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On the Production
by 井口健二
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■メアリー&マックス、ツーリスト、愛しきソナ、木漏れ日の家で、キッズ・オールライト、ジャッカス3D、ナナとカオル+ニュース
と紹介され、その時間の中での遣り繰りが主婦の役目とも紹
介されていた。
また、叔母である監督が来訪したときのみ訪れることの出来
る外貨ショップでは、ソフトクリームに大喜びする一方で、
それでも高価な小池屋のポテトチップスなどは最初から眺め
るだけという子供たちの様子なども紹介される。
そして繰り返し挿入されるのが、大競技場を使ったマスゲー
ムなどの大規模な国家行事の映像。前作の時には、北で撮影
された映像は全て北朝鮮政府の検閲を受けたと紹介されてい
たが、このアンバランスな映像に検閲官は疑問を感じなかっ
たようだ。
なお作品では、最近届いたソナからの手紙や、前作でピアニ
ストを目指していた甥の最近の姿なども紹介されていたが、
その甥の父親である監督の兄と監督の父親は、その後は再び
会うこともなく他界したそうだ。
近くて遠い国・北朝鮮。本作はその実態を垣間見せるだけだ
が、それでも充分に衝撃的な作品になっている。

『木漏れ日の家で』“Pora umierać”
2008年のサンフランシスコ国際映画祭など各地の映画祭で、
作品賞や主演女優賞、観客賞などを受賞しているポーランド
映画。
主人公は、ワルシャワ郊外の古びた一軒家にフィラデルフィ
アという名の犬と暮す高齢の女性。彼女の住む家はその住人
と同様かなり老朽化しており、その家には以前は国の命令で
ロシア人を住まわせたこともあったが、今の1人暮らしには
ちょっと大きいようだ。
そんな家の片側の隣には毎週末になると壮年の男性が訪ねて
くる愛人宅らしい家があり、反対側の隣の家では若いカップ
ルが子供たちを集めて音楽教室を開いている。その2軒の家
を双眼鏡で覗くのが主人公の日々の楽しみでもあった。
その主人公にはその家で育てた1人息子がいて、現在は町中
に家庭を持つ息子は時折孫娘を連れて会いに来てくれてはい
たが、その孫娘は祖母の家が好きではないようだ。さらに息
子の嫁は一緒に訪れることもなかった。
そんなある日、1人の不審な男が家に入ってくる。その男は
犬の働きで退却するが、去り際に隣の愛人を持つ男が主人公
の家を欲しがっていると告げる。それは彼女が愛着を持つそ
の家を取り壊すことを意味していた。
一方、反対側の家からはドストエフスキーというニックネー
ムを持つ少年が侵入してきたりもする。彼は庭のブランコに
乗りたがっていた。そして主人公は、最近物忘れがひどくな
るなど、日々の生活に支障が出ていることを自覚し始めてい
た。
主人公の老女を演じるのは、1915年2月20日生まれ、現在も
現役舞台女優というダヌタ・シャフラルスカ。
2007年9月紹介『僕がいない場所』などの監督ドロタ・ケン
ジェジャフスカが、1991年の長編デビュー作『ディアブリィ
・悪魔』に出演していた女優に主演をオファーし、以来20年
掛かって実現した作品だそうだ。
その20年間は女優に合った物語を探すのに苦労していたが、
その中で見い出した共産時代の実話に基づく脚本は、2週間
で完成されたとのこと。主人公のモノローグと犬への語り掛
けによって綴られる作品は、美しいモノクロームの画面の中
で静かに進んで行く。
また、カンヌ国際映画祭に出品されていたらパルムドッグ賞
の受賞間違いなしと思えるフィラデルフィアの演技も素晴ら
しかった。

『キッズ・オールライト』“The Kids Are All Right”
今年のゴールデン・グローブ賞でコメディ/ミュージカル部
門の作品賞と主演女優賞に輝いた作品。
仲良く暮してきた腹違いの姉と弟。その姉が大学進学で生家
を出ることになり、2人はその前に自分たちの父親がどんな
人物か知ろうとする。そして父親の現住所を調べ出した2人
は、父親の許を訪ねるが…
このシチュエーションを聞いたときに最初に頭に浮かんだの
は、幼い子供を抱えた父親が再婚して次の子が出来たが、そ
の子供も小さい頃に父親は出奔してしまった…というような
ものだった。
ところが映画が描いていたのは、レズビアンのカップルが子

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02月06日(日)
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