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On the Production
by 井口健二
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■僕たちのバイシクル・ロード、ラブ&ドラッグ、ミッション:8ミニッツ、ゴモラ、VAMPIRE STORIES、メサイア+Blade Runner
という作品の日本公開が決定し、試写が行われて再度鑑賞す
ることが出来たものだが、実は映画祭のときにはストーリー
が殆ど把握できず、恐らくその時には紹介するにもかなり苦
労すると思えたものだ。
その物語は、複数のエピソードが並行して語られるもので、
そこには伝統の組織と反対派の対立の渦中にいる少年トト。
組織のメムバーの家族や遺族に給料を届けるドン・チーロ。
組織が仕切る産業廃棄物処理の管理を任せられるロベルト。
さらに組織直営の衣料品店で有能な仕立て屋パスクワーレ。
組織の武器庫を見付けた2人のチンピラなどが描かれる。
それはアンサンブル劇と言うほどには相互の関連も少なく。
ましてや物語が最後に収斂することもない。ただそれぞれの
エピソードごとにストーリーが展開し、それぞれの主人公の
したことに対する結末が待っているものだ。
しかもその結末はかなり衝撃的なものが多く、それが組織犯
罪の恐ろしさを描き出している。これがネオリアリズモと言
われればその通りなのだろうが、ほとんど救いのない物語の
羅列はかなりの厳しさだった。
原作は,翻訳もされているイタリアの作家ロベルト・サヴィ
アーノの著作によるもので、イタリアに実在するCamorraと
いう犯罪帝国に潜入し、その実態を克明に描いた作品は、本
国では100万部を売り上げたベストセラーだそうだ。
因に、サヴィアーノは本作の脚本も手掛けているが、現在は
身辺の安全のため警察の保護下に置かれているとのこと。
監督は、共同脚本も手掛けたマッテオ・ガッローネ。本作で
は、ヨーロッパ映画祭で作品、監督、主演男優、脚本、撮影
の各部門の受賞にも輝いている。
本作の宣伝には、『ゴッドファーザー』と『シティ・オブ・
ゴッド』の題名が挙げられていたが、ここにはコッポラが描
いた詩情もなく、メイレレスが描いた希望も消え、ただ非情
さだけが恐ろしいまでに描かれていた。
『VAMPIRE STORIES: BROTHERS』
『VAMPIRE STORIES: CHASERS』
D-BOYS、ハロプロなどの若手芸能人を使って描かれた和製吸
血鬼物語。B編、C編と称されるそれぞれ75分前後の2作品
が連続上映されるとのことで、マスコミ向けには2本立ての
試写会が行われた。
物語は、大学のサークル活動でキャンプ場に来ていた学生グ
ループの周辺で展開される。
そしてB編では、バーベキューの途中で体調不良になり帰宅
した弟妹の家に、5年間行方不明だった長兄が戻ってくる。
しかしその長兄は吸血鬼になっており、実は純血の吸血鬼の
血を引く兄弟は、20歳になるとき人間の血を吸うと吸血鬼に
なると言うのだが…
一方、C編ではキャンプ場が襲われ、全員が失血死、しかし
周囲に血痕はないという猟奇殺人事件が起きる。それは吸血
鬼の仕業だが、血を吸われた人間は遺伝子の適合した者だけ
が吸血鬼になるという。その現場からは男女の学生が行方不
明になっていた。
その男子学生は見知らぬ山小屋で目を覚ます。そこには彼を
助けた剣士がおり、その剣士から、このようにして吸血鬼に
なった人間(混血と呼ばれる)は、7日以内に血を吸った吸
血鬼を倒さないと、永久にその奴隷になると教えられる。
という時系列の等しい2つの物語が展開され、B編では吸血
鬼になる、ならないの兄弟間の確執。C編では奴隷とならな
いために自分を襲った吸血鬼に立ち向かう男子学生の追跡劇
などが描かれて行く。
物語は概ねヨーロッパにおける吸血鬼伝説に則っており、太
陽光線との関係や、一部にはわざと変えたと思われる設定も
含めて、一応は納得できる展開になっていた。さらに吸血鬼
の姿を描くVFXなどは、うまく伝統を取り入れている感じ
もしたものだ。
また、1つの物語を2つの側面から描くという仕掛けもなか
なか巧みに描かれているし、しかも、D-BOYS主演のイケメン
映画の雰囲気もしっかりと踏襲されていて、これは若い女性
には安心して観ていられる作品にもなっている。
正直にはホラー映画の雰囲気はかなり薄まってはいるが、そ
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08月28日(日)
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