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On the Production
by 井口健二
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■女ドラゴン、先生を流産…、ベルフラワー、ムッシュ・ラザール、ビースト・ストーカー、㊙…市場、座敷わらし、愛と誠+Hungover
特殊な背景もあって、それは多少趣も異なるものだ。
そこには、恐らくは宗教の問題なども絡むのだろうが、本作
ではその辺はあまり深くは描かれない。それは現地の人には
自明のことだからなのか、それともその問題を語りたくなか
ったのかは不明だが、その辺の面映ゆさは感じるところだ。
しかしいずれにしても、個人の問題から国際問題までもが微
妙に絡まり合う、正に現代が描かれている作品と言えるのだ
ろう。その辺が世界の各地で受賞を続ける所以であるのかも
知れない。
脚本と監督は大学で国際関係学などを学んだ後にドキュメン
タリー監督となり、その後に映画監督に転身したフィリップ
・ファラルドーの第4作。日本では映画祭などでの紹介しか
なったようだが、カナダでは数多くの受賞に輝いている人の
ようだ。
出演者も日本では知られていない俳優ばかりだが、主人公の
男性教師を演じるフェラグは実際にアルジェリア出身の舞台
俳優、また生徒役のソフィー・ネリッセとエミリアン・ネロ
ンは共にCMなどでも活躍する子役だそうだ。
『ビースト・ストーカー/証人』“証人”
2010年10月紹介『密告・者』のニコラス・ツェー、ニック・
チョン共演、ダンテ・ラム監督による2008年の作品。元々本
作の評判から『密告・者』が製作されたという原点に当たる
作品だそうだ。
物語は壮絶なカーアクションから始まる。そこで逃亡者の車
に並走する刑事の乗った車に横合いから別の車が激突する。
それでも逃亡者の車を追い詰めた刑事は、銃撃戦の末に逃亡
者を取り押さえるが…
その逃亡者には宝石強盗と警備員殺害の嫌疑が掛けられてい
たが、その証拠は現場に落ちていた1滴の血液だけだった。
そして裁判は女性検事の手で進められているが、その裁判を
控えてシングルマザーである検事の娘が誘拐される。犯人の
要求は証拠の破棄。
その誘拐事件の現場に居合わせた刑事は、単独で調査を開始
する。しかしそこには、逃亡者逮捕の際のいろいろな確執が
渦巻いていた。そして誘拐犯にも執拗に犯行を遂行する理由
があった。
事件の発端はかなり強引な感じもして、そこにはもう少し経
緯の説明があっても良いような気もしたが、結論としてはそ
の強引さが物語の全体のトーンでもあり、そういう作品とし
て納得できるものになっていた。
そして演出は、最初から最後までハイテンションの連続で、
一時も目が離せないという感じの作品。1時間49分の上映時
間だが、その時間があっという間に過ぎてしまう。しかもそ
れで全てが完璧に描かれていた。
共演は、2006年6月紹介『孔雀』のチャン・チンチュー。ポ
ストチャン・ツィイーとも呼ばれた彼女だが、本作では立派
に母親役を演じていた。因に彼女は、2005年9月紹介ツイ・
ハーク監督の『セブンソード』にも出ていたそうだ。
他には『密告・者』や2006年2月紹介『SPL』などの名脇
役リウ・カイチーが要所を締めている。
サイコ的な犯人像や壮絶なカーアクション、それに携帯電話
情報からの推理など、現代映画の様々な要素が見事に合体さ
れた作品だ。
『㊙色情めす市場』
『㊙女郎市場』
1970年代に一世を風靡したとも言える日活ロマンポルノ。そ
の1100本にも及ぶ作品群の中から32本がセレクトされ、日活
創立100周年の記念企画として特集上映される。その中から
6本の試写が順次2本ずつ行われることになった。
その最初は、1974年田中登監督作品(めす)と1972年曾根中
生監督作品(女郎)。何となく似た題名の2本だが関連する
ものではなく、前者は製作当時の大坂旧赤線街を舞台にした
娼婦もの、後者は品川宿を舞台にした時代劇仕立ての作品と
なっている。
その前者は、オールカラーが売りだったロマンポルノでは珍
しいパートカラー作品で、大阪ドヤ街に暮らす娼婦の日常が
描かれて行く。そこには知恵遅れの弟や、同業の母親や、ヤ
クザやそのヤクザに騙される若い男女などがいて様々な人間
模様が写し出される。
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03月25日(日)
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