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On the Production
by 井口健二
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■ブレイキング・バッド、チョルラの詩、ロストクライム、アイスバーグ/ルンバ、ラスト・ソング、ゾンビランド+製作ニュース
道化師(クラウン)の修業を積んだ2人が、もう1人の道化
師ブルーノ・ロミとチームを組んで作り上げた2作品。
それぞれ2005年と2008年に製作の独立した作品だが、日本で
は2本立てで公開されるとのことで、試写も同様の2本立て
で行われた。
2005年製作の『アイスバーグ』は、ファストフード店に務め
る主婦の女性が主人公。彼女は事故で冷凍庫に1晩閉じ込め
られるが、そこで2つのピークを持つ氷山の幻想を得る。そ
してその場所を求めて家族も捨てて北を目指し始める…とい
うもの。
その幻想を得るシーンなどは、僕らには『未知との遭遇』を
思い出させるものにもなっているが、さらに映画では、北に
向かうためには形振り構わぬ主婦の姿と、その主婦の後を追
う夫の姿がほとんど台詞なしの演技だけでユーモラスに描か
れている。
さらにこの映画の巻頭には、カナダ先住民イヌイットの女性
が、イヌクティトゥット語という民族の言語で物語の概要を
述べるシーンが設けられていて、その美しい響きも心地よく
聴ける作品になっていた。
一方、2008年製作の『ルンバ』は、同じ小学校に勤める女性
英語教師と男性体育教師の夫妻が主人公。彼らは地元のダン
ス大会で優勝するが、その帰路で事故に逢い、女性は身体障
害、男性は記憶障害になってしまう。そんな2人の葛藤が、
この作品もほとんど台詞なしの演技だけで描かれる。
またこの作品では、スクリーンプロセスなどかなりアナログ
な映像技術が随所に使われていて、それはサイレント映画を
髣髴とさせる物にもなっている。正しくチャップリンやキー
トン映画へのオマージュといった感じの作品だ。
両作共にアベルとゴードンが主演しており、さらに道化師の
フィリップ・マルツが両作で共演。また、共同監督のロミも
2作にちょい役で出ている他、撮影は共にベルギーの北部で
行われていて、エキストラにも共通の人々が多く出演してい
るようだ。
イギリスとも違うヨーロッパ大陸のコメディといった感じの
作品で、ハリウッド程には洗練されていないが、観ていて心
暖まるというか、そんな感じの作品だ。ただ、『ルンバ』の
方には最後にちょっと引っ掛かるところはあったが、最近の
観客は気にしない人も多いのだろう。

『ラスト・ソング』“The Last Song”
2004年11月紹介『きみに読む物語』などのニコラス・スパー
クスが、昨年12月紹介『ハンナ・モンタナ』などのマイリー
・サイラスのために書き下ろしたとされる作品。
ピアノの才能を持ちながら両親の離婚から荒れた生活になっ
ている少女が、夏休みを弟と共に父親の許で暮らすことにな
り、父親との葛藤や様々な出会いなどを通じて成長して行く
姿が描かれる。
『ハンナ…』では溌溂とした姿を見せるマイリーだが、今回
は多感な少女を演じるということで、それなりに一所懸命に
頑張っている感じはする。ただまあそれほどには演技力を要
求される役柄でもなく、その辺はそつ無くという感じだ。
ただし、テレビ出身で本作が長編映画デビューのジュリー・
アン・ロビンスン監督の演出があまり冴えていない感じで、
本来ならもっと感動的であるはずの物語が多少凡庸になって
しまっている。実際、マイリーにはもっと演技を要求しても
良かったとも思えた。
でもまあその辺がアイドル映画の限界と言うところではあり
そうで、ファンはこれで充分に満足してくれるのだろう。そ
れにマイリーは主題歌を2曲も歌っているのだから、これで
満足してもらわなければ困ると言うところだ。
なお脚本は原作者のスパークスと、彼に本作とは別のアイデ
アを送って気に入られたというジェフ・ヴァン・ウィ。本作
には原作者の要請で参加し、彼のアイデアによる作品の映画
化もすでに進められているそうだ。
共演は、父親役に2004年11月紹介『ふたりにクギづけ』など
のグレッグ・キニア、弟役に2005年9月紹介『理想の恋人.
com』に出演のボビー・コールマン、恋人役に『ノウイン
グ』などのリアム・ヘムズワース。この中ではコールマンの

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05月02日(日)
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