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On the Production
by 井口健二
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■ドリーム・オブ・ライフ、フラミンゴ/地球の秘密、宇宙へ、吸血少女対少女フランケン、空気人形、バーダー・マインホフ+製作ニュース
お話はとある高校が舞台。そこには現代の高校らしく(?)
ゴスロリやガングロ、リストカッターらが集っている。そん
な中にその少女はいた。彼女は最近の転校生だったが余り目
立つこともなく、普段は居るのか居ないのかも判らないよう
な存在だった。
そして主人公は、その転校生の編入してきたクラスの男子生
徒だったが、2月14日に彼女から小さく包まれた1個のチョ
コレートを手渡される。それはクリームの入ったトリュフの
ようなものだったが、そのクリームにはちょっと不思議な味
がした。
一方、ゴスロリグループのリーダーは教頭の娘でもあったの
だが、理科教師の教頭は文系の教師に頭が上がらない。しか
しその教頭は密かに重大な研究を続けていた。そして転校生
の少女と教頭の娘との間で、主人公を巡る抗争が始まるが…
この転校生をヤンジャン・制コレの出身者で舞台女優として
も活躍している川村ゆきえが演じ、男子生徒を『クジラ』に
も出ていた斎藤工が演じる。一方、教頭の娘役はテレビの特
撮ドラマなどにも出演している乙黒えり、そして教頭役には
津田寛治が扮している。
まあこの顔ぶれだと、斎藤も津田も演技には実績があるし、
また本作では、川村は自らがホラーファン、乙黒はデビュー
が香港映画でカンフーもできるとのこと。それぞれが楽しん
でいる風なのも観ていて気持ちが良かった。
観るまでは多少の不安もあったが、観てからは大満足。西村
監督の名前はこれからも記憶して置いた方が良さそうだ。

『空気人形』
『誰も知らない』などの是枝裕和監督の最新作。本作は今年
度カンヌ映画祭の「ある視点部門」に“Air Doll”の題名で
公式上映された。
題名は、成人の男性なら多分一度は耳にしたことがあるであ
ろうあの人形のことだ。本来の英語では、blow up dollとい
う方が一般的なようだが、孤独な男性の性処理のために作ら
れた人形。その人形に心が宿ったことから始まるファンタス
ティックな物語が展開される。
初めその心は赤ん坊のように無垢で、男を愛することしかで
きないのだが、やがてレンタルヴィデオ店の店員に恋をし、
一緒にアルバイトをしながら少しずつ世間を知って行くよう
になる。そして空気しか入っていない空っぽの心を満たそう
ともがき続ける。
さらに彼女の周囲には、いろいろな意味で心の空っぽな人々
がいて、その人々も心を満たそうともがいている。それは、
現代に生きる人なら誰もが共感できるような切ない物語の集
合体だ。
完成披露試写会の舞台挨拶で監督は、「特にメッセージはな
い」と繰り返していたが、観ていればいろいろな思いが伝わ
ってくる。それは特にメッセージと言うほどのものではない
かも知れないが、現代人の心には沁みるものだ。
人形が空ビンを愛し、特に中にビー玉の入ったラムネのビン
を大事にしているなど、端々に描かれるエピソードが観客の
心にさまざまな思いを形成する。そんな、気が付いたら忘れ
られなくなるようなシーンがいっぱい描かれた作品だ。
原作は、『自虐の詩』などの業田良家による漫画短編集の表
題作。是枝監督はデビュー作を除いては自らの原作によるオ
リジナル作品だけを手掛けてきたが、本原作とは9年前に出
会い、以来映画化を準備してきたのだそうだ。そんな長年の
思いが籠もった作品でもある。
恐らく2度、3度と繰り返し観て行けば、さらにいろいろな
ことに気付くことになるのだろう。そんなことも考えてしま
う奥深い作品のようにも思える。
主演は、韓国女優のペ・ドゥナ。2005年『リンダ・リンダ・
リンダ』以来2度目の日本映画出演作だが、2006年の『グエ
ムル』をちょっと期待外れに感じた僕としては、久しぶりの
彼女の愛らしい姿に感激した。
共演は、是枝作品3度目のARATAと、『ニセ札』などの
板尾創路。他に、富司純子、高橋昌也、オダギリ・ジョーな
どが出演している。

『バーダー・マインホフ/理想の果てに』
            “Der Baader Meinhof Komplex”

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06月21日(日)
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