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On the Production
by 井口健二
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■かいじゅうたちのいるところ、誰がため、ウディ・アレンの夢と犯罪、泣きながら生きて+製作ニュース
接する権利関係のクリアなどがかなり困難なようだ。本作の
状況がどんなものだったかは知らないが、それを1人の大学
生の熱意で実現に漕ぎ着けたとのことで、試写会ではその挨
拶から行われた。
作品の内容は、1人の中国人男性の15年に亘る日本での生活
を追ったもの。しかも取材はその来日7年目から最後まで、
ほぼ10年間の記録が500時間以上のテープに納められ、そこ
から約1時間50分に纏められているものだ。
その男性は1950年頃の生まれのようだ。上海に出身だが両親
には学歴がなく、本人は大学進学を目指したが、折りからの
文化大革命の下放政策で中国の農村でも最も貧しい地域に送
られる。しかしそこで同じ上海出身の女性と巡り合い結婚。
やがて文化大革命が終って上海に戻るが、勉強したい時期に
学業をすることの出来なかった男性は、学歴もなく技術も知
識もないままでは将来もおぼつかないことになる。そこで彼
が目にしたのが日本にある中国人向けの日本語学校のパンフ
レットだった。
そこで彼は、中国では夫婦が15年掛けて稼ぐ金額と言われる
42万円の渡航費用を親戚に頼み歩いた借金で工面し、日本で
学業をしながら働いて借金を返し、行く行くは日本の大学に
進学したいと夢見て上海空港を旅立つのだが…
着いたところは北海道阿寒町の番外地。雄別炭坑の閉山で過
疎の悩む町が1000万円の町予算も注ぎ込み国の認可も受けて
誘致した学校は、近くに働く場所もない山奥に建っていた。
そしてこのままでは埒が開かないと判断した男性は、密かに
脱出して不法滞在者となって行く。
それから15年に亘る彼の苦難の人生が描かれるが、その間の
唯一の支えとなるのは、上海に残してきた1人娘を海外の著
名大学に留学させること。そのため彼は風呂もない木造アパ
ートに暮らしながら稼いだ金のほとんどを上海に送金する。
一方、上海にいる妻は、自らも縫製工場で働き、夫からの送
金には手を着けていない。そして来日から7年、手紙のやり
とりはあるが顔も見ることもできなかった母子の許へ、取材
陣が東京で撮影されたヴィデオを持参する。
不法滞在者だから、何があっても目的を達するまでは日本を
出ることが出来ない。それは、家族が訪ねてきたときにも、
身分証明を求められる成田空港への出迎え見送りもできない
厳しさだ。
もちろんこの物語の背景には、文化大革命という特殊な状況
がある。だから僕らの世代ではまずその点に頭が行ってしま
う。しかし、今回上映を企画した大学生は、もっと純粋に父
親が娘に掛ける思いを感じ取ったようだ。
それはそれで素晴らしいことだし、今の時代にはそんな感じ
でこそ観てもらいたい作品とも言えるものだ。
        *         *
 久しぶりの製作ニュースは、シリーズの話題を4つほど。
 まずは、1979年に第1作、その後1981年、85年と製作され
た終末世界を舞台にしたアクションシリーズ“Mad Max”の
第4作が本格的に動き出している。
 この計画については、2007年11月1日付第146回でも報告
したが、元々は2003年頃から計画(2003年1月1日付第30回
参照)されていたものだった。しかしこの時には、撮影地に
予定されていた南部アフリカのナミビアが中東紛争の激化な
どの煽りを受けて保安上危険と判断され、撮影準備に着手さ
れながら断念という結果になっていた。
 その計画が復活してきたものだが、今回は主演に『ブラッ
クホーク・ダウン』などのイギリス人俳優トム・ハーディ、
そしてヒロイン役にシャーリズ・セロンが契約されて、来年
8月にオーストラリアはニュー・サウスウェールズでの撮影
が予定されている。
 因に、主演のハーディは、2002年の『スター・トレック/
ネメシス』で敵役などを演じた俳優だが、1977年生まれです
でに32歳。前の主演のメル・ギブスンが21歳で第1作に登場
し、第3作に27歳で出演した頃よりさらに年長な訳で、彼が
マックスを演じるのであれば、前作より後の時代の物語が作
られることになりそうだ。ただし、本作の脚本も執筆してい

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11月08日(日)
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