ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460104hit]
■けの汁、別離、きっとここが帰る場所、KOTOKO、シネマ歌舞伎・高野聖、裏切りのサーカス、ファウスト+Oscar,VES
発想は中々のものだ。
これに対して中盤のスプラッター風の展開は有り勝ちのよう
にも感じるが、ここでも若い女性の心理面という形で一本筋
が通っており、今までの塚本作品では何となくこの辺で破綻
を感じていたような部分にも纏まりが感じられた。
因に海外では「様々なジャンルを超越した作品」というよう
な評価も観られたが、それは一面では纏まりの無さと紙一重
のような感じもする。しかし本作は主人公の存在がかなりし
っかりと描かれており、その点では以前の作品より理解のし
易さも感じられた。
これは本作が主演者coccoの原案に基づくものであり、他人
の意見を監督が受け入れた結果であるのかも知れない。この
点で今回のコラボレーションは成功と言えそうだ。それがフ
ァンの目にどのように写るかは、これからの公開を待たねば
ならないところだが。
『シネマ歌舞伎・高野聖』
今年最初に紹介した『天守物語/海神別荘』に続く、泉鏡花
+坂東玉三郎による幻想舞台を「シネマ歌舞伎」で公開する
3作目。先の2作は鏡花の戯曲を演じたものだが、本作は鏡
花の原作小説から新たに玉三郎自身が脚色して舞台化した作
品だ。
物語の舞台は、飛騨から信州に抜ける山路。その道を辿って
きた修業僧はどちらも松本に繋がるという追分で、一方の新
道は水に漬かっているが安全で、他方の旧道は道程は短いが
いろいろな危険が待ち構えていると教えられる。
しかしある事情から旧道を選ばざるを得なかった修業僧は蛇
や蛭に難渋しながらも何とか峠の一軒家に辿り着く。そこに
は、美しい女と女が養っているらしい男が暮らしており、さ
らに出入りの老人の姿があった。
そして一夜の宿を願い出た修業僧を女は快く迎えてくれるの
だが…
出演は、女の役に玉三郎、修業僧を中村獅童、老人役に中村
歌六。舞台は昨年2月に博多座で撮影されたものだが、通常
のシネマ歌舞伎のように公演舞台の撮影ではなく、公演後の
舞台上にカメラも設置して別撮りされているものだ。
これは同時上映される特別映像によると、極小のものが極大
に通じるという鏡花の思想に沿ったものだそうで、細かい仕
種なども明確に伝えたいという玉三郎の意向によったものの
ようだ。それに沿って今回は野外ロケのシーンなども挿入さ
れている。
ただ僕としては、前半の回り舞台を使った場面転換などは大
写しでも観たかったもので、そこがアップショット中心なの
は少し残念な感じもした。とは言え、獅童や歌六がかなりの
長台詞を蕩々と語るシーンなどは見所にもなっている。
それに何より、鏡花の幻想シーンが見事に再現されている点
も堪能できる作品だった。
なお本作は3月17日から全国公開となるが、その後4月14日
からは東京築地の東劇で、3作品の追加上映と1995年劇場公
開された坂東玉三郎監督、宮沢りえ出演による映画版『天守
物語』の特別上映も行われるとのことで、鏡花の舞台を存分
に堪能できそうだ。
因に『シネマ歌舞伎』の入場料は2000円の入れ替え制だが、
『映画天守物語』は1000円の特別料金で観られるようだ。
『裏切りのサーカス』“Tinker, Tailor, Soldier, Spy”
元英国諜報部員とされる作家ジョン・ル・カレが1974年に発
表した原作を、ル・カレ自身の製作総指揮により映画化した
作品。主人公のスマイリーを演じたゲイリー・オールドマン
がアカデミー賞主演男優賞の候補になっている。
原作の発表当時の1973年を背景に、熾烈な闇の戦いを繰り広
げる英国情報部とソ連の諜報機関の姿が描かれる。そしてそ
こでは英国情報部の中枢に20年以上も潜り込んでいたという
2重スパイ<もぐら>を叩き出す作戦が展開される。
まあ2重スパイものは、誰が敵で誰が味方かも判らないのだ
から話は複雑。しかも物語は時間軸を入れ替えて描くから、
これは1回観たぐらいでは理解はできない。しかし本作では
1970年代の風景や雰囲気なども満喫でき、それだけでも満足
できる作品になっていた。
大体この原作は、1979年にイギリスBBCで全7回のミニシ
[5]続きを読む
02月27日(月)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る