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On the Production
by 井口健二
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■桃まつり5、長ぐつをはいたネコ、誰も知らない基地のこと、311、レンタネコ、孤島の王、超能力者+Oscar/nomination
取材されているが、何処も住民の訴えは政府によって圧殺さ
れているようだ。
ただし、日本の基地問題では「おもいやり予算」などは話を
複雑にしないためか言及されていないし、1992年にアメリカ
軍基地を撤去させたフィリピンなども取材されていない。さ
らにヨーロッパではドイツが取材されていないのも物足りな
くは感じられた。
今アメリカの産軍共同体が狙っているのは、基地の恒久化で
あり、それは恒久的な戦争の継続、そのために産軍共同体は
あらゆる手段を駆使している。実は最近、某アメリカ映画を
観ていて同じようなことを考えたが、それはあながち僕の妄
想でもないようだ。

『311』
震災と原発暴走から2週間後の東北を4人のドキュメンタリ
ストが撮影した作品。
その取材は何を撮影しようという目的も持たずに、ただ現地
を観ておきたいという考えのみで始まった。そして最初は放
射能検知器を携えて福島に向かうが、装備が不十分であるこ
となどを認識して以後は震災被災地に向かう。
そこでは、すでに数多くの取材でも報じられた津波による惨
状や避難民の姿などが写し出されて行く。そして彼らは、多
くの学童や保護者たちが津波に飲まれた石巻市立大川小学校
に辿り着く。
昨年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映され、会場が
怒号と賞賛の声に包まれたという問題作。事前にそういう情
報を聞き、さらに巻頭で物見湯山のように出掛けて行く彼ら
の姿には、災害直後の報道で「おもしれえ」と発したレポー
ターを思い出した。
それは福島でガイガーカウンターの数値が跳ね上がって行く
様子を伝える声にも感じられたが、その声は津波の惨状を前
には少なくなって行く。そして小学校の跡地で子供の姿を探
す母親たちを前にして、ついに言葉は失われてしまう。
その小学校では、校庭で教師が点呼を取っているときに津波
が襲ったのだという。そこで取材された母親は、「先生を無
視して子供を連れて山に逃げた親子は助かった。自分は仕事
で迎えに行けなかった」と言った後で、「でも、(自分が)
行っていても、先生の指示にしたがって、一緒に津波に飲み
込まれたと思う」と語る。
しかしそれは、子供を助けられなかった自分への言い訳だろ
う。そんな母親の無念さが画面から伝わってきたとき、僕は
涙が止まらなくなってしまった。
今回上映される作品は、山形で上映された作品より2分短く
編集されているようだ。それでどんなシーンがカットされた
のかは判らない。もっと不埒なシーンがあったのかも知れな
い。しかし僕はこの母親たちの無念を伝えただけでも賞賛に
値すると思った。
これは今後に語り継ぐべき内容を描いた作品だと思う。ただ
し福島原発に関しては、再度準備を整えて取材するべきだ。
本作の制作者たちにはそれを望みたい。

『レンタネコ』
2010年4月紹介『トイレット』などの荻上直子監督による最
新作。本作で再度ベルリン国際映画祭への正式出品が決まっ
たようだ。
「レンターネコ、ネコ、ネコ。寂しい人に、猫、貸します」
という口上でレンタネコ屋を営む女性を狂言回しに、都会に
暮らす人々の姿が描かれる。
登場するのは、夫と愛描に先立たれた老婦人に、単身赴任か
ら漸く家族の許に帰る日の近い中年男性、自分に自信の持て
ないレンタカー屋の受付嬢。そしてもう1人と、主人公の隣
に住む怪しい主婦。
ただし猫を借りるには審査があって、そこでの主人公との遣
り取りからいろいろなドラマが展開される。しかしそこは荻
上監督らしく、本当にちょっとした普段の出来事が巧みに優
しく描かれているものだ。
ただ、以前の作品に比べると、少しドラマティックかな。そ
れはオムニバス風の構成にも拠るのかも知れないが、少し演
出も凝っていたようにも感じられた。それが従来のファンに
どう取られるか多少気になるが、僕にはこれも好ましく感じ
られた。
出演は市川実日子、草村礼子、光石研、山田真歩、田中圭、
小林克也。2006年1月紹介『かもめ食堂』からは小林聡美、

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01月29日(日)
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