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On the Production
by 井口健二
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■Pina、ロンドンBlv、ブラディP、指輪をはめたい、Xマスのその夜に、不惑のアダージョ、王様ゲーム、ホーボー/ショットガン+お断り
らしいのだが、果たして彼が「指輪をはめたい」と思ったの
は誰なのか?
仕事のことは覚えていて、女性のことだけが記憶から欠落し
ている。そんな都合の良い…と思われそうだが、その理由付
けもちゃんとあり、それはちゃんとしたお話になっていた。
日本の監督はなかなかこの手の作品をうまく作れないが、こ
れは合格だ。
その脚本と監督は岩田ユキ。原作は、芥川賞作家伊藤たかみ
による同名の小説があるが、脚本では主人公の設定などをか
なり大幅に変更しているそうだ。そしてその脚本から、主演
の山田がさらに見事な役作りをしている。
共演は、小西真奈美、真木よう子、池脇千鶴。日本映画では
主演も張る3人の女優が、主人公を巡るそれぞれ個性的な役
柄を見事に演じている。他に、山内健司、佐藤哲広、マギー
司郎、水森亜土らが脇を固める。
また、主人公が訪れるスケートリンクにいるスケーター役の
二階堂ふみは、沖縄出身の1994年生まれだが、元々沖縄唯一
のスケートリンクに通っていたとのことで、プロスケーター
村主千香のコーチの許、半年間の練習で見事なスケーティン
グを披露している。
さらに映画では、山田と二階堂を取り巻くアイススケートに
よるレビューシーンなども登場し、それがなかなか様になっ
ていた。これも日本映画ではなかなかうまく描けないことが
多いものだが、その感覚にも監督の非凡さを感じさせたもの
だ。
なおこのレビューシーンは、東京シンクロナイズド・スケー
ティング・クラブというチームの協力で撮影されているそう
だ。
お話自体も悪くはないし、雰囲気にはファンタスティックな
ところもあって、なかなかの作品だった。
『クリスマスのその夜に』“Hjem til jul”
2004年3月に『キッチン・ストーリー』、2007年7月に『酔
いどれ詩人になる前に』、2008年10月に『ホルテンさんのは
じめての冒険』をそれぞれ紹介しているノルウェーの映画監
督ベント・ハーメルによる2010年の作品。
ある年のクリスマスに、ノルウェーの小さな街で繰り広げら
れる様々な人間模様が描かれる。そこには別れた妻の許にい
る子供にプレゼントを渡すために奮闘する父親や、家に帰る
列車の切符を買う金もないほどに落ちぶれてしまった男。
さらに不倫中の男女や、小さな嘘と引き換えに素敵な時間を
貰った少年、恋人とのクリスマスの一夜を過ごすこともでき
ない多忙な医師、そして世界情勢の中で苦難の時を過ごしな
がらも希望を失わない男女などが登場する。
実は、映画はかなり衝撃的なシーンから開幕する。その衝撃
がどこに向かって行くのか、そんなことを心の片隅で心配し
ながら、ハーメルワールドとも言える心優しい人々の物語が
展開されて行く。
物語は、ノルウェーのベストセラー作家レヴィ・ヘンリクセ
ンの短編集によるものだが、その個々の物語から脚本も手掛
けたハーメル監督は、見事なアンサンブル劇を再構築してい
る。その物語の展開のうまさにも心を奪われる作品だ。
出演はノルウェーの映画やテレビで活躍する俳優たちだが、
中に『ホルテンさん…』に出演のクリスティーネ・ルイ・シ
ュレッテバッケンや、『キッチン・ストーリー』に出演のヨ
アキム・カルマイヤー、トマス・ノールストロムらが顔を出
している。
また音楽を、日本では「カーダ」の名前でアルバムリリース
されているヨン・エーリク・コーダが担当して、素敵な楽曲
を聞かせてくれる。その他のスタッフには、『キッチン』と
『ホルテン』の担当者たちが再結集しているそうだ。
撮影は、スウェーデンのエステルスンドとノルウェーのステ
ィョールダル、さらに巻頭のシーンはドイツのデュイスブル
グという場所で行われている。小さな街や雪深い森、それに
工場の廃虚のそれぞれが見事な雰囲気を醸し出している。
『不惑のアダージョ/大地を叩く女』
『大地…』で2008年「夕張国際ファンタスティック映画祭」
オフシアター部門グランプリを獲得した井上都紀監督による
長編第1作『不惑…』が、短編の前作と共に一般公開される
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10月16日(日)
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