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On the Production
by 井口健二
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■三大映画祭週間、やがて哀しき…、ひみつのアッコちゃん、カルロス、声をかくす人、ナナとカオル2、ふがいない僕は…+Time and Again
活動を繰り返して行く。そしてその一方では実業家としての
隠蓑も持って、中東から欧州への武器の供給なども行う。
しかし世界は徐々に東西冷戦の解消へと向かい、やがてソ連
の後ろ楯を失ったカルロスはその活動の場を奪われて行く。
それでも最後まで夢は失わないカルロスだったが…
映画ではその第1部で日本赤軍の活動がいろいろと描かれ、
それは日本人の観客としては何か不思議な気分に襲われるも
のだ。それらは僕らの世代には間違いなく記憶に残っている
ものだが、果たして今の若い人たちにはどのように映るもの
なのだろうか。
そんな日本人にはちょっと意外な展開から始まる作品だが、
第2部、第3部と続いて行く中では、どちらかというとカル
ロスが歴史の流れの中に翻弄された哀れな男のようにも見え
る。その辺は意図的なものなのだろう。
出演は、2008年2月紹介『バンテージ・ポイント』や今年4
月紹介『タイタンの逆襲』などのエドガー・ラミレス。他は
主にヨーロッパ映画で活躍中の俳優たちが脇を固めている。
それにしてもこの時代の人々の生き生きとしていたこと。勿
論、テロは最悪の犯罪行為だが、この時代の政治家たちが人
命を尊重し、それによってまた政治が動いていた。そんなこ
とも理解できる作品だ。
それを、人の生命など歯牙にも掛けないブッシュが強引に終
わりにした。その恫喝姿勢が世界の活力を奪ったことも、こ
の映画は描いているようだ。因にカルロスはアメリカ人に対
する攻撃は行わなかったようで、このため合衆国からの訴追
はされていない。

『声をかくす人』“The Conspirator”
1865年の「リンカーン大統領暗殺事件」を題材にしたロバー
ト・レッドフォード監督による2011年作品。
大統領の暗殺が、俳優ジョン・ウィルクス・ブースによって
行われたことは知っていたが、襲撃が同時に3カ所で行われ
た共同謀議であり、共犯者の中に女性がいたことなどは全く
知らなかった。そんなアメリカ史の一面が描かれた作品。
そして主人公は、その女性メアリー・サラットの弁護人を務
めたフレデリック・エイケン。元北軍大佐だった弁護士エイ
ケンは、前司法長官で南部出身上院議員の跡を継ぐ形でその
裁判に関ることになる。しかしエイケン自身も、最初は彼女
を有罪と思っていたのだが…
南部出の未亡人で敬虔なクリスチャンでもあるサラットは、
2人の子供の養育のため下宿屋を営んでいた。その下宿屋に
ブースらが出入りし、そこで謀議が進められたことは確かな
ようだ。しかしそれを彼女が知っていたのか否か。その裁判
で彼女は身の潔白を主張した。
こうして裁判が進められる中、エイケンは徐々に彼女の無実
を信じるようになる。ところがリンカーンの側近だった陸軍
長官は、犯人らが民間人であるにも関らず軍事法廷を開催。
一気に彼ら有罪にして処刑することを主張する。
そこには国内の混乱を早期に終結し、国情を安定させようと
する政権の狙いもあった。こうして政治的な思惑も行き交う
中で裁判は続けられて行った。
サラットが有罪であったか無罪であったかについては、今も
解明されていない歴史の謎のようだが、物語はそのことより
も、裁判が政治的な意図で行われ、ある種の謀略であったこ
とは明白に描いている。
出演は、ジェームズ・マカヴォイ、ロビン・ライト、ケヴィ
ン・クライン、トム・ウィルキンスン。さらにエヴァン・レ
イチェル・ウッド、ダニー・ヒューストン、アレクシス・ブ
レデル、ジャスティン・ロング、ジョニー・シモンズらが脇
を固めている。
脚本はジェームズ・ソロモン。11歳の時に観た『大統領の陰
謀』に感銘を受けてジャーナリストを目指したという脚本家
が1994年に裁判記録を発見し、以来18年を掛けて完成された
作品が、『大統領の陰謀』の主演者レッドフォードの手で映
画化されたものだ。

『ナナとカオル第2章』
2011年2月紹介『ナナとカオル』の続編。甘詰留太原作、白
泉社『ヤングアニマル』連載のソフトSM漫画が再び映画化
された。

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07月29日(日)
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