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On the Production
by 井口健二
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■食べて祈って恋をして、三国志、遠距離恋愛、アブラクサスの祭、脇役物語+製作ニュース
映画化で、ミュージシャンのスネオヘアーが主演する音楽を
テーマにした作品。
主人公は、田舎町の田園に囲まれた寺で住職の手伝いをして
いる通いの僧侶。実直な性格でいろいろな悩みを抱えている
ようだが、その発露が思うように見出せない。そんな中で彼
は、以前にはCDを出したこともある音楽が自分の道である
ことに気付く。
その考えには住職やその妻も理解を示し、檀家の人の紹介で
Liveを開く会場も決まるのだが、その準備が進む内にも彼の
周囲の状況はいろいろ変化をし続ける。そして彼の悩みもよ
り深くなって行く。その一方で、彼の行動に反対する人たち
も現れ始め…
僧侶と音楽という組み合わせで、それに反対運動が起こると
いう展開では、これは在来りな懐かしバンドものかなと思い
きや、さすがに芥川賞受賞者の原作というのは、一味も二味
も違っていた。
それは普遍性のあるテーマかと言われると、ちょっと違うか
なと思う部分はあるけれど、主人公の抱える問題は解決方法
は違っても現代人の多くが抱えているものだろう。そしてそ
の解決方法は主人公のように自分自身で見付け出さなければ
いけないのだ。
そんな現代人の抱える問題に、ある種の解決の糸口を見付け
てくれるような、そんな感じもする作品だった。
共演はともさかりえ、小林薫、本上まなみ、ほっしゃん。、
それに『仮面ライダーディケイド』などの村井良太。
監督は、東京藝術大学大学院映像研究科の監督領域第一期生
という加藤直輝、脚本は2008年3月紹介『休暇』などの佐向
大。因に脚本家は、昨年12月紹介『ランニング・オン・エン
プティ』の監督でもあるが、どの作品も人間の悩みを的確に
描いている感じのものだ。
なお劇中には、スネオヘアーのかなりハードな演奏シーンな
どもあり、ファンにはそれもお楽しみと言う感じの作品だ。
それから題名の「アブラクサス」とは、善も悪も引っ括めた
神の名前だそうで、呪文の「アブラカダブラ」の語源とも言
われるものだそうだ。
『脇役物語』
元国連難民高等弁務官・緒方貞子女史の息子で、2006年の短
編『不老長寿』などで評価されている緒方篤が原案・脚本・
製作・監督を務めた長編デビュー作品。その『不老長寿』に
出演していたベテラン脇役・益岡徹を主演に据えて脇役俳優
の人生が描かれる。
主人公は、番宣広告に小さく写真が載るくらいには売れてい
る脇役専門の俳優。父親は高名な劇作家だが、彼はそんな父
を利用はせず自らの役者人生を歩んでいる。そんな彼には現
在、ウディ・アレン作品を日本でリメイクする計画での主演
の話があったが…
ある日、彼はふとした切っ掛けで女優の卵と付き合うように
なるが、ブロードウェイ留学を夢見る彼女は何事にも積極的
で、彼の父親にも気に入られてしまう。その一方で、彼は代
議士の妻の不倫相手に間違われ、代議士の差し金で主演の話
も消えそうになる。
このため彼は、代議士の妻との不倫疑惑を解かなければなら
なくなって…という、半分シリアス、半分ドタバタなドラマ
が、それなりのバランスを持って繰り広げられて行く。
共演は永作博美、津川雅彦、松坂慶子。この他、柄本明、前
田愛、佐藤蛾次郎、柄本佑、イーデス・ハンソン、角替和枝
らが脇を固めている。
試写の後で監督とのQ&Aがあって、そこでウディ・アレン
のリメイクには何を想定しているか訊いてみた。その答えは
「『タロットカード殺人事件』でスカーレット・ヨハンソン
が演じていた役」とのことだったが、そこに益岡徹の主演は
ちょっとおかしな感じだ。
僕は、もっと初期の『ボギー!俺も男だ』のような、アレン
自身が主演している作品の方が本作にはマッチしているよう
に思えたが、どうだろうか。少なくとも女性が主人公の作品
ではないと思うのだが。
まあそれは別として、物語の全体は悪くはないと思えるが、
途中の代議士宅を訪れる際に銃に模したものを構えるという
のは…? ドタバタの部分を強調したいのは理解するが、現
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08月22日(日)
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