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On the Production
by 井口健二
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■LONE CHALLENGER、岸部町奇談、カイウラニ、グスコーブドリ、希望のシグナル、バルーンリレー、アイアン・スカイ、The Lady+DS記者会見
公が観る風景などは原作に基づいてイマジネーション豊かに
描かれている。
そしてその映像は、原作にも描かれているクーポー博士の乗
物も含めてかなりファンタスティックな世界観のものになっ
ている。この辺には宮崎アニメを思わせる部分もあって、日
本のアニメファンが待望しているものだろう。
そんな世界観の中で、原作者の説く自己犠牲の精神が描かれ
て行く。それはもう原作者の描いた精神そのものだから、そ
れを変えることは許されないものだが…。ただ僕自身の個人
的には、それを容認することは難しかった。
声の出演は、主人公役に小栗旬。他に、忽那汐里、柄本明、
佐々木蔵之介、林家正蔵、林隆三、草刈民代らが脇を固めて
いる。
多少脚色された物語の監修には宮沢賢治研究者の天沢退二郎
が当り、総作画監督は『銀河鉄道の夜』も手掛けた江口摩吏
介、美術監督は『日本昔ばなし』などの阿部行夫、音楽はバ
ンドネオン奏者の小松亮太が担当。また主題歌には、小田和
正の「生まれ来る子供たちのために」がフィーチャーされて
いる。

『希望のシグナル』
秋田県で自殺防止活動に取り組む人々を追ったドキュメンタ
リー。因に秋田県は、2010年までの統計において15年連続の
日本で1番自殺率の高い県なのだそうだ。
その秋田県で自殺防止に取り組む人々の活動が描かれる。そ
こには、元は倒産した企業の経営者で倒産後には欝病になり
自殺も考えたという男性や、息子に自殺された母親などが登
場して、その人たちの自らの体験に基づいた活動が紹介され
ている。
その一方で精神障害者に対する差別などによる自殺問題にも
言及され、それらを包括して解決する道が検討されている。
そしてその活動の一環として公民館のような場所に開設され
たカフェの模様が紹介され、そこでの会話が自殺防止に役立
つと説明される。
ただし、それで本当に効果が上がっているのか否か、具体的
な数値などが示される訳ではない。しかしその活動が成果を
上げていることを祈りたくなる。そんな地道な活動の様子が
描かれている。
その活動が徐々に秋田県全域の連携ネットワークへと広がっ
て行く。それは行政やその他の機関をも巻き込んだものにも
なって行くが、そこでは宣言一つを採択するにも議論が必要
になるなど、創設者たちの思いと裏腹な現実も描かれる。
こうして秋田県全域での活動が進み始めた2011年3月11日。
震災による被害は秋田県では大きなものではなかったようだ
が、県はいち早く被災県からの避難者の受け入れを決め、そ
れを受けて被災者たちのケアも活動の中に組み入れられて行
くことになる。
そこでは予め整えられていた組織が力を発揮することになる
が、当然その間の本来の活動は制限されることになるはずの
ものだ。ただしその問題点は、敢えて本作では描かれていな
かった。
製作と監督は、1982年生まれ隣接岩手県在住の都鳥拓也・伸
也という双子の兄弟。すでに地元では社会問題を扱ったドキ
ュメンタリーの企画・製作を手掛け、ドキュメンタリーの上
映会なども催している兄弟が、今回は自らの手で監督と撮影
も務めている。
それから本作では、音声技術の確かさにも感心した。その整
音は日本映画大学の録音スタジオ管理も務める若林大介が担
当しているが、カフェでの騒音の中でのインタヴューなどで
も発言者の言葉が明瞭で、さすがプロの仕事と感じられた。
それにしても、このような活動を続けている人たちの姿には
本当に頭が下がる。それに比べたら自分のやっていることな
ど何の意味があるのかとも思ってしまうが、せめてこの作品
を通じてこの人たちの活動が世間に知られるように、紹介を
させて貰うものだ。

『バルーンリレー』
ユナイテッド・シネマ主催による若手育成プログラムD-MAP
で、2011年の第5回シネマプロットコンペティションに出品
された作品からの映画化。
主人公はバスケ部ではレギュラーポジションにいる女子中学
生のこずえ。そのこずえはある日、仲間と帰宅中に街路燈に

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05月20日(日)
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