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On the Production
by 井口健二
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■死刑台のエレベーター×2、ブロンド少女は過激に美しく、フローズン、みつばちハッチ、シャングリラ、インセプション+製作ニュース
因に、脚本・監督のアダム・グリーンは、ヒッチコックから
スピルバーグまで王道のハリウッド映画が好きだそうで、良
くも悪くもハリウッド的とは言えそうな作品。観客は苛々、
ハラハラしながらも安心して観ていられる映画だ。

『昆虫物語みつばちハッチ』
1970年4月から翌年12月まで放送され、その後に続編やリメ
イクもされたタツノコプロ製作によるアニメーションシリー
ズの劇場版。
2008年6月紹介の『おくりびと』で脚本を手掛けた小山薫堂
(テレビの『カノッサの屈辱』なども手掛けていた)が、共
同脚本と総合プロデュースも担当し、オリジナルとはちょっ
と違った展開の物語が描かれた。
主人公のハッチは1匹で旅をしているミツバチ。彼の幼いと
き、暮らしていた巣がスズメバチに襲われ、女王蜂を拉致さ
れてしまう。その襲撃から辛くも逃れたハッチは、以来放浪
の旅を続けながら、女王蜂が捕らえられたスズメバチの巣を
探していた。
そんなハッチが辿り着いたのは、人間の住む街も近いとある
草原。そこで横暴なカマキリからイモムシのカップルを救っ
たハッチは、聞こえて来た優しい音色に誘われ1人の少女と
出会う。それはやがて思いも寄らぬ冒険へと、少女とハッチ
を導いて行く。
オリジナルは、昆虫同士は会話もするし社会生活を営んでい
るが、人間の存在がほとんど関与しない(むしろ自然の驚異
の一部のように描かれている)昆虫だけの物語として特徴付
けられていたようだ。
その物語が今回は、ちょっとした細工でオリジナルとは異な
る展開になっている。その変更が、オリジナルのファンにど
のように受け取られるか判らないが、オリジナルを観る世代
ではなかった僕には、納得もできたし面白くも観られたもの
だ。
つまりその細工は、オリジナルとの齟齬が生じないように施
されているのだが、その辺をオリジナルのファンが理解して
受け入れてくれるかどうか。それが本作の評価の境目にもな
りそうだ。
声優は齋藤彩夏、アヤカ・ウィルソン、田中直樹、小森純、
坂東英二、柄本明、有村昆、中村育二、臼田あさみ、中村獅
童、安田成美。他には、ベテランの声優が脇を固めていたよ
うだ。
なお、タレント声優たちにはアニメーション経験者も多かっ
たようで、それぞれあまり聞き苦しい感じはしなかったが、
映画のコメンテーター氏は、自分の関わった作品をどのよう
にコメントするのかな、それは楽しみだ。

『シャングリラ』“這儿是香格里拉”
6月紹介『北京の自転車』と共に、東京は新宿K'sシネマで
今月末に開催される「中国映画の全貌2010」で特別上映され
る作品。
1970年代生まれで中国・台湾・香港出身の女性監督10人が、
中国雲南省を舞台に描いたシリーズ“雲南影響”の1篇で、
本作は台湾出身の女優で、舞台演出家でもあるティン・ナイ
チョンが監督デビュー作として制作した。
物語の発端は台湾。そこでセレブ夫人として優雅に暮らして
いた主人公は、一人息子を眼の前の事故で亡くし、悲嘆の淵
に落とされる。そんな中で彼女は、息子が生前彼女に渡した
宝捜しゲームのヒントのメモを見付けるが…
そのヒントを手に中国雲南省チベット族自治州に向かった主
人公は、彼女を尾行してきた青年と共に山麓を旅し、息子が
描いた霊峰・梅里雪山を見付け出す。それは彼女に、新たな
希望を生み出して行く。
雲南省チベット族自治州中旬県という地域が、2001年に香格
里拉(シャングリラ)県と改称したのだそうで、そのシャン
グリラ県で撮影された作品のようだ。そこは高山地ではある
ようだが、草原の広がっている風景などもあり、それなりに
桃源郷のようにも見えた。
そんな風景を背景に女性の癒しと再生が描かれる。そこには
宝捜しの他にも謎解きの部分があったりもして、興味を引か
れながら観ることができた。ただまあ、幼い息子の出したヒ
ントで中国に飛ぶかな…というところはあるが、それは野暮
というものだろう。
プレス資料に出演者などの情報はあまりなかったが、主人公

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07月11日(日)
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