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On the Production
by 井口健二
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■月と嘘と殺人、飛べペンギン、今このままがいい、オーケストラ、9+製作ニュース
団を率いてパリに乗り込むことを決意する。それに協力する
のは30年前に共に楽団を追われた不遇な楽団員たち、しかも
マネージャーを勤めるのは…
果たしてパリ公演は無事行われるのか。そしてそこにはアン
ドレイの特別な思いも隠されていた。
ブレジネフ政権末期のソ連では、ユダヤ人に対する迫害が顕
著化し、ボリショイ交響楽団からも多くのユダヤ人が追われ
たらしい。そんな30年前に政府の方針に楯突いたのが当時新
進気鋭の指揮者だったアンドレイ。以来彼とその中間達は不
遇の時を過ごしてきた。
そんな彼らが一念発起のパリ公演を目指す。しかも利用でき
るものはとことん利用して。
物語の前半はかなりの無理もあるどたばたコメディだが、後
半になるに随って政治的な背景や、それに翻弄された人々の
苦しみなどが浮き彫りにされてくる。その構成の巧みさに感
動した。
音楽映画で泣かせるのは、映像と音楽の相乗効果もあるから
比較的容易なのかも知れないが、この作品の巧みさにはさら
にしてやられた感じがした。本当に上手いと感じさせてくれ
る作品だった。
出演は、主演にポーランド出身のアレクセイ・グシュコヴを
配し、相手役には2005年7月紹介『真夜中のピアニスト』に
出演のメラニー・ロラン。『トランスポーター』シリーズの
フランソワ・ベルレアン。『恋愛睡眠のすすめ』などのミュ
ウ=ミュウ。
さらにロシア人の役には、実際にロシアの俳優たちが配され
て見事なアンサンブルが描き出されている。
なお映画の成立では、最初にシノプシスがあり、そのアイデ
アから監督でもあるデュ・ミヘイレアニュが自ら脚本を書き
上げたとある。そこでクレジットには、collaboration byと
して1987年『ニューヨーク東8番街の奇跡』などのマシュー
・ロビンスの名前があったが、彼が最初のシノプシスを書い
たのかな。そんな味わいも感じられた。

『9』“9”
2005年の学生アカデミー賞に応募されて金賞を受賞、そのま
まその年のアカデミー賞短編アニメーション部門の候補にも
挙げられたシェーン・アッカー監督による11分の同名作品の
長編版。
その経緯についてはサイトの2005年8月1日付第92回でも紹
介したが、長編化に当ってはティム・バートンが製作者とし
て参加し、『コープス・ブライド』などの脚本を手掛けたパ
メラ・ペトラーが協力して物語が完成されたとのことだ。
その物語は、未来かパラレルワールドかは不明だが、人類が
マシーンとの戦いに破れて絶滅した後の世界が舞台。その廃
虚の中の一室で、背中に「9」と書かれ麻袋を縫い合わせた
様な1体の人形が目を覚ます。
その人形は部屋を出て廃虚の町をさまようが、やがて良く似
た感じの「2」と書かれた別の人形に出会う。しかしその直
後にマシーンビーストに襲われ、「2」の人形は主人公を庇
ってビーストに連れ去られてしまう。
そしてさらに別の人形たちにも出会った主人公は、連れ去ら
れた人形を助けようと提案するが、「1」と書かれたリーダ
ー格の老人の人形に拒否されてしまう。ところが彼の意見に
賛同する人形も現れ、彼らは仲間の連れ去られた廃虚へと向
かって行くが…
こうして人形たちの冒険が繰り広げられるが、それは人類滅
亡の原因と、その滅亡後の世界で人形たちに託された使命を
解き明かす旅にもなって行く。
因に一見すると人形アニメーションのようなこの作品は、実
はCGIで作られているというのが第92回の当時の情報だっ
た。それは長編化に当っても変えられていないはずだが、そ
のアニメーションが見事な作品だ。
そして長編化に当っては短編では無言だった人形たちに新た
に台詞が与えられ、その声優をイライジャ・ウッド、ジェニ
ファー・コネリー、ジョン・C・ライリー、マーティン・ラ
ンドー、クリストファー・プラマーらが担当している。
物語的には、多少説明不足が否めない部分もあるが、何しろ
世界観と造形の素晴らしさが目を引く作品。若い監督には今
後の作品も期待したいものだ。

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02月14日(日)
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