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On the Production
by 井口健二
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■マエストロ6、北京の自転車、アウトレイジ、ちょんまげぷりん+製作ニュース+検索方法
それにしても悪そうな人相の顔触れだが、実際映画の中には
善人は1人も出てこないという究極のギャング映画で、その
コンセプトは面白いし、特に一般人が全く巻き込まれないと
言うのは、観ていてすっきりする作品にはなっていた。
ただし、あまりにすっきりした鑑賞後の感覚が、北野監督作
品にしてはちょっと物足りない感じもするところで、その辺
がカンヌでも評価を得られなかった原因とも感じられる。特
に予定調和のような結末が、もっと常識を覆してほしい感じ
はしたかも知れない。
それと、北野監督の演出は1発撮りが特徴だそうだが、登場
人物の襟のバッジが曲がっていたり、特に前後して立ち並ぶ
大勢の人物を舐めて撮るときにはパンフォーカスが当然と思
うが、カメラマンにそれを要求していないのは、納得できな
いところだ。
死体が息をしているのも論外だが、後半で1人の役者がしっ
かりと息を止めていたのにはかえってほっとしてしまった。
そんな些細なことと言うのだろうが、出来ることをしていな
いのは、やはり観客として納得ができないものだ。

『ちょんまげぷりん』
江戸時代の侍がタイムスリップで現代の東京巣鴨に現れて…
というファンタシー映画。新聞記者出身という作家荒木源が
2006年に発表した「ふしぎの国の安兵衛」の映画化で、原作
は映画に合わせて改題されたようだ。
シングルマザーのひろ子は、勤務先のソフトの開発会社では
クライアントとプログラマーの板挟みに遭い、それでも定時
には退社して保育園に預けた1人息子の友也を迎えに行く。
その生活は大変だが、友也の笑顔が彼女の心の安らぎだ。
そんなひろ子が、その日はちょっと寝坊して友也と慌ただし
く出かける途中、2人は近所のスーパー前で呆然と立ち尽く
す侍姿の男を目撃する。しかしその時は何かの撮影だろうぐ
らいに見過ごした2人だったが…
夕方になり友也を迎えての帰宅中、2人は再びその侍姿の男
に出会い、事情のありそうなその男を部屋に連れて戻ってし
まう。しかしその男の言うことは奇想天外、それを信じると
すれば、男は約180年前の江戸時代からタイムスリップして
きたようなのだ。
こうして何となく2人の部屋に居候することになった男は、
やがて部屋の掃除や洗濯、友也の送り迎えなども担当するよ
うになり、ひろ子は会社での作業も順調にはかどって勤務先
での評価も高まって行く。
ところが、男がとある才能を発揮し始めたことから、事態は
思わぬ方向に発展し…。設定は間違いなくSFだし、物語の
結末に向かってはプロローグにその示唆があることからその
纏め方にも興味が生じて、観客をぐいぐい引きつけて行く感
じの展開になる。
しかし物語の全体は、原作の題名にもあるように「ふしぎの
国」に紛れ込んだ江戸時代の侍を描いたものであって、その
カルチャーギャップなどに主眼がおかれている。従ってこの
作品は、あえてSFというジャンルには拘わらないものだ。
しかもこの作品では、SFとは全く異なる第2のテーマが与
えられていて、それがまた主人公たちの物語に上手くマッチ
ングされており、映像的なインパクトも含めて感心するほど
上手く描き込まれていた。
主演はジャニーズ事務所「関ジャニ∞」の錦戸亮。ともさか
りえと子役の鈴木福が現代の母子を演じ、さらに佐藤仁美、
今野浩喜、忽那汐里らが共演。また堀部圭亮、中村有志、井
上順らが脇を固めている。
異常なシチュエーションの物語だが、それを周囲の人たちが
しっかりと支えている雰囲気も良く、従前のSF映画ではな
かなか味わえない良さも感じられた。
脚本と監督は、2006年1月紹介『ルート225』などの中村
義洋。前作でもSFの設定で描かれた物語がSFとして評価
できるかどうかに疑問を持ったが、本作ではそれが良い意味
で裏切られている感じもする。現代を上手く反映させた部分
も含めて評価したい作品だ。
        *         *
 今回の製作ニュースは、かなり残念なこの話題から。

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06月06日(日)
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