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On the Production
by 井口健二
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■獄に咲く花、RAILWAYS、ローラーガールズD、ドン・ジョヴァンニ、ウルフマン、クロッシング、ニンジャアサシン、Gフォース(追記)
の結婚」を完成させる。
そして大成功を納めたダ・ポンテとモーツアルトは、次の作
品として、舞台劇としては知られていた「ドン・ジョヴァン
ニ」のオペラ化に着手するが…。その頃からモーツアルトは
体調を崩し始め、一方、ダ・ポンテはその作品に自らの人生
を重ね合わせようとして行く。
映画の物語は、これにヴェネチアからウィーンを巡っての放
蕩の中でもダ・ポンテが心から愛し続けた女性アンネッタを
配するなど、虚実を織りまぜて展開されて行く。
監督は、ベルリン映画祭の金熊賞受賞や、1983年の『カルメ
ン』ではカンヌ映画祭の芸術貢献賞、アメリカアカデミー賞
外国語映画部門ノミネートなどにも輝くスペインのカルロス
・サウラ。
撮影監督には、1979年『地獄の黙示録』と1981年『レッズ』
でアカデミー賞撮影賞受賞のヴィットリオ・ストラート。深
い陰影の映像や、主人公の2人が制作を続ける部屋からその
まま野外の舞台に転換するなどの映像技術を駆使して物語を
描いている。
そしてそこには、モーツアルトの楽曲を始め、ヴェネチアの
大作曲家ヴィヴァルディや、モーツアルトが敬愛し息子とも
友人だったというバッハの楽曲も織り込んで、壮大な音楽劇
が繰り広げられる。
出演は、2007年3月紹介『ストーン・カウンシル』などのロ
ッレンツォ・バルドゥッチがダ・ポンテ役、新人のリノ・グ
ワンチャーレとエミリア・ヴェルジネッリがモーツアルトと
アンネッタ役に扮する他、配役にはオペラ歌手も多数起用さ
れて見事な舞台シーンが描かれている。
壮大なオペラが見事な映像演出で再構築された見応えのある
作品だった。

『ウルフマン』“The Wolfman”
1941年に全米公開されたユニヴァーサル・ホラー“The Wolf
Man”からのリメイク作品。
1941年作はSF作家でもあるカート・シオドマクが脚本を手
掛けたもので、狼男役にはロン・チャニーJr.が扮して、狼
に変身する定めとなってしまった男が、自らの抑制の利かな
い行動に苦悩しながらも、1人の女性との愛を貫こうとする
姿が描かれた。
本作はその作品を、2004年3月紹介『オーシャン・オブ・フ
ァイヤー』などの監督だが、元々はILMでVFXのアート
ディレクターとして『スター・ウォーズ』や『レイダース失
われた聖櫃』などを手掛けてきたジョー・ジョンストンの監
督でリメイクしたものだ。
因に、オリジナルの映像はすでにパブリック・ドメインにな
っており、インターネット上でも観られるものだが、狼男の
変身で手足や顔に獣毛が生えてくるシーンやそれが消滅する
シーンはストップモーションで描かれていた。
その作品が今回は最新のVFXで描かれ、そこでは骨格まで
変形して行く変身の様子が見事に表現されていたものだ。実
はオリジナルを観ていると、変身したチャニーJr.が爪先立
ちで歩く姿が多少滑稽だったりもするのだが、本作を観ると
その理由が理解できる。
つまり本作では、狼の脚の構造に沿った変身シーンが丁寧に
描かれ、爪先立ちの理由が改めて理解できるのだ。その変身
シーンを含む特殊メイクアップデザインは、1981年『狼男ア
メリカン』も手掛けたリック・ベイカーが担当している。
そして今回のリメイクでは、主演にベニチオ・デル・トロ、
その父親役にアンソニー・ホプキンス、さらに昨年10月紹介
『ヴィクトリア女王』のエミリー・ブラント、『LOTR』
のヒューゴ・ウィーヴィングらの共演で,オリジナルを大幅
に拡張した物語が描かれる。
その物語では、オリジナルでは最初に言葉が紹介されるだけ
のLycanthropyに関しても、物語の重要なキーワードとして
描かれているし、特にホプキンスが演じる父親の存在が、オ
リジナルとは違った意味での重要さを増しているものだ。
その脚本を手掛けたのは、1995年『セブン』などのアンドリ
ュー・ケヴィン・ウォーカーと、2000年『13デイズ』など
のディヴィッド・セルフ。2人がどういう関係で脚本を執筆
したか経緯は判らないが、オリジナルを深めた見事な人間関
係が描かれていた。


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02月21日(日)
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