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On the Production
by 井口健二
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■黄金を抱いて、アルゴ、ロックアウト、駄作の中だけに、ミラクル・ツインズ、エクスペンダブルズ2、ドリームハウス、ニモ3D+Hobbit
のために、北京の住居兼ギャラリーで制作を続ける様子など
に密着し、会田自身の芸術への想いや、家族、仲間との生活
の様子を記録している。
それにしても、会田本人やその夫人らが、かなりサーヴィス
精神旺盛な人たちのようで、作品はほとんど嫌味なども感じ
られないものになっている。その中で、ある意味全精力を賭
けて自分の構想に立ち向かう会田の姿が描かれている。
因に作中で描かれているのは、「灰色の山」と「滝の絵」、
他にも2作ほどが写されているが、それらの絵を見るだけで
も価値が感じられる。しかもそこに会田がその絵に賭ける心
情などがモノローグのように挿入されている。
これは絵画制作のドキュメンタリーとしても堪能できる作品
になっていた。
その会田は、子供の頃はAD/HD(注意欠陥・多動性障害)
だったと自覚しているようだ。そして遺伝性とされるその障
害によって小学生の息子も学校を変らざるを得なかったとさ
れている。しかしその父親は子供の頃から絵画の才能を発揮
し、すでに息子もPC上で見事な3D絵画を制作する。
実は、後日に知的障害者のドキュメンタリーを観て、その障
害者についてもいろいろ考えさせられたが、障害の程度の差
はあるにせよ、その才能の方向によってもこうも違う人生に
なってしまうことにも、問題の難しさを感じさせた。
因に本作の後半に取材されている個展は、東京市ケ谷で開催
されており、実はその当時に前を通りかかって掲げられてい
たバナーに「何じゃコリャ」と思った記憶がある。案外身近
な場所で行われていたことにも驚いた。
なお、会田氏の次の個展は、今年11月17日から来年3月31日
まで六本木の森美術館で開催されるようで、約100点が展示
されるとのこと。東京国際映画祭の会期中でないのは残念だ
が、できたら観に行きたいと思ったものだ。

『ミラクル・ツインズ』“The Power of Two”
嚢胞性線維症(CF)という難病を持つ日系アメリカ人の女
性双生児の姿を追ったドキュメンタリー。
この難病について、日本のインターネットページで調べると
治療法には対処療法しかないように書かれているが、本作の
舞台であるアメリカでは、臓器移植による治療が一般的に行
われているようだ。その中心がスタンフォード大学であるよ
うにも描かれている。
そして登場するのは、アナベル・万里子とイサベル・百合子
という双子の姉妹。2人は名前が表す通り日系人で、母親が
日本人、父親がドイツ人の家庭に生まれるが、本来は日本人
には稀という遺伝性の病を、一卵性双生児であるために一緒
に発症してしまう。
しかし彼女らは、それぞれが1回及び2回の移植手術によっ
て、現在は極めて良好な健康状態を取り戻しているようにも
見える。そんな姉妹は、アメリカで「ミラクル・ツインズ」
と呼ばれているものだ。
そんな姉妹を追ったドキュメンタリーだが、映画を観るまで
は単純に手術を受けるまでの苦難などを描いた難病ものだろ
うと予想していた。ところが実際の作品は、難病の枠を超え
た移植医療の問題を扱っており、さらに移植医療の立ち遅れ
が著しい日本の問題が主に描かれた作品になっていた。
それは姉妹が日系人であったことにも拠りそうだが、そこで
は宗教の問題や、日本における移植医療の歴史的な経緯など
も紹介され、日本の移植医療が極めて特異な道を歩んだこと
も紹介されている。
またその中では、臓器提供者の父親が「アメリカではヒーロ
ーなんだよね」と言いながら、恐らく誹謗中傷の的にされた
のであろう姿や、何より来日の際に「日本人のドナーに会う
ことが楽しみ」と語っていた姉妹が、結局その面会シーンが
映画に登場しない辺に、問題の深さを感じさせたものだ。
その一方で、日本における政治的な動きとしては、自らが父
親への生体肝移植のドナーでもある河野太郎衆議院議員が登
場し、その取り組みも紹介される。その中ではようやく移植
関連法が改正されたことも報告される。因に河野氏は、僕が

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09月09日(日)
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