ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460098hit]

■カンフーようちえん、A・スパイダーマン、るろうに剣心、オロ、アニメ師、白雪姫と鏡の女王、Beyond the ONEDAY、スリーピング タイト
『オロ OLO.The boy from Tibet』
2002年に『モゥモ チェンガ』という作品を発表している岩
佐寿弥監督が、再びチベット難民の姿を追ったドキュメンタ
リー。
前作の主人公は本作の後半にも登場するお婆さんだったもの
だが、本作の主人公は少年。彼は6歳の時に両親と別れてヒ
マラヤを越え、現在はインド北部の町ダラムマサラで、チベ
ット亡命政府が運営するチベット子ども村に暮らしている。
その子ども村とは、中国では消し去られようとしているチベ
ット語やチベット文化を子供たちに教え継承させる目的で、
ダライ・ラマ14世の意向により1960年に設立されたものだ。
そこで学ぶ少年を通して、全世界に15万人いるとされるチベ
ット難民の姿が描かれる。
チベット問題に関しては、2009年3月『雪の下の炎』や同年
1月『風の馬』などを紹介しているが、それ以前には1997年
にブラッド・ピット主演の『セブン・イヤーズ・イン・チベ
ット』などもあって、その頃はそれなりに世界の関心もあっ
たものだ。
しかしその後は中国政府の弾圧は続いているに関らず、国際
間ではあまり大きな問題として取り上げられることは少なく
なっている。そんなチベット問題に再び目を向けるチャンス
になろうと思われる作品だ。
また本作の後半には、2008年にチベットで映画を制作したと
いう罪で逮捕収監され、現在も服役中の映画監督ドンドゥッ
プ・ワンチェンの家族も登場し、オロ少年と交流する姿も捉
えられている。
チベット問題は、単純に文化も言葉も異なる外国による侵略
支配であって、当然国際舞台でも糾弾されるべきものだが、
2008年の北京五輪が免罪符だったかのように世界は口を噤ん
でしまったもので、今この映画が再び世論に訴えることを願
いたいものだ。
なお本作の公開に関連して、東京渋谷ではチベット関連映画
の特集上映も6月16日から開催されている。そこでは上記の
2作品や2008年にドンドゥップ・ワンチェン監督が発表した
『恐怖を乗り越えて』も上映される。今一度、チベット問題
を考えたい。

『アニメ師/杉井ギサブロー』             
今年5月紹介『グスコーブドリの伝記』の脚本・監督を手掛
けた杉井ギサブローの足跡を辿ったドキュメンタリー。
杉井は1940年生まれ、1951年に日本公開されたディズニーの
『バンビ』を観て以来アニメーションを志すようになり、や
がて東映動画に入社、1958年日本初の総天然色長編漫画映画
『白蛇伝』に参加する。
その後は虫プロに入社、手塚治虫の下で『鉄腕アトム』『ど
ろろ』『悟空の大冒険』、そして『千夜一夜物語』などを手
掛けて行く。さらに1969年にはグループ・タックの設立に参
加するも10年に渡る放浪の旅を実行。その後に『銀河鉄道の
夜』などを発表する。
という杉井の人生を、本人や手塚氏のアーカイブ映像を含む
関係各氏へのインタヴューで検証し、さらに新作『グスコー
ブドリの伝記』制作の経緯なども紹介されている。そこには
杉井が関った数多くの作品の一部の映像も紹介されているも
のだ。
それはまあ、手塚氏の映像などは懐かしいものだし、挿入さ
れる映像の数々もすぐには観られないものもあって、その辺
では今の若いアニメファンには観ておいて欲しい映像が満載
の作品となっている。
従って作品としてはその点で評価できるものと言える。ただ
肝心の杉井氏本人にどれだけ迫れたかというと、特に10年に
渡る放浪の経緯なども曖昧だし、またフルアニメーションか
らリミットアニメーションに移行した際の葛藤なども、ちゃ
んと聞けているとは思えなかった。
それは確かに杉井氏本人のはぐらかしなどもあるのだが、ほ
とんどが街頭での問わず語りのようなインタヴューのやり方
では、最初から本音を聞くことを放棄しているという感じも
したものだ。
とは言え、杉井氏とは無関係に虫プロの実態が当時の製作費
の具体的な数字なども含めて語られているのは興味深かった
ところで、本作の石岡正人監督には、その辺を検証する別の

[5]続きを読む

06月17日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る