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On the Production
by 井口健二
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■第24回東京国際映画祭(2)
介するドキュメンタリー。そこでは伝統的な時間を掛けた抽
出法なども説明され、万人が活用できるものとして紹介され
るが、一方でその成分が製薬会社によって特許申請されてい
るなどの話題も登場していた。ただ、話が途中から多少宗教
じみてくるところが少し気にはなったが…。

『少女の夢の足跡』“A Pas de Loup”
両親が自分を見ていないと信じ込んだ少女が、それを確かめ
るため別荘の裏の森に隠れ、1人で生活しようと決心する。
そして少女が隠れた森は思いのほか優しく彼女を受け入れて
くれるが…。まるで夢のような話をファンタスティックに描
いている。特にカメラを少女の目線に合わせ、台詞も少女の
モノローグだけという設定を見事に達成していた。
        *         *
 以下は、第24回映画祭の全体に対する講評ということで
書かせてもらうが、まず僕が選んだ各賞は、
最優秀女優賞:ジャネット・マクティア(アルバート・ノッ
ブス)
最優秀男優賞:ギョーム・カネ(より良き人生)
最優秀芸術貢献賞:転山
審査員特別賞:デタッチメント
最優秀監督賞:メネラオス・カラマギョーリス(J.A.C.E.)
サクラグランプリ:ガザを飛ぶブタ
因に僕は、観客賞は『最強のふたり』と考えていた。

 これに対して実際の結果は、
最優秀女優賞:グレン・クローズ(アルバート・ノッブス)
最優秀男優賞:フランソワ・クリュゼ/オマール・シー(最
強のふたり)
最優秀芸術貢献賞:デタッチメント/転山
審査員特別賞:キツツキと雨
最優秀監督賞:リューベン・オストルンド(プレイ)
サクラグランプリ:最強のふたり
観客賞:ガザを飛ぶブタ
となったものだが、僕の方は2作品授賞と同じ作品に2つの
授賞を避けたもので、結果はかなり似通っている。ただここ
に挙がった作品と、挙げなかった作品では、多少レヴェルに
差があったようにも感じたもので、今回はある意味消去法の
選択にもなっている。
 正直に言って今回は、多少全体のレヴェルが低かったよう
にも感じたが、その一方で今回は、すでに実績のある監督の
名前も並んでいたもので、特にそれらの監督の作品に期待外
れが多かったことは、観客としての失望感も大きく感じられ
たところだ。
 実際問題として、以前のように新人監督ばかりなら、期待
外れでも仕方がないで済ませられるが、そこそこの名前でこ
の結果は映画祭そのものに対する失望感も大きくなる。次回
はぜひとも監督の名前でなく作品を選んで欲しいものだ。
        *         *
 さて講評はここまでにして、以下には今回発生した問題を
書き残しておきたい。
 まず今回の映画祭では、少し前に「お断り」として書いた
ようにマスコミに対するコンペ作品の事前試写が実施されな
かった。本当は行われていたのだが、参加条件が厳しくて僕
のような者には案内がされなかった。その条件というのは、
会期中にインタヴューを行う人ということで、僕のように映
画を観ることを優先する人間は除外されてしまったものだ。
 さらには前年の事前試写では満席で必要な人たちが入れな
かったということなのだが、確かに朝10時から毎日3本ずつ
行われた事前試写では、僕を含めた何人かは3回の席を取り
切りで、1本だけ観に来る人より有利だったことは認める。
しかしそれをしていたのは本当に一握りの人たちだし、実際
に超満員になったのは、前年では最終日に1本のみ会場が狭
い場所に変更になった『一枚のハガキ』だけだったよう記憶
している。
 とは言え、僕は今回事前試写に参加できなかったもので、
このため今回の映画祭ではコンペティション15本+その他の
部門11本の計26本しか観られなかった。これは前年がコンペ
ティション14本(1本は先に別の機会に観ていた)+その他
の部門31本の計45本に比べると激減したものだが、ここには
春の震災の影響なども多少あって、それがなければあと6、
7本は観られたかも知れない。それでも前年に比べると10本

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10月31日(月)
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