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On the Production
by 井口健二
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■津軽百年食堂、婚前特急、アメイジング・グレイス、ゲンスブール、塔の上のラプンツェル、リセット、グリーン・ホーネット+製作ニュース
ュエットで録音した『ジュ・テーム〜』1st Ver.は世間を騒
がせるが、当時夫のいたバルドーが発売直前にリリース中止
を懇願、結局お蔵入りとなってしまう。
これによってバルドーとは別離。しかし1968年に映画の共演
でイギリス人女優ジェーン・バーキンと出会い、翌年に録音
した『ジュ・テーム〜』2nd Ver.は、BBCが放送禁止にし
たことなどが逆宣伝となって大ヒットを記録する。
さらに1979年にはフランス国家「ラ・マルセイエーズ」をレ
ゲエに編曲した曲をリリースしてマスコミからは国家への冒
涜として非難され、右翼の攻撃も受ける。そしてそれを沈静
化させるため、競売に出た作詞者による直筆の原詞を破産覚
悟で買い取る。
その一方で、1970年代末に別れたバーキンにはその後も楽曲
を提供したり、2人の間に生まれたシャルロットに対する愛
情など。とにかく過激というか、破天荒なゲンスブールの生
涯が描かれている。
監督は、現代フランスコミックス(バンドデシネ)の重要な
作家の1人と言われるジョアン・スファール。自らもユダヤ
人で「僕の師匠は常にゲンスブールだが、無理して歌手にな
って彼の気分を害したくなかったから漫画家になった」と言
う作家が、初監督作品として本作を手掛けている。
主演はエリック・エルモスニーノ、バーキン役に『スパイダ
ーマン3』に出ていたというルーシー・ゴードン、バルドー
役に“Asterix & Obelix”シリーズの第1作に出演していた
というレティシア・カスタ。
他に、2008年9月紹介『ヘル・ボーイ』などのダグ・ジョー
ンズ、2010年6月紹介『セラフィーヌの庭』などのヨランド
・モロー、前回監督作品を紹介した故クロード・シャブロル
らが脇を固めている。
バルドーとバーキンを見事に似せて見せた2人の女優の演技
も素敵だったし、画面に登場する主人公の相棒=イマジナリ
ー・フレンドの造形も流石バンドデシネ作家の作品という感
じで見事に決まっていた。希代のアーチストの奇抜な生涯を
観るということでも面白い作品だった。

『塔の上のラプンツェル』“Tangled/Rapunzel”
1937年に史上初の長編アニメーション作品『白雪姫』を生み
出したディズニーが、その記念すべき第50作目として、同じ
くグリム童話に材を取って作り上げた作品。
ただし本作はグリム童話の『髪長姫』をベースにはしている
が、ストーリーは巧みに改変されていて、全く新しい夢と冒
険の物語が展開される。そこにはラプンツェルが塔に閉じ込
められる理由なども分かり易く描かれているものだ。
因にこの原作は、1940年代にウォルト・ディズニー本人も映
画化を企画したが、諸般の事情で断念したというもの。その
物語が、ある意味現代的な視点で描き直されているという感
じでも作られている。
その物語の始まりはかなり昔。永遠の若さの得られる魔法の
花を見つけた魔女が密かに1人でその恩恵に預かっていた。
ところが妊娠したその国の王妃の具合が悪くなり、国王の命
令で薬草を探していた兵士がその花を摘み取ってしまう。
そしてその花の力で王妃は回復し姫が誕生するが、花は失わ
れてしまう。しかし姫の髪に花の力が宿っていることを知っ
た魔女は、姫を拉致して隠れ谷の塔に幽閉、自分の子として
育て始める。しかもその髪は一度切ると力を失うことから、
髪を長く伸ばしたまま…
こうして10数年が過ぎ、魔女は姫の長い髪を伝って塔を出入
りし、姫には不自由ない暮らしをさせていた。しかし姫は、
毎年自分の誕生日になると遠くの空に舞う不思議な光に心を
馳せ、外の世界への憧れを募らせていた。
2009年7月紹介『プール』や同年10月16日付東京国際映画祭
コンペティション作品『台北に舞う雪』にも描かれた「コム
ローイ=天燈」が物語のキーとして登場し、詩情豊かな物語
が展開される。
その一方で、動物を使ったコメディリリーフや、アクション
もバランス良く描かれるのがディズニーアニメーションの真
骨頂だ。それに本作の物語では、若い女性の外の世界への憧
れや怖れなども丁寧に描かれていた。

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01月16日(日)
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