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On the Production
by 井口健二
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■八日目の蝉、バビロンの陽光、光のほうへ、星を追う子ども、大木家のたのしい旅行、孫文の義士団+製作ニュース
り明確に示されている。
しかしここに描かれる黄泉国は、例えばフランスの詩人ジャ
ン・コクトーが1949年に監督した『オルフェ』のように棘々
しいものではなく、むしろ牧歌的な風景の中に危険や脅威が
潜み、そして廃虚などが描かれているものだ。
このような風景は、監督の出自であるヴィデオゲームには有
り勝ちだし、日本のアニメーションでも良く観る感じなのは
少し残念だが、こんな風景が日本や海外のアニメファンに受
けることもまた事実なのだろう。
物語的には、主人公自身の目的が不明確で、それは一種の巻
き込まれ形ということではあるのだが、それが主人公への感
情移入をし辛くしている点は否めない。でもまあこれも最近
の日本のアニメーションではよくある展開かも知れない。
さらにプレス資料に用語辞典を付けなければならないほどの
情報過多も最近の日本アニメには有り勝ちなもので、結局そ
の延長線上にある作品ということなのだろう。ただその中で
は、人類史も背景にした物語の壮大さなどは認めたいところ
だが。
とは言うものの、先にも書いた感情移入の点では、結局主人
公の心情が最後まで掴み切れないのがもどかしいところで、
この辺でもう少し工夫が欲しい感じはした作品だった。
『大木家のたのしい旅行』
2008年2月紹介『あの空をおぼえている』などの俳優・竹野
内豊が、映画では初めてコメディに挑戦したという作品。
主人公は、長い同棲生活の末に成り行きで結婚してしまった
ために、新婚2日目だというのにすでに倦怠期というカップ
ル。その新居への引っ越し荷物の中から夫の拘わりだった炊
飯ジャーが見当たらなくなる。
ところが近所の大型スーパーに買い物に出掛けた妻は、その
炊飯ジャーを抱えたずぶ濡れの男を目撃し、その跡を付けて
スーパーの屋上に行くが姿を見失ってしまう。しかしその下
り階段で怪しげな女占い師に声を掛けられる。
そしてその占い師から手渡された「地獄ツアー」のチラシは
夫の興味を引き、2人は占い師の手引きで炊飯ジャーが見付
かるかもしれない地獄ツアーに行くことになるが…
実は、事前には倦怠期夫婦の地獄旅行という設定を見ただけ
で、これは夫婦間の修羅場のお話かな…何て気分で試写を観
に行った。それで最初は確かにそのような雰囲気も漂ってい
たが、本編が始まるとこれが思いの外にしっかりとした地獄
巡りものだった。
しかも地獄に繋がる1本道では何があっても振り返ってはい
けないなど定番の地獄巡りの設定も取り入れられているし、
地獄の住人が赤い人と青い人(鬼)などの細かい点も気が利
いている。それにちょっとだけ明らかにされる地獄の住人の
設定も悪い感じではなかった。
原作と脚本は、京都芸術センター舞台芸術賞や岸田國士戯曲
賞など受賞している劇作家の前田司郎。さらに前田は野間文
芸新人賞、三島由紀夫賞、芥川賞の候補にもなっている。そ
んな前田作品の今回は初映画化だそうだ。
そして監督は、昨年8月紹介『裁判長!ここは懲役4年でど
うすか』などの本田隆一が担当。脚本もしっかりしているの
だろうが、一見チープな地獄の景観なども程良い感じで巧み
に描かれていて、悪くない感じがしたものだ。
出演は、夫役の竹野内に対する妻役に2010年『のだめカンタ
ービレ』などの水川あさみ。他に、樹木希林、片桐はいり、
荒川良々、でんでん、山里亮太、柄本明、今年公開の『アバ
ター』という作品に主演の橋本愛らが脇を固めている。
物語的にはもう少し捻りがあっても良いかなあとは思うが、
結末も悪くないし、これはこれで気に入る作品だった。
『孫文の義士団』“十月圍城”
1906年10月、腐敗した中国清王朝を打倒するために立ち上が
った孫文が、中国各地13省の代表との協議に必要とした1時
間。その時間を清王朝から派遣された暗殺団と対決し、革命
の指導者を守り抜いた人々の物語。
10月1日、孫文は滞在していた日本を出発し、香港を訪れる
ことを決める。それは中国各地の代表たちと革命を起こすた
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03月13日(日)
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