ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460140hit]
■「フランス映画祭2011」アーサー3、Chantrapas、消えたシモン・ヴェルネール、マムート、匿名レンアイ相談所、短編集+解説
やかな贈り物も貰って家に帰ってくるが、まだ働いている妻
には多少疎まれている感じだ。
しかも今までが仕事一筋だった男性には、家事もままならず
日曜大工も、てきぱきこなしていた勤務先での仕事のように
は行かない。しかもいろいろな職場を転々としてきた男性に
は年金の不備が発覚し、このままでは満額を受給できないと
通告される。
このため男性は、過去に働いていた職場を訪ねて支払いの証
明書や働いていたことを証明する供述書を集めることが必要
になる。そこで男性は物置きで埃を被っていたバイク=マム
ートを引っ張り出し、その旅を始めるのだが…
年金を巡るトラブルは、日本でも大騒ぎになったばかりでい
ずこも同じという感じだが、日本の場合は役人の怠慢と恐ら
くは不正が原因だから映画とは異なる。しかし映画に描かれ
た異邦人の不法就労の問題など、その国にはその国なりの問
題があるようだ。
ただし映画は年金問題だけを扱っているのではなく、そこか
ら始まる自分自身のアイデンティティを探す旅が主題となっ
て行く。そしてそれは敢えて失ったのか、止むなく失ったの
か、その点が問題となって行くものだ。
共演は、主人公の妻役に1月紹介『ゲンスブールと女たち』
などのヨランド・モロー。他に、イサベル・アジャーニ、ブ
ノア・ポールブールドらが脇を固めている。
監督はテレビ出身のブノワ・ドゥレピーヌ&ギュスタヴ・ケ
ルヴェンのコンビ。
なお、マムートは上記のようにバイクの名称だが、ネットで
(munch “mammut" bike)と検索したら、映画のと同じ2連の
ヘッドライトの付いたオートバイの画像が見付かった。映画
の登場するのはそのヴィンテージモデルのようだが、排気音
もかなりの迫力の名車のようだ。
ただし映画は画像がかなり荒く、それは巻頭の画面などから
意図的のようにも思えるが、その意図が何なのかよく判らな
かった。昔の映画ではこのようなタッチのものもあったよう
な気がするが、今の時代に敢えてそれを再現した理由が知り
たいものだ。
『匿名レンアイ相談所』“Les Emotifs anonymes”
共に対人恐怖症の男性と女性が、その困難を乗り越えて行こ
うとする姿を描いたコメディ作品。なお本作の日本での一般
公開の予定はないようだ。
主人公は、天才的なチョコレートの女性パティシエ。しかし
極端なアガリ症で他人とはまともに話すことができない。そ
れでもチョコレートから離れられない彼女は、とあるチョコ
レート工場に就職するが、それは製造部門ではなく営業部門
だった。
それでも苦手な会話も何とか頑張り、菓子店に製品を置かせ
てもらっていたが、遂に新製品がなけれはもういらないと言
われてしまう。そこで知恵を絞った彼女はネットを経由して
工場の職人たちを指導し、見事に新製品を造り出すが…
一方、工場の経営者も彼女を上回るアガリ症で、相談してい
る精神科医にはいろいろ課題を与えられて、その課題を達成
すべく彼女に接近を図るのだが、これも行き違いの連続で、
ついに2人の関係は決定的な局面を迎えてしまう。
まあ、ラヴコメにはよくあるパターンという感じの作品では
あるが、その中心にあるのがチョコレートで、正に甘い香り
が一杯という感じの作品だ。しかもそこには隠遁した伝説の
パティシエの話なども介在させて、それなりに変化のある作
品に仕上げられている。
脚本と監督は、2008年6月紹介『ベティの小さな秘密』など
のジャン=ピエール・アメリス。前作も若い女性の心理を描
いた柔らかいタッチの作品だったが、本作では女性だけでな
く男性の側からもその心理が描かれている。
今の時代にこんな初な男女がいるのだろうかというようなお
話だが、映画を観ているとそんな人たちがいて欲しいという
思いにもなる、そんな優しさに溢れた作品に仕上げられてい
る。
出演は、女性パティシエ役に本作でセザール賞主演女優賞に
ノミネートされたイザベル・カレ。そして経営者役に『マム
ート』にも出ていたブノワ・ポールブールド。劇中でカレが
[5]続きを読む
06月18日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る