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On the Production
by 井口健二
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■ピラニア2、凍える牙、トガニ、セブン・デイズ・イン・ハバナ、かぞくのくに、DON'T STOP、鍵泥棒メソッド、LIGHT UP NIPPON+Valerian
は2003年3月紹介『D.I.』のエリア・スレイマン、金曜日
がノエ、土曜日は2001年12月紹介『バスを待ちながら』のフ
ァン・カルロス・タビオ、日曜日はフランスのローラン・カ
ンテ。それぞれが独自の色彩の作品を描いている。
出演は、月曜日のジョッシュ・ハッチャースン、火曜日の映
画監督でもあるエミール・クストリッツァ、木曜日のスレイ
マン監督の他は、いずれも地元の水曜日はメルヴィス・エス
テベス、金曜日はオテロ・レンソリ、土曜日はミルタ・イバ
ラ、日曜日はナタリア・アモーレ。因に日曜日のナタリアは
実際にその家に住む女司祭だそうだ。
これらの人たちによって正に今のハバナの様子が描かれる。
そこにはもちろんフィデル・カストロの姿も登場するが、全
体的な印象は共産国というよりは自由で奔放な民衆の姿であ
り、ソ連の庇護がなくなって生活水準などはかなり低下して
いるかも知れないが、それでも逞しく生き続けている人々の
姿だ。
それらが軽やかなキューバの音楽と共に描かれる。中でもノ
エ監督の金曜日では、妖しいリズムと共に描かれるファンタ
スティックな映像が、『エンター・ザ・ボイド』にも繋がり
興味深かった。

『かぞくのくに』
2006年7月『ディア・ピョンヤン』と、2011年2月『愛しき
ソナ』という2本のドキュメンタリー作品を紹介している在
日コリアン監督ヤン・ヨンヒによる初のドラマ作品。
朝鮮総聯の幹部を父親に持つ一家の兄妹の物語。1970年代初
頭の帰国事業によって、当時16歳たっだ兄は北朝鮮に渡り、
幼かった妹は両親と共に日本に残った。それから25年、北朝
鮮で妻子と暮らす兄が、病気治療のための短期の来日で帰っ
てくる。
1997年の物語。許された滞在期間は3カ月。その間に兄は病
院の検査を受け、同窓会に出席してかつて思いを寄せた女性
と再会し、妹とショッピングに出掛けて自らの思いを妹に託
す。しかしそれらの行動は監視者によって見張られていた。
監督は、そこに現れたものしか写せないドキュメンタリーで
はない、真実の姿をドラマで描きたかったのだそうだ。特に
描かれた兄妹の会話は、正に真実の通りで、妹はその通りの
言葉を兄に返したとのことだ。
ただし、監視員との対話や別れのシーンは、実際にはそのよ
うなことはしていないが、監督自身の思いがそこに表わされ
ているのだそうだ。因に別れのシーンではシナリオにはなか
った場面が即興で演じられているようだ。
出演は、2009年6月紹介『空気人形』などの井浦新と2012年
3月紹介『愛と誠』などの安藤サクラ。安藤は2007年9月紹
介『風の外側』でも在日の役だったが、そういう風貌なのか
な。また井浦は最近ARATAの芸名から改名したそうだ。
他に韓国俳優で監督でもあるヤン・イクチュン。さらに京野
ことみ、宮崎美子、津嘉山正種、諏訪太朗らが脇を固めてい
る。因に日本側の配役には日本語が正確に喋れるとという条
件から日本人の俳優が起用されている。
結末の展開は事実の通りだそうだが、その理由はいまだに監
督にも不明とのこと。そしてその後のことは、監督の過去の
ドキュメンタリーにも描かれているものだ。
帰国事業の問題は、部外者の我々にはほとんどその実態など
は不明だが、今回の作品に関連した監督のベルリン国際映画
祭での発言などを読むと、日本人の側にもその原因の一部は
あるようで、その辺を描いた別のドラマ作品も期待したくな
った。
なお本作は、ベルリン国際映画祭のフォーラム部門で上映さ
れ、国際アートシアター連盟賞を受賞している。

『DON’T STOP』
2006年7月紹介『日本以外全部沈没』などの俳優小橋賢児が
2007年に俳優を休業し、渡米や世界放浪などを体験した後に
帰国。新たに映像作家として復帰した長編第1作のドキュメ
ンタリー。
起業家で作家の高橋歩と、元はバイカーだったが25歳で起こ
した事故により半身不随となり、以来20年間寝たきりの生活
を送っているCAPと呼ばれる男性が、ルート66を走行する

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07月01日(日)
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