ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460133hit]
■ラルゴ・ウィンチ、海と自転車と…、スマーフ、MADE IN JAPAN、やがて来たる者へ、リミットレス、Capt.アメリカ、カウボーイ&エイリアン
腑抜けのようになってしまう。一方、母親は近くに住む事故
で歩けなくなった若者の介護で忙しく、娘は牛乳配達の仕事
をしていた。
そんな一家の暮らしが描かれて行く中で、やがて父親は腑抜
けと異常な性癖の度を増して行き、ついに母親と娘は家に居
られなくなる。しかし、その頃には彼女たちもそれぞれの居
場所を見つけていて…
脚本の和間千尋は、大学の高橋監督が受け持つシナリオを書
かせる授業で、高橋監督の言によると「登場人物が全員病気
人間という変な脚本」で注目され、さらに「得意の病気人間
を出して、家族の崩壊劇を書け」という課題に応えて本作を
書き上げた。
ただしそこには、高橋監督からのしつこい要求で1年の時間
が掛けられたそうだが、その試練に耐え完成された脚本は、
「これなら映画にできるな!」と言えるほどのもので、それ
を高橋監督自らメガホンを取って映画化したとのことだ。
出演は、松田美由紀、1982年『TATTOOあり』以来の高橋作品
参加になる山路和弘、松原智恵子、2006年『海猿』などの浅
見れいな、2007年『どろろ』などの水上竜士。そして出演当
時は大学の1回生だった大西礼芳。他に学生から関屋和希と
伊藤菜月子が出演している。
なお大西は、学内のオーディションで選ばれたものだが、最
初は殆どが3回生以上の候補者の中で唯一の1回生、しかも
それまでに演技経験なしだった彼女が、めきめきと才能を発
揮し、高橋監督に「大西よりうまい子はいない」と言わしめ
たそうだ。
なお、撮影監督には2006年10月紹介『映画監督って何だ!』
の小川真司、美術には2005年9月紹介『探偵事務所5』の嵩
村裕司、録音には今年1月紹介『ランウェイ☆ビート』の浦
田和治などプロも協力して、撮影日数20日、製作費500万円
の作品が完成されている。
『やがて来たる者へ』“L'uomo che verrà”
1944年9月にイタリア北部の山村マルザボットで起きた実際
の事件を題材にし、2010年のイタリアアカデミー賞で16部門
にノミネート、作品賞など3部門を受賞した作品。
1943年7月に連合軍による南イタリアへの上陸が開始された
年の12月、北部の都市ボローニアの近郊に位置する山村はま
だ比較的平穏な日々が続いていた。そんな中で暮らす8歳の
マルティーナは、以前に弟の死を体験したことから無口な少
女だった。
しかし母親が新たな妊娠をし、少女もその誕生を心待ちにし
ていたが、その一方で村人の中にはパルティザンとなってナ
チスドイツ軍に抵抗する者も少なくなく、その食料や物資の
調達にナチスやファシストたちが目を光らせ始める。
それでもこっそりとパーティを開いたり、また都会からの疎
開者を匿ったり…、さらに爆撃が激しくなって教会に身を潜
めることもあったが、少女にはまだ戦争と言うものが何なの
かはっきりとは判らない。
そしてついに弟が誕生し、一家は喜びに包まれるが、それも
束の間、ナチスドイツ軍による村に対するパルティザン掃討
作戦が開始される。
この事件での犠牲者は771人と確定され、その内訳は、18歳
以下が216人、18−60歳の男性が161人、女性が315人、60歳
以上が76人で、この内パルティザンと見られるのは50人ほど
だったと言われている。
つまり、殆どはパルティザンではない村人の虐殺だった訳だ
が、映画ではその虐殺の模様もかなり克明に描いている。さ
らに映画ではそこに至るまでのナチスドイツ軍人の横暴さも
描いており、敗色が見え始めた軍隊の恐ろしさも描き出して
いる。
製作、原案、脚本、監督、編集は2005年に『風は自分の道を
めぐる』という作品で高い評価を受けているジョルジョ・デ
ィリッティ。先には実話を記録したドキュメントがあったよ
うだが、本作はそれを基にしたフィクション、ただし虐殺は
真実のものだ。
出演は、主演の少女役グレタ・ツッチェリ・モンタナリは新
人のようだが、他に2010年3月紹介『ボローニャの夕暮れ』
のアルバ・ロヴァケル、2005年6月紹介『輝ける青春』のマ
ヤ・サンサらが共演している。
[5]続きを読む
08月21日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る