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On the Production
by 井口健二
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■Blood、マン・オン・ワイヤー、色即ぜねれいしょん、真夏の夜の夢、精神、BASURA、トランスポーター3
それなりの演技はしている。特に峯田は、先週紹介した『U
SB』の時とはかなり違う好感の持てる雰囲気で驚いた。
共演は、映画出演は23年振りという堀ちえみが主人公の母親
役を演じている他、リリー・フランキー、モデルの臼田あさ
美。さらに大杉漣、塩見三省、山本浩司、木村佑一、安藤サ
クラらも出演している。
なお脚本を、『リンダ・リンダ・リンダ』『ニセ札』などの
向井康介が担当しており、それもポイントだったようだ。

『真夏の夜の夢』
シェイクスピアのコメディ・ファンタシー戯曲を、『ホテル
・ハイビスカス』などの中江裕司監督が沖縄を舞台に描き直
した作品。
沖縄には昔、キジムンという精霊がいてそれぞれの島を守っ
ていたが、やがて人々の心が自然から離れるに従って消滅し
て行った。そんなキジムンが今でも島を守っている小さな島
=世嘉富島。主人公はそんな島で育ち、少女の頃にキジムン
に出会い奇跡を貰った。
そんな少女は、やがて都会に出て恋を求めたが、破れて島に
戻ってくる。その島では村長の息子の婚礼を控えて人々はそ
の披露宴の準備などに忙しかった。そしてキジムンは、その
披露宴で神称える歌“弥勒節”が歌われれば、人々の心にキ
ジムンが復活すると考えていたが…
物語の全体は沖縄芝居の構成を採っており、最初には口上が
あって、さらに劇中では披露宴の席で演じられる寸劇も挿入
されている。その沖縄芝居の構成演出は平良進・とみ夫妻が
手掛けていて、いつもの訥々とした感じとは違った平良とみ
が観られるものだ。
撮影は、沖縄本島の北西約27kmの東シナ海に浮かぶ伊是名島
で行われ、島のシンボルでもある三角形の山や、数年前に発
見されたばかりという巨大なガジュマルの樹などの大自然が
見事に映像に納められている。
主演は、大河ドラマ『風林火山』などの柴本幸。また『ホテ
ル・ハイビスカス』以来の映画出演となる蔵下穂波がキジム
ン役を伸び伸びと演じている。因に映画のクライマックスで
もある“弥勒節”のシーンは、蔵下自身が特訓の末に歌って
いるそうだ。
その他、『イエスタデイズ』などの和田聰宏、『血と骨』な
どの中村優子らが共演。さらに現地沖縄の演劇人も多数出演
している。また映画の終盤に登場する巨大魚ガーラは、海人
が特別に捕獲した本物とのことだ。
原作通りの恋の秘薬も登場してファンタスティックな物語が
展開されるが、その背景には自然破壊の乱開発や過疎の問題
なども描かれていて、正に現在の沖縄の実情を描いた作品に
もなっている。
中江監督の作品は、前作のドキュメンタリーはちょっと意味
が判らなかったが、本作では再びファンタスティックな沖縄
に戻って安心な気分になれた。

『精神』
2007年5月に紹介した『選挙』の想田和弘監督による「観察
映画」の第2作。民間の精神病施設にカメラを持ち込み、そ
こで観察された現在の精神病医療の実態が写し出される。
因に映画の中では撮影の協力を求める文書なども紹介され、
そこでは前作の評判も謳われていた。つまり監督はその実績
を踏まえて本作に取り組んでいるもので、それがこの作品を
可能にしたということでもある。それにしても重大なテーマ
を選んだものだ。
撮影されているのは「こらーる岡山」という無床診療所。そ
こは山本昌知医師という精神病医が中心となって1997年に設
立されたもので、精神病患者の社会復帰を目標に、軽作業の
作業所やショートステイの施設などが運営されている。
その施設の中にカメラが入り、診療の様子や患者の生の声な
どが、すべて実名でモザイクなどの処理も一切なしに描かれ
ている。そこに写る患者たちの姿は、正直に言って健常でな
いことは明らかだが、同時にその苦しみも共有できるほどに
鮮明に描かれている。
精神病を扱ったドキュメンタリーでは、昨年11月にも『彼女
の名はサビーヌ』と『破片のきらめき』を紹介しているが、
どの作品も希望と絶望が表裏にあるようなものばかりで、そ
の現状の厳しさが心に残ったものだ。

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04月26日(日)
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