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On the Production
by 井口健二
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■ブローン・アパート、再生の朝、死に行く妻との旅路、台北の朝僕は恋をする、さくらさくら、幸せの始まりは、唐山大地震+ニュース
主人公は、大学は卒業したが就職せずに家業の中華そば店の
手伝をしている若者。そんな若者には学生時代からつきあっ
ている彼女がいたが、その彼女がパリに旅立ち、彼はその跡
を追うべく旅費を稼いでいるのが現状。しかしまだ先は長そ
うだ。
その傍ら若者は、毎日近くの書店に立ち寄っては、立ち読み
でフランス語会話の勉強にも余念がなかったが、そんな彼に
学生アルバイトの女子店員が声を掛け、会話を交すようにな
る。でもパリにいる彼女を思う彼の心に揺るぎはない。
ところがある日、いつも留守電だったパリの彼女から電話が
掛かり、若者は別れを告げられてしまう。そこで慌てた若者
は、そば店の常連で不動産業を営む男にパリに行くための旅
費の借財を申し入れるが…、その替りに男からある仕事を頼
まれる。
そんなお話に、裏では怪しい仕事をしているらしい不動産業
の男の背景や、その男の甥っ子とその仲間、さらに彼らの怪
しい行動を追っている刑事などが絡んで、台北の夜の街を舞
台にした物語が展開される。
脚本と監督は、ボストン出身で南カリフォルニア大学大学院
の映画芸術学科に学んだというアーヴィン・チェン。元々中
国系だった監督が、2007年に死去したエドワード・ヤン監督
に師事するために台湾に移住。短編で実績を挙げての長編デ
ビュー作となっている。
主演は、監督の短編にも出演していたジャック・ヤオと、台
湾でCMクイーンともいわれる人気者のアンバー・クォ。他
に、2007年『ラスト、コーション』などのクー・ユールン、
2007年9月紹介『花蓮の夏』などのジョセフ・チャン、芸歴
30年と言う歌手のカオ・リンフェンらが脇を固めている。
また本作では、ドイツ出身の監督ヴィム・ヴェンダースが製
作総指揮を手掛けたことも話題になっているようだ。
台湾製のこの種の青春映画も何本か観ているが、今までに観
た作品はいずれも、どこかに独特の雰囲気があったように感
じる。その雰囲気がこの作品では何となく希薄で、それは見
方を変えれば世界標準に近づいているようにも感じられると
ころだが…。本作は台湾でも大ヒットしたとのことで、これ
が新しい台湾映画ということになるのかも知れない。

『さくら、さくら』
1912年に日米友好の礎となるべくワシントンDCに贈られた
桜並木。その寄贈の立て役者の1人となった化学者・高峰譲
吉の生涯を描いた作品。
実は試写の前に宣伝担当の人から高峰譲吉を知っていますか
と聞かれて、即座には判らなかった。しかしタカヂアスター
ゼの発明者と聞いて記憶が甦った。それがどこで得た知識な
のかは定かでないが、僕の次に来た同年配の評論家の人も同
様の反応だったようだ。
それで、僕らより若い宣伝担当者の人はタカヂアスターゼも
知らなかったそうだが、僕は昔好きだったテレビドラマ『日
真名氏飛び出す』や当時の三共製薬のCMの話などもして思
い出を伝えることが出来た。
その高峰譲吉は1854年に加賀藩御典医の長男として生まれ、
12歳にして長崎に留学の後、大阪医学校を経て東京の工部大
学校(後の東京大学工学部)を首席で卒業、さらにイギリス
・グラスゴー大学に留学、帰国して農商務省に入省した。
そして1886年には専売特許局代理として日本の特許制度の整
備に尽力、また化学肥料を開発して東京人造肥料会社(後の
日産化学)を設立、日本の農業を改革する化学肥料の普及に
も力を注いだ。
その一方で、1884年のニューオリンズ万国博覧会には事務官
として派遣され、そこで知り合ったアメリカ人女性と婚約、
1887年に結婚して、日本人とアメリカ人による国際結婚の第
1号にもなっている。
さらにアメリカに特許出願した「高峰式元麹改良法」に着目
した酒造メーカーの誘いを受けて再渡米。他の酒造業者の反
発を買って研究所を焼き討ちされるなどの妨害も受けるが、
1894年にタカヂアスターゼを発明し、消化薬として大成功を
納める。
その他、止血剤としてのアドレナリンの開発や、黒部川の電
源開発、アルミニウム工業の推進などにも関ったとされてい

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12月26日(日)
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