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On the Production
by 井口健二
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■クロエ、Paradise Kiss、スコット・ピルグリム、ビューティフル、ザ・ホークス、小さな池、ソウルのバングラ…、エンジェル・ウォーズ
法滞在の中国人やアフリカ人に仕事の斡旋などもしているよ
うだ。
そんな彼には2人の子供がいて、学校の放課後は中国人女性
にその世話を頼んでいるが、その子供たちの実の母親は精神
疾患の躁病で、その症状が出ているときには何をし出かすか
判らない。このためその母親とは別居状態にある。
そして中国人が仕切る海賊版製造の仕事に行き詰まりが生じ
たり、麻薬密売人のセネガル人が検挙されたり、いろいろな
事件が進行して行くが、そんな中で彼自身の余命が2カ月と
医者に告知されてしまう。
子供たちの母親の住むアパートの部屋からはサグダラ・ファ
ミリアが遠望されるなど、観光地としても華やかなバルセロ
ナの裏側で、ぎりぎりの生活を送っている人々の姿が主人公
の目を通して描かれて行く。
それは主人公にとっての生活の糧でもあるが、そんな中国人
やアフリカ人のために少しでも良かれと行動を起す主人公。
それは、自分の死期が迫っているからだけでもないようだ。
そんな主人公の苦しみや悲しみが描かれる。
出演は、2008年3月紹介『ノー・カントリー』でアメリカ・
アカデミー賞助演男優賞を受賞し、本作でも主演男優賞候補
に挙げられたハビエル・バルデム。
他には、アルゼンチンの舞台女優で舞踏家のマリセル・アル
バレス、2008年9月紹介『アラトリステ』に出演のエドゥア
ルド・フェルナンデス、2005年6月紹介『世界』に出演のチ
ェン・ツァイシェン、テレビ版『三国志』に出演のルオ・チ
ン。
また主人公の2人の子供役のハナ・ボウチャイブとギレルモ
・エストレラ、セネガル人の妻を演じるディアリァトゥ・ダ
フは、実際にそれに近い境遇にいる人々が選ばれて出演して
いるそうだ。
監督の前作『バベル』はかなりトリッキーで、その中で日米
のスターたちが踊っている感じもしたが、本作ではストレー
トに物語が展開され、それは最初は少し戸惑いを覚える感じ
もした。しかしこの真摯な物語には、この手法が最適なもの
だろう。そんな感じの作品だ。
『ザ・ホークス』“The Hoax”
1971年、大手出版社マグロウ=ヒルを相手に繰り広げられた
「ハワード・ヒューズ自伝」の贋作事件。その顛末を当事者
である贋作者のクリフォード・アーヴィング自身が著わした
著作に基づいて映画化した作品。
2002年2月紹介『シッピング・ニュース』などのラッセ・ハ
ルスレム監督が、2009年4月紹介『HACHI』の前に同じ主演
のリチャード・ギアと組んで発表した2006年の作品で、この
後の監督は2009年まで作品を発表していない。
アーヴィングは、それ以前には贋作画家エルミア・デ・ホー
リーの自伝(後にオースン・ウェルズが映画化した『フェイ
ク』の基になった)などを出版したこともあったが、1970年
の当時はあまりぱっとしない作家だった。
そんな彼が企画を思い付く。「ハワード・ヒューズ自伝」。
当時すでに隠遁生活に入り、腹心の部下の前からも姿を消し
ていたヒューズは、巨額の賠償請求の裁判なども起こされて
本人が人前に出てくる可能性が全く無かった。
それならでっち上げの「自伝」を出しても本人が文句を言っ
てくる事はないのではないか。こう考えたアーヴィングは、
ヒューズと個人的にコンタクトが取れたと自称し、その「自
伝」をマグロウ=ヒルに売り込んでしまう。
ところが、「自伝」を本物らしく見せようと調査をするアー
ヴィングの前にいろいろな情報提供者が現れ始める。そして
最後に届いた資料には、当時のニクソン政権を揺るがす政治
スキャンダルが記載され、ヒューズがその公表を望んでいる
ことが伺われた。そして出版社に圧力が掛かり始める。
作品は飽く迄もアーヴィングの言い分に従ったものだが、映
画化に当って製作者らが調査した結果でもこの政治スキャン
ダルを伺わせる事実が浮かび上がったそうだ。もちろんアー
ヴィングが行ったことは犯罪だが、それによって政治が動い
たことも事実かも知れない。そんなことも思わせる作品に仕
上げられている。
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04月03日(日)
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