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On the Production
by 井口健二
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■屋根裏のポムネンカ、山形スクリーム、妻の貌、クヌート、3時10分、決断のとき+製作ニュース
世界中がクヌートに注目したことは、ナレーションで触れる
程度には事実だ。
そして映画では、そんなクヌートの人工飼育の様子から、単
独で飼育されるようになるまでのいろいろな出来事が、北極
で生きる母グマと3匹の仔グマの様子、ベラルーシで母グマ
を失った幼いヒグマの兄弟の姿と並行して描かれて行く。
それは、北極の物語では現実の仔グマの成長とクヌートとの
違いを観せ、ベラルーシの物語では母親を失っても仔グマは
生きられることの証を観せている。それはまた、安楽死を主
張した輩への回答でもあるようだ。
こうして映画では、3つの異なる舞台、状況での仔グマの愛
らしい姿が描かれ、それはそれを観るだけで充分な作品にな
っている。
ただし、映画の中で充分に餌のあるクヌートが魚を食い散ら
かしている様子や、籠の中からクロワッサンを見つけ出して
食べている姿などには、人工飼育の問題点と飽食の時代に生
きる我々へのアンチテーゼのようなものも垣間見られた感じ
はした。
なお日本版のナレーションは藤井フミヤが担当しているが、
特別に特徴のある喋り方でもないので可もなし不可もなしと
いう程度だろう。ただし最後に何かドイツ語のテロップの出
ていたのが気になったもので、これには日本語字幕を付けて
欲しかった。
地球温暖化に絡んで、ホッキョクグマの生態を描いたドキュ
メンタリーが何本か公開されているが、その中では判り易く
作られているしクヌートの話題性もある。夏休みに子供と観
て何かを考えるには良い作品と言えそうだ。
『3時10分、決断のとき』“3:10 to Yuma”
1957年に映画化されて日本でも公開(邦題:決断の3時10分)
されたエルモア・レナード原作西部劇のリメイク。監督は、
前作『ウォーク・ザ・ライン』をアカデミー賞5部門の候補
に導いたジェームズ・マンゴールド。
マンゴールドの監督作品は、第1作と前作以外の4作を観て
いて今回が5作目だが、何と言っても1999年の『17歳のカ
ルテ』がテーマの社会性などで印象に残るものだ。それでい
つも彼の紹介にはその作品を挙げてしまうのだが…
実は、それ以降の作品が、2002年6月に紹介したタイムトラ
ヴェル物の『ニューヨークの恋人』と、2003年9月紹介の見
事な心理劇『アイデンティティー』なのだから、多彩と言う
か守備範囲の広い監督だ。それに1997年の『コップランド』
ではしっかりと男性映画も撮っていた。
そのマンゴールド監督の新作は、ガンプレイからホースアク
ション、駅馬車の襲撃に酒場の女、ダイナマイト爆発に蒸気
機関車まで登場するサーヴィス満点の西部劇アクション映画
だった。しかも脚本には、オリジナルを手掛けたハルステッ
ド・ウェルズと共に、2008年『ウォンテッド』のデレク・ハ
ース、マイクル・ブラントが名を連ねているものだ。
物語は、元北軍の兵士で脚を負傷し、なけなしの金で西部に
は来たものの手に入れた土地は水利も悪く、牧草も乏しくて
借金に塗れた男。妻と2人の息子を養う術も絶たれかけた男
が、駅馬車強盗団の首領の逮捕に行き合わせ200ドルの金で
その護送を買って出る。
それは首領を列車の出発駅まで護送し、3時10分発の列車に
乗せるというものだったが、そこには首領の手下たちの襲撃
や、大金で主人公の決意を揺るがそうとする首領の甘言が待
ち構えていた。
僕は残念ながらオリジナルの映画化は観ていないが、プレス
資料に掲載されたストーリーを読むと物語の骨子は多少の登
場人物の異動を除いては変えられていないようだ。しかしこ
のたっぷりのアクションは、やはり最近の映画の趣だろう。
そのたっぷりのアクションをマンゴールド監督は見事な手際
で描き挙げている。そして男と男の対決。そこにはラッセル
・クロウとクリスチャン・ベイルを配して、これも見事なド
ラマに仕上げているものだ。
その他、ピーター・フォンダ、『30デイズ・ナイト』のベ
ン・フォスター、『13F』のグレッチェン・モル、『幸せ
のセラピー』のローガン・ラーマンらが共演。
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06月14日(日)
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