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On the Production
by 井口健二
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■第23回東京国際映画祭<コンペティション部門>
ュヴィッツだけでなく、収容所の被害者名簿に残っていない
人々も襲っていたのだ。
脚本と監督は、2009年に“Walled In”という作品などを手
掛けているジル・パケ=ブレネール。その監督が本作では、
ホロコーストをより身近な感覚で描きたかった…と映画化の
動機を語っている。
主人公のジャーナリストを、2008年6月紹介『ブーリン家の
姉妹』などに出演のクリスティン・スコット・トーマスが演
じている。他に、2003年4月紹介『夏休みのレモネード』な
どのエイダン・クインらが共演。

『ゼフィール』“Zefir”(トルコ映画)
物語の舞台は、時には深い霧が立ち籠める暗く寂しい高原地
帯。主人公の少女は、牧畜が中心らしいその場所に住む祖父
母の許で夏休みを過ごしていた。そこには友達もいたが、彼
女は早く母親が迎えに来てくれることを望んでいた。
そんなある日、彼女のミスもあって1頭の優秀な乳牛が霧の
中に消えてしまう。それと入れ替わるように母親がやってく
るのだが、束の間の親子の時間の後、母親は再び家を出て行
くと話す。それは母親が志願した仕事で、長く掛かる仕事だ
とも。そこで少女は母親の出発を阻止すべく行動を起こすの
だが…。
物語の結末については、何とも言えないものになっていた。
それが意味することも監督の言いたいことも、僕にはよくは
伝わらなかった。でもここに描かれた内容が、単に主人公の
我儘とも言い切れないし、これが一つの結末であることは確
かだろう。
監督のベルマ・バシュは1969年生まれ、イスタンブール大学
で英文学を専攻した才媛で、2006年初監督した短編がカンヌ
国際映画祭の短編コンペティション部門に正式出品されてお
り、その時の評価では、テーマ性などがベルイマンにも例え
られたそうだ。
という女性監督による本作は長編第1作となるが、本作もテ
ーマはかなり重いものになっている。しかしそこに至る過程
などにはいろいろ細やかな描写もあって、その辺には女性監
督らしさも感じられた。
因に、本作の背景となるトルコの高原地帯は、監督自身が子
供時代の夏休みに過ごした祖父母の田舎から想を得ていると
のことだが、本作のようなことが起こらなくても、かなりト
ラウマになりそうな背景だった。

『僕の心の奥の文法』“Hadikduk HaPnimi”(イスラエル映
画)
2002年11月4日付紹介の『ブロークン・ウィング』という作
品で、東京国際映画祭グランプリに輝いたニル・ベルグマン
監督による同作以来となる長編第2作。本作でもすでにエル
サレム国際映画祭で最優秀長編作品賞を獲得している。
舞台は、1960年代初頭のイスラエル。若者の間にはホロコー
ストの記憶もなく、制服姿の青年団など好戦的な風潮も露に
なっている。そんな環境の中に暮らす少年の物語。少年は青
年団に入る年頃となり、その入会の試練を1回はパスするの
だが…
他にも、少年の家の前に生えていた巨木がある日突然切り倒
されてしまうなど、少年の周囲にはいろいろ理不尽な出来事
が起きる。そんな周囲の状況に嫌気が差したのか、少年は自
ら成長を止めてしまう。しかしやがてそれでは居られなくな
って…
映画は、1991年にデイヴィッド・グロスマンという作家によ
って発表された原作に基づくとのことで、監督は22歳の時に
その原作を読んで感銘を受けたのだそうだ。しかし僕にはそ
の意味がよく理解できなかった。
大体、少年が成長を止めてしまうという設定自体が、前後に
何かの説明がある訳でもなく唐突で、その辺にも戸惑いも感
じてしまったところだ。
ただ穿って観ると、主人公の少年、口煩い母親、好色で普段
は良いが時に暴力を振るう父親、優しい姉、途中で居なくな
る祖母、それに近所のスパイかも知れない金髪女性などの登
場人物は、少年をイスラエルとしてそれぞれ関係国を準えて
いるようで…
特に、金髪女性と少年の父親が住居の壁を壊し続けるという
設定には、その尋常でなさもあって気になったところだ。さ
らに少年が縄抜けに執着しているという展開にも、何となく

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10月24日(日)
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