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On the Production
by 井口健二
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■AVN、ザ・ウォード、モンスターズ、天国の日々、men's egg、スーパー8、スリー・デイズ+Thor記者会見
『天国の日々』“Days of Heaven”
前々回紹介『ツリー・オブ・ライフ』でカンヌ国際映画祭の
最高賞パルム・ドールを獲得したテレンス・マリック監督に
よる1978年カンヌ監督賞を受賞した作品。
物語の背景は第1次世界大戦が始まった頃のアメリカ・テキ
サス。ローンスター旗のたなびく農場に彼らはやってくる。
彼らは兄と妹2人という触れ込みだったが、兄と下の妹は実
の兄妹だが間の女性とは血の繋がりはない。
その兄はシカゴの鉄工場で働いていたが、労働待遇の悪さに
切れて事件を起こし、妹と一緒に流浪しながらその間に女性
も加わったようだ。しかし殆どその日暮らしの生活は辛苦に
満ちたものだった。
それでも仲睦まじい3人は、農場での小麦の収穫期だけの季
節労働者としてやってくるのだが、そこでその女性を若き農
場主が見初めることになる。そして「兄と妹も一緒に暮らせ
るのなら」と承諾した彼女は農場主と結婚し、3人には天国
の日々が始まるが…
その後の物語はほぼ想像の付くような展開になるが、そのド
ラマが大草原に建つ邸宅や、蒸気機関の農業トラクターなど
見事に再現された当時の風景の中で、息詰まるような演出で
繰り広げられて行く。
出演は、兄役に当時29歳のリチャード・ギア、農場主役には
2005年8月紹介『ステルス』などのサム・シェパード、農場
主が見初める女性役に2008年“The Accidental Husband”な
どのブルック・アダムズ、そしてナレーターでもある妹役に
本作で見出されたリンダ・マンズ。
マリック監督のデビュー作『地獄の逃避行』(Badlands)は
テレビ放映で鑑賞したが、すでにアメリカン・ニューシネマ
を見慣れていた目にはあまりピンとは来なかった。そして本
作以後の1998年『シン・レッド・ライン』、2006年2月紹介
『ニュー・ワールド』も、大作としては認めるものの今一つ
という感覚は否めなかった。
しかし本作は、前々回紹介した『ツリー・オブ・ライフ』と
明らかに対になるもので、これは絶対に併せて観る必要があ
る作品と感じる。この作品に描かれた自然の営みや人間の姿
の描写が新作の根底にあることは間違いない。新作を理解す
るために本作は欠かせないものだ。
『men's egg/Drummers』
シブヤ系男子(ギャル男)が活躍する男性向けファッション
雑誌men's eggから誕生した青春コメディ作品。
主人公は、町の伝統行事「観月祭」を取り仕切る神社の一人
息子。自分の人生は貧乏くじの引き通しと将来に夢も希望も
ない主人公に、突然神主の父親が倒れ、今年の祭りの仕切り
をお前に任せるとの話が舞い込む。
これに対して幼い頃から「観月祭」の目玉となる和太鼓によ
る神楽を特訓されていた主人公は、戸惑いながらもその仕事
を引き受けるのだが、そこには祭りの実施権を狙う近所の寺
の住職が何やら陰謀を企んでいるようだった。
そして、例年の和太鼓奏者のグループに出演を依頼した主人
公は何故か断られ、このため止むなく和太鼓奏者を募集して
新たに特訓することになるのだが…。そこに何故か主人公に
親しく話し掛けるギャル男が現れる。
こうしてギャル男とその仲間たちによる和太鼓訓練が開始さ
れる。つまり、物語はありがちな青春ドラマという感じで、
本作ではその素材が和太鼓ということになるものだが、実は
この和太鼓の演奏シーンが予想以上に良かった。
実際、映像で打楽器の演奏のタイミングを合わせるのはかな
り難しくて、特にバチを高く振り上げる和太鼓ではそれを合
わせるのは至難の業と言える。ところがこの作品では、後半
の演奏シーンのそれが見事に決まっていた。
これは作品の規模から考えても監督の演出と出演者の特訓の
賜物としか考えられないが、これは本当に一見の価値のある
ものに仕上がっていた。とかく日本の映画ではこの辺が蔑ろ
にされることが多いが、本作のこれは見事なものだ。
出演は、神主の息子役に今年2月紹介『高校デビュー』など
の古川雄輝、その妹役に2006年6月紹介『夜のピクニック』
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06月19日(日)
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