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On the Production
by 井口健二
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■第22回東京国際映画祭・コンペティション以外(2)
とは機密条項とされ、その事実を知るのは彼だけだった。
そんなロボット警官は途轍もない能力を発揮して任務を遂行
して行くのだが、一方、占い師にデザインさせたというルッ
クスでは婦人警官たちの人気の的にもなって行く。
そんなロボット警官がうらやましくもある主人公だったが、
そこに同じく開発されたばかりのロボットが逃亡したとの連
絡が入る。その逃亡ロボットは、「人間がその造り主の神を
疑うのなら、ロボットも人間を疑う」と言い放ち人間に闘い
を挑んでくる。
基本的にはロボット3原則に縛られているようではあるが、
そこに神との問題を絡めてきた辺りは中々なものだ。ただそ
のお話は別としてVFXでは、ロボットから乗物に変身する
などの展開は如何にも香港映画という感じで、ニヤニヤしな
がら観てしまった。
ただ、完全なハッピーエンドにしないのは最近のオタク文化
の悪影響も感じるところで、そんなウジウジした話は日本ア
ニメだけで沢山だという気分にもなる。娯楽映画は普通にハ
ッピーエンドで良いと思うのだが…
主演は、『レッドクリフ』にも出ていたフー・ジュンと、人
気歌手でもあるアレックス・フォン。監督は、『カンフー・
ハッスル』のプロデューサーで、チャウ・シンチーの盟友で
もあるジェフ・ラウが担当している。
なお、映画の中はロボットという言葉が主に使われていて、
邦題の『サイボーグ』には多少引っ掛かるところだが、もし
かすると…というところはあったようだ。

『青い館』(アジアの風部門)
『ゴースト』や『シックス・センス』に代表される現世で彷
徨う霊魂を描いた作品。
主人公はパイナップル王とも呼ばれた大物実業家。大掛かり
な企業合併も目論見、働き盛りだったその男が急死する。し
かも彼は、その直前に自分の家督をそれまでビジネスには余
り関ってこなかった長男に継がせると決めていた。その決定
が波紋を広げて行く。
そんな中での葬儀が開始されるが…本作の舞台はシンガポー
ル。そこで葬儀自体もキリスト教や道教などいろいろな宗教
が絡んだ支離滅裂なものになって行く。その一方で、警察が
死因に疑問があるとして乗り込んでも来る…
その警察の捜査を主人公が見守るという展開で物語が進んで
行く。そして生きている人間には見えない主人公は、いろい
ろな家族の秘密を知って行くことになる。それは最初こそ主
人公の思惑通りだったが、やがて事態は思いも拠らない方向
に向かって行く。
映画全体はコメディだが、何せテーマが葬儀だからかなりブ
ラックな感じの笑いが提供される。特に宗教に絡む辺りは、
宗教に思い入れの無い僕には秀逸にも感じられた。もっとも
宗教を知っていると、当り前に笑えるのかも知れないが。
それと、脚本では生きた人間には見えないはずの主人公と周
囲の人々との応対が巧みに取られていて、あたかも対話をし
ているように情報が伝えられるが、それでいながら会話は成
立していないというのも見事な構成だった。
監督は、1999年サンダンス映画祭への出品作でシンガポール
映画を世界に出したと言われるグレン・ゴーイ。長編作品は
それ以来の第2作だそうだ。
もしかすると霊魂が見えているかも知れない人物がいたり、
後半にはかなり怪奇なシーンもあったりと、展開もヴァラエ
ティに富んでいて純粋に楽しめた。

『法の書』(アジアの風部門)
イスラムと西欧との異文化交流を、ほろ苦いタッチで描いた
作品。
主人公はイラン人で外交交渉などにも当っている中年男性。
ある日ベイルートで開かれる会議に代表団の一員として出席
した主人公は、菜食主義に固執する団長の行動に辟易して夜
の街に外出し、そこでフランス料理店を営む女性と出会う。
その後、彼女が通訳として会議の席に現れたことから、主人
公には彼女が忘れられなくなり、付き合いを深めて求婚。彼
女はそれまでキリスト教だった宗教を改宗し、主人公が女系
家族と一緒に住むテヘランの家に嫁いで来る。
ところが白人の彼女がコーランの教えに固執しすぎたことか

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10月23日(金)
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