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On the Production
by 井口健二
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■ウルトラ銀河伝説、ソフィーの復讐、霜花店、イェロー・キッド、脱獄王、アイーダ、台北に舞う雪(追記)、カールじいさん…(追記)+他
そして、その取材から得た新たな構想で10年前の作品の続編
を書き始めた漫画家は、やがてその物語と現実がシンクロし
ていることに気付いて行く。
この漫画というのが、約100年前にアメリカで実在した新聞
連載コミックスを基に、その続編を日本人漫画家が描いたと
いう設定なのだが、その内容はアメコミ・ヒーローもの。そ
んなコミックスの世界と現実が奇妙に符合して行くというお
話だ。
主演は、『クローズZERO』などに出演の遠藤要と、劇団
所属で映画出演は初めてという岩瀬亮。他に4月紹介『美代
子阿佐ヶ谷気分』などの町田マリー、さらに波岡一喜、でん
でんらが共演。学生映画とは思えない俳優陣がしっかりした
演技で支えている。
なお試写会では上映後にトークショウが行われ、そこで監督
は、「ボクサーと漫画家の主人公は後から考えた」と語って
いた。元々は、現実と非現実が混ざり合う物語が描きたかっ
たのだそうで、その意味では現実をボクサー、非現実を漫画
家が代表しているようだ。
ただし物語の展開ではそのような区別はなく、トークショウ
の相手をした黒沢清監督(藝大教授)も言っていたが、作品
自体は見事な現実感に溢れている。その現実感の中に非現実
が混ざり合うところがこの作品の面白さでもある。
そしてその展開は物語の結末に近づくにつれて加速していく
構成になっており、その加速の度合いも絶妙という感じの作
品だった。因に黒沢監督は、その結末の展開が判り難いとの
意見だったが、クレジット後の映像に関してはその前にその
ヒントがあったものだ。
いずれにしても、学生の作品とは思えない力量に溢れた作品
だった。

『板尾創路の脱獄王』
6月紹介『空気人形』にも出演していた俳優・板尾創路の企
画・脚本・監督・主演による作品。
板尾は吉本興行の所属で、本作はゴリの監督主演で7月に紹
介した『南の国のフリムン』などに続く吉本興行製作の映画
となっている。ただし本作は、お笑い芸人の作品とは思えな
いしっかりとした内容のもの。しかも板尾はお笑い芸人の分
もちゃんとわきまえていた。
物語の背景は、第2次大戦中の日本が国家体制も危うくなっ
ている時期のお話。板尾扮する男が刑務所に収監されるが、
いともた易く脱獄し、いとも簡単に再逮捕されてしまう。そ
して元の罪に逃亡罪を重ねた男はさらに重罪となって監獄に
戻ってくる。
しかし男は再び脱獄、そして再逮捕。その繰り返しに世間も
注目し始め、男は子供たちのヒーローにもなって行く。そん
な男の壮絶な生き様を、國村隼が扮する刑務官を語り部とし
て綴って行く。
男は何のために脱獄を繰り返すのか、その謎が本作の物語を
強引に引っ張って行く。それは正にそれだけの物語であり、
そこには奇想天外な脱獄の手法や、上手くアレンジされたア
クションも描かれるが、全体は見事な調和の中で無理のない
お話が進んで行く。
この無理(違和感)のない物語の展開には板尾の非凡さも感
じてしまう。お笑い芸人としてはホンコンと組んでいる板尾
は、シュールな笑いで人気があるそうだが、この作品は正に
板尾ワールドと呼べるもののようだ。しかも見事なオチまで
付いているのには…
脚本には、『魁!クロマティ高校』などの山口雄大監督が参
加、さらに吉本新喜劇を手掛ける俳優の増本庄一郎と共に綿
密なプロットが作られたとのことだ。
上記以外の出演者では、ぼんちおさむ、オール巨人、宮迫博
之、千原せいじ。テレビで見慣れたお笑い芸人がそれぞれ別
の顔を見せてくれるのも見事だ。他に木村裕一、阿藤快、津
田寛治、石坂浩二、笑福亭松之助らが共演。
吉本興行と角川映画が組むのは3作目だと思うが、その1作
目は人気スターの共演で話題にはなったが、吉本らしさが感
じられず誰でも作れる凡庸としか言えない作品だった。それ
に比べると上記のゴリ監督作品は、正に吉本映画という感じ
で好ましかった。
それに続く本作は、吉本の枠を見据えながらさらに日本映画
に新風を吹き込む作品とも言えそうだ。板尾ワールド恐るべ

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11月22日(日)
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