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On the Production
by 井口健二
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■市民ポリス69、神々と男たち、ブルーバレンタイン、トゥルー・グリット、悲しみのミルク、アトムの足音が聞こえる+ニュース
だけではどうにもならず、やむなく「真の勇気」を持つと見
込んだ1人のシェリフに同行を求めるが…
その旅には同じならず者を追うテキサスレンジャーの男も加
わって、3人は危険に満ちた荒野の中をそれぞれの目的に向
かって進んで行く。そこには信頼や友情も生まれるが、その
一方で意見の違いも存在することになる。
1969年の映画化は当時西部劇が斜陽の中での作品で、僕自身
も公開当時に観てはいるが、あまりピンと来なかったと記憶
している。それでもウェインが受賞したのは功労賞的な意味
があると当時も言われたものだ。
その作品のリメイクとなるが、コーエン兄弟はこれはリメイ
クではなく原作の再映画化と称しており、実際に兄弟は幼い
頃から原作小説を読み耽って、何時かは自分たちで映画化し
たいと思っていたのだそうだ。
従って本作は、1969年版以上に原作に忠実なものになってお
り、登場人物の台詞の多くも原作のままのものが採用されて
いるとのことだ。そしてその作品は、登場キャラクターたち
の人間関係を豊かに描いた作品にもなっていた。
さらに本作は、コーエン兄弟初の本格西部劇ということにも
なっている。因に2年前のオスカー受賞作も西部を舞台にし
ていたが、あれは現代劇だったとのこと。本作ではコーエン
兄弟が新たな道に歩み出した作品とも言われている。
出演は、シェリフ役に昨年12月紹介『トロン/レガシー』の
ジェフ・ブリッジス、テキサスレンジャー役に2009年12月紹
介『インビクタス』のマット・デイモン、そして語り手でも
ある少女役に全米規模のオーディションで選ばれたヘイリー
・スタインフェルド。
なおオスカー助演賞候補にも挙がっているスタインフェルド
は、撮影時に実際に14歳だったようだ。
他に2008年3月紹介『ノー・カントリー』でもコーエン兄弟
と組んでいるジョッシュ・ブローリン、2005年12月紹介『メ
ルキアデス・エスラーダの3度の埋葬』などに出演のバリー
・ペッパーらが脇を固めている。
『悲しみのミルク』“La teta asustada”
2009年のベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞と国際批評家
連盟賞をW受賞し、昨年のアカデミー賞外国語映画部門にも
ノミネートされた2008年製作のペルー映画。
1980年代のペルーを混乱と恐怖に陥れた武装集団「センデロ
・ルミノソ」。その武力闘争の中で行われた集団レイプなど
の悪魔的な行為によって精神的に深く傷つけられた人々。そ
んな暗い歴史の影を背負って生きる女性の物語。
ベッドの中で衰弱した女性が歌っている。それは目の前で夫
を殺され、レイプされた自身の経験を即興で歌っているもの
だった。その歌に女性の娘である主人公も加わり、2人の心
が通じあったところで母親は事切れる。
ペルーの首都リマの郊外の高台に位置するスラム地区。そこ
で主人公と母親は、叔父の家に身を寄せて暮していた。そし
て母親が亡くなった今、主人公はその遺体を故郷の村に埋葬
したかったが、我が子の結婚を控える叔父にはその費用を出
す余裕がなかった。
そこで主人公は自らの手でその費用を捻出しようとするのだ
が、主人公には母親が恐怖の中で授乳したことによる「恐乳
病」と呼ばれる病があり、それにより引き継いだ母親の恐怖
から逃れることが出来なかった。それは医者からは病気では
ないと言われていたが…
「南米のポル・ポト」とも呼ばれた赤色集団。その恐怖の時
代を生きた人々の心の傷は余りにも深い。それはアンデス系
先住民「ケチュア」の人々には特に深いもので、彼らは即興
の歌の中にその悲しみを表わし続けている。
その一方でこの作品は、彼らの明るく踊り歌う婚礼の儀式の
様子なども描くが、さらに彼らを搾取する、扉1枚を隔てた
豪邸に住む富裕な白人の存在なども描き出している。
脚本と監督は、1974年にリマで生まれ、1990年代後半にスペ
インのマドリッドに移住し、現地の映画学校で脚本を学んだ
後、ニューヨーク大学の映画科で監督術の勉強をしたという
クラウディア・リョサ。
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01月30日(日)
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