仲間とサッカーをしたり、特に少年は走る
のが好きで、貨物列車との競争には情熱を燃やしていた。そ
して少年には、何よりの向上心があった。
ナデリ監督自身が幼い頃に両親を亡くし、教育も満足に受け
ていないなど、この主人公と似通った境遇だったようだが、
その中でも失わなかった向上心が今の地位をもたらしている
ようだ。そんな監督自身の思いと、イランという国家に対す
る思いが交錯する作品になっている。
本作のタイトルを見たときには、2002年3月紹介『少年と砂
漠のカフェ』を思い出した。アボルファズル・ジャリリ監督
によるその作品も、2001年ナント三大陸映画祭グランプリを
受賞しているが、ジャリリ監督はナデリ監督の最大の信奉者
の1人だそうだ。
沖合を行き交う外国船の風景や大空に舞うセスナ機、それら
が少年の希望を描いていることも確かだが、それと同時に少
年の走る姿が彼の心情を見事に描き出す。そんな想いがスタ
ンダードの画面にシンプルに表現されている作品だった。
そして少年の走る姿は、『少年と砂漠のカフェ』の時にも書
いたが、少年の健気さを見事に表現して、観客の心に深く残
るものだ。
なお、本作は東京ではオーディトリアム渋谷で12月下旬より
上映されるものだが、ナデリ監督は『カット』でもそうだっ
たが、会期中は毎日その会場に通うことが決まりのようで、
会場では気軽にサインや握手にも応じてくれるそうだ。
実は今回の試写会場にも訪れていて、僕は次の予定が詰まっ

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10月07日(日)
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