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On the Production
by 井口健二
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■エスター、イートリップ、黄金花、眠狂四郎・勝負、パブリック・エネミーズ+他
性が定まったとされている。
また、柴田錬三郎原作の映画化は先に鶴田浩二主演のものも
あるようだが、同じ原作から本作では、前々回紹介した『大
菩薩峠』の机龍之介にも通じるニヒルな剣士を、雷蔵=三隅
のコンビが見事に描き出した。
物語は、硬直した江戸幕府の悪政で民衆が苦しめられている
時代。勘定奉行は老中と共に改革を試みているが反対勢力の
抵抗は根強い。そしてその勘定奉行に向けて放たれた刺客を
狂四郎が防いだことから、狂四郎は幕府の権力争いに巻き込
まれて行く。
そこには、久保菜穂子演じる傲慢な将軍の娘や、藤村志保演
じるキリシタンの異人の夫を救おうとする女性、さらに高田
美和演じる狂四郎を慕う町娘などが彩りを添える。また勘定
奉行には加藤嘉が扮している。
円月殺法にストロボ効果が付くのは第4作からだそうで、本
作はまだ刀を回すだけだが、机龍之介とは一味違った人情味
もある狂四郎を雷蔵が楽しげに演じている。また当時25歳の
藤村の美しさや、32歳の久保の妖艶さ、17歳の高田の可憐さ
なども楽しめる。なお当時50歳の加藤はすでに老人の風情だ
った。
因に、藤村と久保は第4作の『女妖剣』と第12作の『悪女狩
り』でも共演。さらに藤村は第8作の『無頼剣』、久保は第
9作の『無頼控』、高田は第10作の『女地獄』にも出演して
いる。正にシリーズの基礎と言える作品だ。
社会情勢などには現代の日本に通じているところもあるが、
これは映画製作当時の状況も反映しているはずのもので、つ
まり政治というものはいつの時代も変わらないということも
考えさせられた。
なお「大雷蔵祭」は、12月12日から東京は角川シネマ新宿で
の開催が決定したようだ。関西は大阪の梅田ガーデンシネマ
で開催される。また、単独俳優による100作品の映画祭は史
上初だろうとのことでギネスに申請もしているそうだ。
作品数だけならクリストファー・リーが映画だけで200本に
近づいていると思うが、87歳で現役(2010年には“Alice in
Wonderland”など3作品が公開予定)のリーに対して、15年
間で159本をやり遂げているという雷蔵の偉大さは別格だろ
う。
でもギネスに載ったら、誰かがリーの200本映画祭を企画す
るかもしれないな。
『パブリック・エネミーズ』“Public Enemies”
『ALI アリ』などのマイクル・マン監督が、ジョニー・デッ
プを主演に迎えて1930年代の伝説の銀行強盗ジョン・デリン
ジャーを描いた実話に基づくドラマ。
大恐慌時代。資金の枯渇に喘ぐ民衆に対して、銀行には汚い
金が溢れていた。そんな銀行を襲って大金を奪って行くジョ
ン・デリンジャー率いる強盗団。そんなデリンジャーがある
日、1人の女性に目を留める。それは激しくも切ない恋の旅
路の始まりだった。
デリンジャーには一部に義賊説もあるとのことで、映画の中
でも、強盗中にカウンターに置かれた個人の現金を見て「盗
るのは銀行の金だけだ」と言うシーンが描かれるなど、さす
がにデップが演じるヒーローという感じになっている。
一方、そのデリンジャーを「公共の敵No.1」と呼んでアンチ
ヒーローに祭り上げ、州境を跨ぐ警察組織FBIの創設に尽
力したエドガー・フーヴァーに対しては、冒頭の公聴会のシ
ーンで議長に「PR上手」と言わせるなど、最終的に組織を
私物化して行くこちらこそアンチヒーローの感じに描いてい
る。
とは言うもののFBIを一方的に悪人にはしたくない配慮な
のか、実際のキャラクターはクリスチャン・ベールが演じる
捜査官パーヴィスを前に立てて、フーヴァーの横暴にもめげ
ずにデリンジャー捜査を続ける、こちらはヒーローに描いて
いる。
そして本作のヒロインは、オスカー女優マリオン・コティア
ールが演じるデリンジャーの愛人ビリー・フレシェット。犯
罪者に一目惚れされたために運命に翻弄される薄幸の女性が
丁寧に描かれている。
なお、フーヴァー役は『あの頃ペニー・レインと』などのビ
リー・クラダップが演じ、他に『ブレイド』などのスティー
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09月13日(日)
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