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On the Production
by 井口健二
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■●REC2、アフロサムライ、ジェイン・オースティン、ロフト、ヴィクトリア女王、よなよなペンギン、ジャック・メスリーヌ+他
家が自分の建てたビルの屋上にロフトを設け、それを家族に
も秘密の自由に使える空間として5人で共有しようと提案す
る。その提案にそれぞれ家族のいる男たちは、一部は渋々従
うのだったが…
死体があっても家族に秘密の場所では警察に届けることも儘
ならない。しかも密室の鍵は5人しか持っておらず、殺人犯
は5人の中にいるはずなのだ。映画の冒頭には別の事件も描
かれていて、二転三転の物語が展開されて行く。
脚本家はテレビ出身のようだが、確かにサービス精神満点の
物語が展開されて行く。ただまあ、いろいろなものを盛り込
み過ぎてそれぞれに深みがないのもテレビ出身者の弱点では
あるもので、本作でも登場人物の葛藤などはほとんど描かれ
ない。
しかしまあそんなものはウザイだけという最近の若者の風潮
には合っているのかな。おそらくそういう若者にはロフトは
憧れの的なのだろうし、そんなところも計算されて作られた
作品なのだろう。
とは言うものの、いくら専門外とは言え、医師と名の付く人
がいてこの後半の展開はないだろうと思うし、実はそこに真
相が隠されているのだとしたら、この映画の作者たちは最後
まで観客を欺き通したことになって、それもまた悩んでしま
うところだ。
でもまあそこまで考えてみると、この「真犯人」には全てが
都合よく終っているようで、結局僕も騙されていたことにな
るのかな。実はこの文章はサイトには載せないつもりだった
が、ここまで書いてようやく載せる理由ができたようだ。
監督は、2003年『ザ・ヒットマン』という作品が日本にも紹
介されているエリック・ヴァン・ローイ。出演は、同作にも
出演のケーン・デ・ボーウの他、いずれもベルギーで実力の
ある俳優たちが揃っている。
それにしてもこの捻りは見事な作品だ。
『ヴィクトリア女王』‘The Young Victoria”
1837年に18歳でイギリス王位を継承、「君臨すれども統治せ
ず」の言葉で議会制民主主義を貫き、その治世をヴィクトリ
ア朝としてイギリスを最も輝かしい時代に築き上げたとされ
る女王の若き日を描いた歴史ドラマ。
先々代の国王ジョージ4世に直系の王位継承者がいなかった
ことから、急遽その弟たちが子作りを始め、ヴィクトリアは
その1番手として誕生する。しかし、彼女の父親は彼女が生
後8カ月の時に他界。
さらに王位は伯父のウィリアム4世が継ぐものの彼にも子供
はなく、彼女は10歳で推定王位継承者となる。このためヴィ
クトリアの周囲には暗殺計画の噂も出て、階段の昇り降りも
侍女が手を引くなど厳重なボディガードの許で育てられた。
そしてウィリアム4世の死後、18歳でイギリス女王に即位。
議会の首相メルバーン子爵の助言を得て政治を行う。さらに
1840年に母方の従兄弟でもあるアルバートと結婚、当初は軋
轢もあったがほどなく妥協が成立し、以後は二人三脚でイギ
リスを繁栄に導いた。
因に、1861年にアルバートが死去してからは、常に喪服を着
用したために喪服の女王とも呼ばれていろいろあったようだ
が、それは1997年に公開された映画『至上の恋』の題材とさ
れたもの。本作ではそこに至る以前の彼女の華やかな姿が描
かれている。
本作の企画は、イギリス王家アンドリュー王子の前の妻であ
るセーラ・ファーガスンが、『ディパーテッド』などの製作
者グレアム・キングに話したことから始まったようだ。そし
てキングがマーティン・スコセッシに企画を提案し、映画化
はスコセッシとファーガスンの共同製作で実現させている。
つまりまあ、イギリス王室関係者の意向で作られた作品とい
うことにはなるが、ことさらヴィクトリア女王を偉大な人物
に描こうとしているものでもなく、『至上の恋』で描かれた
女王の姿を少し修正したかったという感じのものだ。
それに、ヴィクトリア朝が1851年ロンドンで世界最初の万国
博覧会を開くなど、イギリスの最も華やかなときであったこ
とは事実であるし、それを再確認するという意味では何ら問
題のない作品だ。
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10月04日(日)
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