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On the Production
by 井口健二
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■吉祥寺の朝日奈くん、CUT/カット、ウォーキング・デッド、月光ノ仮面、人喰猪、ミツコ感覚、宇宙人ポール、天皇ごっこ
ひょっこり帰ってくるところから始まる。
顔に大きな傷を負い風貌も前から掛け離れてしまったその男
は、さらに健忘症で爆笑王と呼ばれた話芸も覚束ない。しか
し師匠や一門の兄弟弟子は暖かく彼を迎え入れようとし、と
りわけ出征前に将来を誓いあった師匠の娘は彼の記憶を取り
戻そうと必死になるが…
映画の音声には、落語「粗忽長屋」の中の行き倒れの下りが
繰り返し挿入され、物語がそれなりにその噺をモティーフに
していることが暗示される。つまりそれは「死んでいるのが
俺なら、俺は一体誰なんだ?」というものだ。
しかし描かれているのはそれだけではなく、もっとシュール
で曖昧模糊とした前作以上の板尾ワールドが展開される。
出演は、板尾の他に浅野忠信、石原さとみ。また噺家の師匠
役を前田吟、その一門を六角精児、柄本佑、矢部太郎、佐野
泰臣、千代将太。さらに木村祐一、津田寛治、國村隼、宮迫
博之、木下ほうか、根岸季衣、平田満らが脇を固める。
実は結末がかなりシュールというか、ブッ飛んだ物になって
いて、その辺をどう解釈すれば良いのか判断が難しい。しか
し僕は、本作の巻頭クレジットに西村喜廣の名前を見付けた
瞬間からある程度の期待を持っていた。
とは言え映画では、その後に続く描写からもう1歩先の闇の
ようなものも感じられ、これは正に参りましたというものに
なっていた。これは前作の時にも書いたが、本作も「板尾ワ
ールド恐るべし」という感じのものだ。
作品の評価は以上だが、映画の中ではカラテカ矢部が独特の
口調で語る落語が面白くて、これは一度全編を聴きたくなっ
た。
『人喰猪、公民館襲撃す!』“차우”
映画の宣伝文句に「怪獣映画史上最小スケール」と書かれた
韓国製の怪獣パニック作品。
物語の発端は、山里の墓地が荒らされ、その近くで惨殺死体
が発見されたというもの。その捜査には本庁から刑事もやっ
てくるが、10年以上も事件のなかった寒村の巡査たちはなか
なか刑事の指示通りには動かない。
一方、村の村長は開発業者と結託して都会人を招いた週末農
園の計画を進めており、そこに惨殺死体は不都合な存在だ。
そこで開発業者はハンターを手配し、彼らは首尾よく1頭の
大型の猪を捕えるが…。
これに地元の猟師やソウルから転勤してきた巡査、野性の生
態系の調査にやってきた大学の研究者などが絡んで、外来種
との交配で巨大化し、且つ凶暴化して、人間も襲うようにな
ったイノシシの恐怖が描かれる。
この外来種との交配が、日本占領時代に行われたというのは
成程と思わせるところだが、映像では体重300〜500kgとされ
るイノシシがCGIで縦横に暴れまくり、確かにゴジラほど
には大きくはないが、その分リアルな「怪獣」映画になって
いた。
また、地元巡査たちが繰り広げるドタバタぶりも、ギャグな
どのバランスも良く、全体的に巧みに作られた作品と言える
ものだ。実際、上記の宣伝文句から予想された以上の出来映
えの作品だった。
脚本と監督は、1974年生まれミュージックヴィデオ出身で、
2004年に発表したホラー作品が高評価を受けたというシン・
ジョンウォン。本作はその第2作だが、前作でも「韓国のテ
ィム・バートン」と称されたという才能は見事に開花してい
る。
出演は、テレビ『魔王』などのオム・テウン、2010年5月紹
介『グッドモーニング・プレジデント』に出演のチョン・ユ
ミ、2009年5月紹介『セブンデイズ』などのチャン・ハンソ
ン、2009年8月紹介『母なる証明』などのユン・ジェムン、
2010年8月紹介『義兄弟』などのパク・ヒョクォン。他にも
いろいろゲスト出演がいたようだ。
またCGIを、1980年『帝国の逆襲』から2004年『デイ・ア
フター・トゥモロー』までのハリウッド大作も手掛けてきた
というハンス・ウーリクが担当して、獣の毛並みや筋肉の動
きなどを詳細に作り出している。
イノシシの怪獣というと、1984年のラッセル・マルケイ監督
作品『レイザーバック』を思い出してしまうが、当時はあま
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10月09日(日)
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