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On the Production
by 井口健二
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■マンイーター、ルート・アイリッシュ、父の初七日、それぞれの居場所、アーティスト、テイク・シェルター、アポロ18、イップ・マン誕生
古市で自らが被災者で生活基盤の立て直しを迫られながら、
施設に来ていた老人たちの身を案じる施設長や、宮城県石巻
市で個人の住宅の一部を借りて介護を再開するスタッフの姿
などが紹介される。
こういう活動をされている方たちには、本当に頭が下がる。
僕自身はもはや介護を受ける側に近付いてしまったからいま
さら何もできないと思うが、それでもこういう方たちの活動
には憧れも持ってしまう。
最近何かの作品で、患者の最後を看取ることの素晴らしさを
描いたものがあったが、正にそういう心情でこの人たちも活
動を続けているのだろう。そんな介護の現場の素晴らしさが
描かれている。
でも現実はもっと厳しいのだろうな。そんな中でもこのよう
な活動を続けている人たちは正に賞賛に値する人たちだ。こ
のような人たちにもっと手厚い支援が得られることを願いた
いものだ。
『アーティスト』“The Artist”
ハリウッド創世期の物語をモノクロスタンダードのサイレン
トで描き、昨年のカンヌ国際映画祭に急遽出品されて、主演
男優賞とパルムドッグ賞を受賞した作品。
主人公は無声映画で絶大な人気を誇っていた男優と、そんな
彼が偶然に出会った女優の卵。その彼女には偶然も幸いし、
また彼女自身の努力もあって女優は1歩1歩スターへの階段
を登って行く。
一方、その頃の映画界にはトーキーの波が到来していた。し
かし男優は、「サイレントは芸術だ」と称して無声映画に固
執してしまう。その結果は…。過去にも幾多の名作を生んだ
サイレント→トーキー転換期のドラマに新たな名作が誕生し
た。
しかもその世界を、モノクロスタンダードのサイレントの側
から描いている。それは開幕からタイトルやクレジット、伴
奏音楽など、正しく無声映画の感覚で繰り広げられ、中には
無声映画独特の演出も随所に再現されているものだ。
つまり、今まで作られた同種の作品がカラー・サウンドの側
から描いていたのに対して、本作は正に忘れ去られようとし
ている側から描いている。その心情が、2重3重の想いとな
って観客に押し寄せてくるものだ。
しかもそこにピュアなロマンスや愛犬の活躍などが織り込ま
れるから、これはもう古き良き時代を懐かしむには最高の作
品となっている。
脚本と監督は、2006年11月5日付「東京国際映画祭2006
コンペティションその1」で紹介した『OSS117カイロ
・スパイの巣窟』などのミシェル・アザナヴィシウス。なお
本作は監督が初めてハリウッドで撮影したものだ。
出演は、『OSS』にも主演し本作でカンヌの主演男優賞を
受賞したジャン・デュジャルダン。共演は監督夫人で『OS
S』にも出演のベレニス・ベジョ。他に、ジョン・グッドマ
ン、ジェームズ・クロムウェル、ペネロープ・アン・ミラー
らのハリウッドスターが脇を固めている。またマルカム・マ
クダウェルも顔を出していたようだ。
さらに主人公の愛犬役で名演技を見せるアギーは、昨年12月
紹介の『恋人たちのパレード』にも出演していたタレント犬
で、本作では先週発表された‘Dog News Daily’主催Golden
Collar Awardsの長編映画部門で、映えある第1回の受賞犬
に選出された。
なおこの部門には、アギーが『恋人たち…』の演技でも候補
になっていた他、『ヒューゴ』のブラッキー、昨年11月紹介
『人生はビギナーズ』のアーサー、9月紹介『50/50』
のスケルター、今年2月紹介『ヤング≒アダルト』のドルス
が候補になっていた。
ということで本作はアカデミー賞の作品賞にもノミネートさ
れているが、今回はマーティン・スコセッシが『ヒューゴの
不思議な発明』でフランスでの映画誕生秘話を描き、それに
フランス人監督のハリウッド創世期の物語が対抗するのも面
白いところだ。
『テイク・シェルター』“Take Shelter”
2010年12月紹介『ランナウェイズ』などのマイクル・シャノ
ンと、2011年6月紹介『ツリー・オブ・ライフ』などのジェ
シカ・チャスティンの共演で、シェルター(退避壕)の製作
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02月26日(日)
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