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On the Production
by 井口健二
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■第22回東京国際映画祭・コンペティション以外(3)+まとめ
まあ宗教の問題などは日本人には中々判り難いものではある
が、『種の起源』はそれなりに知られたものでもあるし、一
方、映画監督は日本でも実績がある人、さらに主演の2人も
日本のファンはいると思われるところで、何とか本作の一般
公開も実現して欲しいところだが。
『台北24時』(アジアの風部門)
2006年12月に紹介した『パリ、ジュテーム』など、最近流行
りのようにもなっている1つの都市に纏わる短編集。さらに
本作では、1日24時間のそれぞれの時刻を順番に描くという
仕掛けにもなっている。
物語は、それぞれが6時、9時、12時、15時、18時、20時、
0時、4時を中心に描かれたもので、そこでは木に登った猫
の騒動や、幼い2人の男女の物語、ビジネスマンの不倫や、
ボスの女を監視する話、問題のある少女とその父親の物語、
帰宅途中の出来事、家出少女の帰宅、天安門事件に絡む女性
バレリーナの話などの物語が語られる。
その作品は、全体的にはコミカルなものも多かったが、夜間
が背景の作品では多少重いものもあって、特に締め括りはか
なり重厚な感じにもなっていた。この作品が最後というのは
何かの意図があるのだろうか。
全体で94分の作品で、それぞれの作品は平均で10分強、従っ
てそれほど深い話にはなっていないが、人生のいろいろな局
面みたいなものも描かれていて、それなりに面白い作品も含
まれていた。
さらに、一部分にアニメーションが使われたり、モノクロの
記録映像が出てきたり、展開上ではちょっとファンタスティ
ックな描写があったりもして、内容的にはヴァラエティにも
富んだものになっていた。
なおそれぞれの作品は、監督も製作プロダクションも全て独
立に作られているもので、監督には本業の人だけでなく、本
来は俳優の人なども含まれているようだ。また本来は監督の
人が出演している作品もあったようだ。
また作品は全てHDカムで撮影されたもので、今回は上映も
ディジタルで行われたものだが、映像のクリアさなどはフィ
ルムとは全く違う感覚になっていた。ただしそれが旧来の映
画ファンに受け入れられるかどうかは判らないが…
* *
ということでコンペティション以外の作品は25本。コンペ
ティションと合せると40本を紹介した。本当はもう数本観て
いるのだが、いろいろな事情で割愛しているものもある。
そして映画祭では各賞の受賞作も発表されているが、今年
も1週間前に書いた予想は余り当らなかったようだ。因に、
グランプリは『イースタン・プレイ』、監督賞と男優賞も同
作からカメン・カレフとフリスト・フリストフが選ばれてい
るが、男優賞は映画の原案も提供し、さらに撮影中に亡くな
ったと言うのは、同情を買いやすい条件であったとは言える
だろう。監督もその親友であるという点では同様だ。
作品自体は、10月18日付でも評価したように悪い作品では
ないが、多少そんなこともあったかなとは思ってしまう。
それに対して女優賞は、『エイト・タイムズ・アップ』の
ジュリー・ガイエで、これは見事に当ててしまった。ただし
こちらも、女優が製作と共同脚本にも携わっているもので、
結局こういうことが評価に影響していることは否めない。そ
れはまあ、映画を作ることに尽力しているのだから、悪いこ
とではないが、そうしなければならないとなると、またいろ
いろ難しくなってしまうものだ。
なお『激情』は審査員特別賞というものを受賞した。まあ
付帯の状況が無ければこれが一番だったということかも知れ
ない。また観客賞は『少年トロツキー』、一番判り易くて面
白かったのは確かな作品だ。さらにアジア映画賞が『旅人』
に贈られたが、これも映画人には評価しやすい作品だったと
言えそうだ。それから特別功労賞が、『タレンタイム』のヤ
スミン・アフマドに贈られた。これも受賞の理由は10月23日
付で書いた通りだ。
他に3作品ほどが受賞を果たしているが、いずれも僕は見
逃した作品なので紹介は割愛する。
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10月26日(月)
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