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On the Production
by 井口健二
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■白夜、ファイナル・デッドサーキット、カールじいさんの空飛ぶ家、戦慄迷宮、アンヴィル、陸軍中野学校、スワップ・スワップ+他
遺体は3つ、そしてそのそばで「中にもう1人いる」と叫ん
でいた青年が容疑者として拘束され、取り調べを受けること
になる。その取調室で青年は10年前に起きた忌まわしい事件
を語り出す。
それは、閉門間際の遊園地で営業を終えたアトラクションに
5人の子供たちが忍び込み、その内の1人が行方不明になっ
た…というもの。しかもその行方不明になった人物が10年後
に突然姿を現し、その姿を追って行く内にその場所に迷い込
んだというのだが…
こうして10年前の行方不明事件と、現在の殺人事件の交錯す
る物語が展開される。この過去と現在の事件が交錯するとい
う構成は、『呪怨』でも使われた清水監督お得意の手法で、
それが今回も楽しめるものだ。
というところで、実は今回の試写会は内覧とのことで、上映
後に歓談の席が設けられて、そこで監督や製作者の話を聞く
ことが出来た。それによると本作のコンセプトは、3Dを奥
行きで見せるということにあったようだ。
これは僕自身も上映中にも感じていたことだが、今回2本目
に紹介している『デッドサーキット』が飛び出しを強調し、
前回紹介した『クリスマス・キャロル』が観客の周囲を取り
囲む雰囲気を描いたのに対して、本作では確かに奥に向かっ
ての立体感が見事だった。
それは例えば富士の樹海で撮影されたシーンであったり、ま
た取調室のシーンでは2人の出演者が向かい合う間の空間が
背景の窓の外まで深く描かれていた。そしてそれは当然、お
化け屋敷の中のシーンも見事に描き出しているものだ。
つまりそれは、上記の2作品とは異なる3D映像へのアプロ
ーチである訳で、そのような新たな試みをしてくれたことに
は満足もした。またそれには、スクリーンの枠が観えていて
も意外と気にならないなどの利点もあったようだ。
ただし、作品としてそれが描き切れたかというと多少不満も
残ったところで、例えば最後の螺旋階段のシーンにはもっと
奥行き感が強調されていて欲しかった。それは例えば一緒に
物がばらばらと落ちて行くとか、敢えて光の筋を走らせると
か…
実は先週別の試写会の前に某氏と雑談をしていて、『2001年
宇宙の旅』では命綱を切られたプール博士が宇宙の奥へ飛ん
で行くシーンが素晴らしいという話になった。そのシーンは
2Dであったにも関わらず宇宙の奈落に落ちて行く感覚が味
わえた。
そんな感覚が、正にこの映画には期待されるように思えた。
製作者からは続編の情報も漏らされたし、その続編には更な
る進化を期待したいものだ。
なお本作の3D撮影には、実在のお化け屋敷の中での撮影が
要求されたために、手持ちの出来る超小型の3Dカメラが新
開発(手作り)されたようだ。その辺の情報は詳細には説明
されなかったが、いろいろアイデアも詰め込まれたようで、
こちらの開発にも期待したい。

『アンヴィル!』“Anvil! The Story of Anvil”
2008年1月のサンダンス映画祭で絶賛され、その後の各地の
映画祭で数々の受賞にも輝いているカナダの売れないヘヴィ
メタ・バンドを写したドキュメンタリー。
そのバンドは全く売れなかった訳ではなくて、80年代にはボ
ン・ジョヴィのツアーに参加したり、日本で開催されたロッ
ク・フェスティバルにも招待されている。そして、いくつも
の人気ヘヴィメタ・バンドから自分たちのルーツだと言われ
たりもしている。
しかし現在の彼らの生活は、給食センターでの配送係として
生活費を稼ぎながら、それでも何時かはまた脚光を浴びたい
と夢見てバンド活動を続けている。そんな彼らのメムバーの
1人が50歳の誕生日を迎える辺りから作品はスタートする。
このドキュメンタリーを監督したのは、2004年スピルバーグ
監督『ターミナル』の脚本を手掛けたサーシャ・ガヴァシ。
実は、彼は20年以上も前の10代半ばの頃に彼らの演奏に心酔
し、ツアーの裏方も務めたという経歴があったのだ。
そんな脚本家が、ハリウッドでの実績も積んだときにふと彼
らのことを思い出し、彼らに連絡を取って撮影を開始する。

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09月06日(日)
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