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On the Production
by 井口健二
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■大恐竜時代、モンスター・ホテル、自縄自縛の私、ファースト・ポジション、アパートメント:143、長良川ド根性、ELEVATOR、4:44
1人目は米海軍軍医の父を持つ11歳のアラン。彼はバレエが
好きでたまらないと言い、厳しいストレッチなども全く厭わ
ない。そして2人目は、そのアランの姿に憧れる同い年のガ
ヤ。イスラエル出身の彼女もグランプリを目指す。
3人目はシェラレオネ出身のミケーラ。戦火の中で両親も亡
くした14歳の少女は、黒い肌、筋肉質の体躯というハンデを
跳ね返す。また4人目のジョアンも故郷コロンビアを離れ、
アメリカでバレエを学んでいる。しかし16歳の少年はまだ母
親が恋しい年頃だ。
5人目のレベッカは17歳。金髪に白い肌、青い目の彼女は、
学校では「バービー」と呼ばれるセレブのお嬢様だ。しかし
実生活では何不自由ない彼女が目指すのは、お金では買えな
い栄光だ。
そして6人目の12歳のミコは、カリフォルニアに住む日英の
ハーフ。日本人の母親はステージママで、彼女と10歳の弟を
目的に向って厳しく育ててきたが、無邪気な弟はレッスンに
嫌気がさしている。
こんなそれぞれに違うものを背負った少年少女たちが、世界
各地で開かれる予選を勝ち抜き、本選に向かって行く。それ
は時に厳しく、時に優しく、優美に力強く描かれる。しかも
そこには子供とは思えない、部外者の僕らには超絶とさえ観
えるテクニックが次々に披露されるものだ。
実は6月に『バレエに生きる』“Une vie de ballets”とい
うドキュメンタリーを観て、それは歴史的なバレエの名演を
記録した作品だったが、バレエを普段観ていない僕には何か
違和感があった。
しかし本作は純粋に夢に向かって行く若者たちの姿を追った
もので、さらにそこには世界の現実も垣間見せるなど、見事
な作品。これなら僕にも判り易かったものだ。
『アパートメント:143』“Emergo”
2010年9月紹介『リミット』のロドリゴ・コルテス監督が、
製作と脚本を務めた超常現象ストーリー。
映画はPOV形式で進められ、物語は研究者たちがアパート
の一室に向かい、その部屋の各所に監視カメラを設置すると
ころから始まる。そして作品はそれらの監視カメラの映像で
構成されるものだ。
その部屋には、父親と子供2人が暮らしており、その部屋で
怪しげな物音などの異常現象が起き、その調査に学者と男女
のアシスタントの計3人が訪れている。こうして3日3晩連
続の監視体制が敷かれ、その解析映像などが描かれる。
ただし子供の内で思春期の長女は反抗的で、最初は寝室にカ
メラを置くことも拒否する。ところがカメラを設置し始めて
すぐに異常現象が起き始め、その現象はさらにエスカレート
して行く。
それに対して研究者たちは家族へのインタヴューなども重ね
て、徐々にその家族の置かれた状況などが明らかにされ、異
常現象の原因が追求されて行くが…
出演は、2011年11月紹介『人生はビギナーズ』などのカイ・
レノックス、テレビやインディーズ映画に出演のジーア・マ
ンテーニャ、2009年12月紹介『フローズン・リバー』などの
マイクル・オキーフ。
他に、2002年『バイオハザード』の第1作や2004年3月紹介
『ヴェロニカ・ゲリン』に出演のフィオナ・グラスコット、
2007年11月紹介『パルス』などのリック・ゴンザレス、08年
9月紹介『アラトリステ』に出演のフランセクス・ガリード
らが脇を固めている。
監督は、本作でコルテスに見出されたカルレス・トレンス。
バルセロナの出身でカリフォルニアで映画を学んだ俊英が、
事前に制作した短編映画の評価で大抜擢されている。
話の全体は『パラノーマル・アクティビティ』に極めて近い
が、後半の家族の問題が出てきてからがなかなか巧みに作ら
れていた。特に、研究者たちが事件の真相を炙り出すまでの
駆け引きなどの演出や俳優たちの演技力も、そこそこの顔ぶ
れを集めただけのものはあったようだ。
因にコルテスは、来年公開予定の新作“Red Light”の準備
のために超常現象の調査を行った中で本作のアイデアを得。
同時に脚本を書き上げたものの一緒に映画化するのは好まし
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09月23日(日)
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