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On the Production
by 井口健二
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■デュー・デート、Gソシアリスム、デッド・クリフ、名前のない少年…、ヒアアフター、完全なる報復、ジーザスC、ビン・ラディンを探せ
共に死のうとしたが死に切れず1人町に戻ってきた青年。そ
してインターネット上にだけ生き続けているその恋人の奇妙
な三角関係が描かれる。
主人公となる少年はMr.Tambourine Manのハンドルネームで
インターネット上に詩を発表している。そんな少年はボブ・
ディランに憧れ、いつか町を出て行きたいと思っているが、
母親と2人暮らしの生活などは閉塞感で一杯だ。
その少年はある日、インターネット上ではJingle Jangleと
名告る少女の画像を見付け、彼女のことを思いながら「名前
のない少年、脚のない少女」の詩を創作する。そして少年は
深夜の町で親友と煙草を吹かし酒を飲むが、閉塞感に変ると
ころはない。
やがて学友の一家の母親が自殺。少年はさらに行き場のなさ
を募らせて行く。そんな中で少年はジュリアンという1人の
青年と出会う。彼こそはJingle Jangleの恋人で、彼女と共
に自殺しようとしたが死に切れず、1人で町に戻ってきたの
だった。
物語は、このジュリアン役で出演もしているイズマエル・カ
ネッペレの原作小説に基づくもので、南部のドイツ移民の子
である原作者が自らの心情を描いたもののようだ。そしてそ
の原作に共感した都会生まれの監督が、自ら南部の町に2カ
月間暮らしながら、原作者と共に作り上げたシナリオに基づ
いて映画化が行われている。
また出演者には現地の人たちが登場しているが、その選考は
インターネット上のフォトログなどを通じて行われ、400人
以上との面接の上で10人が選ばれ、さらに演技のレッスンな
どをして撮影に臨んだそうだ。
こうして主演者のエンリケ・ラレーらが選ばれているものだ
が、特にJingle Jangle役のトゥアネ・エジェルスは、実際
に彼女自身が撮影した画像などをインターネットにアップし
ており、映画にもその画像が使用されているそうだ。
本来自殺行為が出てくる作品は好みではないが、本作の場合
は主のテーマではないし、どちらかと言うと批判的に扱われ
ているから容認する。その自殺などに揺れる若者の心情が、
正にリリカルに表現された作品だった。
なお原題は、英語訳では‘The Famous Ones and the Dwarfs
of the Death’となるようだ。

『ヒアアフター』“Hereafter”
2006年11月紹介『硫黄島からの手紙』以来のコラボレーショ
ンとなるスティーヴン・スピルバーグ製作、クリント・イー
ストウッド監督によるヒューマンドラマ。死後の世界を垣間
見てしまった人々の苦悩と希望が描かれる。
主人公の1人はフランス人の女性ジャーナリスト。出演する
テレビ番組のディレクターと共にバリ島に来ていた彼女を津
波が襲う。そして九死に一生を得た彼女は、その仮死状態の
間に不思議な世界を目撃する。
もう1人の主人公はアメリカ人の男性。幼い頃に熱病で生死
の境を彷徨った彼には、人の死後の世界を観る能力が備わっ
ていた。そして以前はその能力を使って死者の話を聞くこと
も行っていたが、それは彼自身の精神に大きな負担を強いて
いた。
そしてもう1人はロンドンに住む幼い少年。双子の兄と共に
麻薬中毒の母親を気遣いながら成長してきた彼を大きな悲劇
が襲う。このような3人巡って、人の死後の世界に関わる物
語が展開されて行く。
死後の世界というのは、ちょうどリメイク版の『ゴースト』
も上映中だが、人間にとっては謎であり、恐怖であり、また
ロマンであるのかも知れない。従ってその様子を描いた作品
も枚挙のいとまもないが、いずれもそれは希望であるように
も思える。
そんな死後の世界を本作は、人への思い残した者たちのいる
ところであり、多少は現世にも影響を与えることのできる、
『ゴースト』の世界観に近いものに描いているようだ。これ
が恐らくはアメリカ人の一般的な考え方なのだろう。
出演は、2006年4月紹介『ロシアン・ドールズ』などのセシ
ル・ド・フランス、2009年12月紹介『インビクタス』に続け
てのイーストウッド作品になったマット・デイモン。他に、
ブライス・ダラス・ハワード、マルト・ケラーらが共演して
いる。

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11月21日(日)
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