ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460200hit]

■犬飼さんちの犬、風吹く良き日、おじいさんと草原の小学校、赤い靴、グッド・ハーブ、ハウスメイド、沈黙の宿命、水曜日のエミリア
ン/デッマンズ・チェスト』などのナオミ・ハリス、2005年
11月紹介『ホテル・ルワンダ』などのトニー・ギゴロギらが
共演している。

『赤い靴』“The Red Shoes”
ハンス・クリスチャン・アンデルセンの童話をモティーフに
してバレエ界の内側を描いた1948年の名作がディジタル・リ
マスターにより復活。一昨年のカンヌ映画祭で話題を呼んだ
作品が日本でも公開されることになった。
登場するのは国際的に活動するバレエ団。多少ワンマンな団
長に率いられたそのバレエ団は果敢に新作に挑み高い評価を
得ていた。そして今回も新作『火の心』が大成功を納める。
しかし次の公演でのプリマドンナの引退も発表される。
一方、団長はその公演に絡んで2人の新人と契約していた。
1人は『火の心』の音楽は自分の作品の盗作と主張する作曲
家と、もう1人は成功を祝うパーティを開催した社交界の令
嬢でもあるダンサー。その2人の才能は、厳しい団長も認め
るものだったのだ。
そして団長は、作曲家に童話『赤い靴』を基にしたバレエの
作曲を指示し、令嬢をそのプリマドンナに抜擢する。その物
語は、舞踏会に憧れる少女が魔法の赤い靴を履き踊りは上達
するが、やがて靴に支配され踊りを止められなくなる…とい
うものだった。
映画は、そのバレエ化された『赤い靴』の舞台シーンを中心
に置いて、童話の物語を巧みに反映したストーリーが展開さ
れて行く。それはバレエに魅せられてしまった人々が織りな
す哀しみに満ちた物語だ。
作品はずっと以前に観た記憶はあったが、子供ではなかなか
理解し難い物語だったかも知れない。でも今観ると典型的な
メロドラマといった感じのストーリー展開で、それ自体は今
となっては特別とも言えないものだ。
しかし間に挿入されるバレエシーンでは大胆に合成が行われ
るなど、その映像表現には注目すべき点のある作品だった。
まあその合成も今の水準ではないが、この時代にこのような
表現を試みたこと自体が評価されるべきもの。正に歴史的な
作品と言える。
監督は、1946年『天国への階段』でも知られるマイイクル・
パウエルとエメリック・プレスバーガー。因にパウエルは後
に『血を吸うカメラ』(1960年)と言った作品も監督し、プ
レスバーガーは1964年映画化された『日曜日には鼠を殺せ』
の原作者としても知られる。
ただし本作で注目すべきは撮影監督のジャック・カーディフ
と美術監督を務めた画家のハイン・ヘックロス。『天国への
階段』の撮影も担当し、後には1973年『悪魔の植物人間』と
いった作品の監督も手掛けるカーディフが、ヘックロスのス
ケッチを基に数々の映像表現を生み出しているものだ。

『グッド・ハーブ』“Las buenas hierbas”
アルツハイマー型認知症を題材にしたメキシコの女性監督に
よる作品。
主人公はシングルマザーの女性。彼女の母親はアステカ時代
の薬草を研究している民族植物学者だったが、ある日のこと
訪ねてきた娘に家の鍵が無くなったと訴え、窓から変な男が
覗いていたとも言い出す。
しかし鍵はすぐに見つかり、母親の発言も勘違いと思われた
が、自らの症状を疑問に感じた母親は医師の診断を受け、認
知症と診断されてしまう。そして母親は「誰かの世話になる
のは嫌だと」と娘に宣言するのだが…
映画には、アステカの薬草を記録した1552年に編纂されたと
いう古書の写本が登場し、さらにその薬草を描いた挿絵がア
ニメーションになるなど素敵なシーンも挿入されている。そ
んな細やかな演出も施されている作品だ。
脚本と監督のマリア・ノバロは1951年生まれ、1989年に発表
した第1作がニューヨーク批評家協会賞を受賞、その後も多
数を受賞するが、2000年以降は後進の育成に務めていた。本
作はそんな女性監督が10年ぶりに手掛けた作品となる。
出演は、娘役に本来は舞台女優で本作の演技により主演女優
賞を受賞しているウルスラ・プルネダ、母親役には1984年製
作のメキシコ映画『フリーダ・カーロ』に主演のオフェリア
・メディーナ。

[5]続きを読む

05月22日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る