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On the Production
by 井口健二
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■エンディングノート、デビル、カンフー・パンダ2、朱花の月、ナッシュビル、グリーン・ランタン、ワイルド・スピード5+訃報
ただし染色に於ける「朱華色」は、「くちなしの黄の下染め
をして、紅花で染めた黄みのある淡紅色」とのことで、また
この色に染められた布は灰汁で洗うと色落ちすることから、
「うつろう」「はかない」という意味にも使われるそうだ。
そんな血の色にも似た染色を目指す女性が、2人の男性の間
で恋の炎を燃やす。一方それは藤原宮の発掘現場を背景に、
「香具山は…」で始まる大和三山を歌った万葉集の古歌にも
準えた男女の物語を描いて行く。
出演は、元は撮影現場のケイタリングをしていたという「こ
いずみとうた」、元はモデルで河瀬監督の2004年『影』にも
主演している大島葉子、それに以前は助川ドリアンの名前で
パフォーマンスをしていた明川哲也。他に、麿赤兒、樹木希
林、西川のりおらが脇を固めている。
悠久の時と男女の恋の儚さ、そんなものの対比が映画祭の審
査員にはアピールし易いのかな。そこに戦争の影が落ちてい
れば、ある意味言うことのない作品かもしれない。しかし僕
には描かれる「死」の扱いが安易に感じられて納得が出来な
かった。
これは『玄牝』や、2009年9月紹介小林政広監督『白夜』の
時にも同じ感じを受けたものだが、さらに本作は2006年「仔
猫殺し」で話題になった坂東眞砂子の原作に基づくとのこと
で、その死生感は僕とは容れられないもののようだ。

『ナッシュビル』“Nashville”
2007年1月紹介『今宵、フィッツジェラルド劇場で』などを
残し2006年11月20日に亡くなったロバート・アルトマン監督
による1975年の作品。前々回紹介した『天国の日々』と共に
‘Ziggy Films 70's-Vol.2’として再公開される。
オリジナルの日本公開は1976年とのことで、その頃は僕も映
画の仕事を始めていたから、多分西銀座のリッカーミシンビ
ルにあったパラマウントの試写室で観たのかな。でも2時間
40分の上映時間と登場人物の多さに圧倒されて、物語はほと
んど覚えていなかった。
それにこの当時は、まだアンサンブル映画に慣れていなかっ
た面もあったもので、映画全体を観ることが出来ず、正直に
は途中で混乱して多少飽きてしまった記憶も残っている。そ
の印象は1980年『ポパイ』にも続いたものだ。
でも、元々アルトマンは1970年の『BIRD★SHT』や1971年の
『ギャンブラー』などが好きな監督の1人だったし、その監
督の作品に退屈したのが、ショックだったことも頭の片隅に
残っていた。
そんな作品との再会となったものだが、さすがに僕の方も観
る目が成長したようで、今回は充分に楽しめた。と言っても
これはしっかり覚えていた結末については、そこに至る経緯
はやはり釈然としないものがあって、それは当時も見誤った
訳ではなかったようだ。
そのお話は、大統領予備選が行われている年のナッシュビル
の数日間を描いたもの。街には大統領候補の選挙カーが公約
を流しながら巡回し、その中で候補者を支援するコンサート
の準備が進められている。
そしてコンサートに出演する大物歌手や、そのために帰って
くる人気歌手、さらにカントリー&ウェスタンのメッカ=ナ
ッシュビルで一旗挙げたい歌手などが寄り集まってくる。ま
たそこにはコンサートを取材するBBCの記者なども訪れて
いる。
そんな連中が個人的や政治的なそれぞれの思惑を胸に右往左
往して行く。そしてようやくコンサートの開催に漕ぎ着ける
のだが…
それを演じるのが、ネッド・ビーティ、カレン・ブラック、
キース・キャラダイン、ジェラルディン・チャップリン、シ
ェリー・デュバル、スコット・グレン、ジェフ・ゴールブラ
ム、リリー・トムリン、キーナン・ウィン。
他に歌手や舞台俳優も大挙出演し、さらにエリオット・グー
ルド、ジュリー・クリスティが本人役で出ているなど、若手
からベテランまで、正に当時のアメリカ映画界が代表されて
いる感じのものだ。
ノスタルジーで観ることもできるが、政治的な話などは今で
も通じるところも多く、現代でも面白く観ることの出来る作
品だった。


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07月03日(日)
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