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On the Production
by 井口健二
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■雪の下の炎、ジョニー・マッド・ドッグ、コード、マーターズ、ミュータント、伯爵夫人
植物学者の娘たち』に出ていたミレーヌ・ジャンパノイと、
新進女優のマルジャーナ・アラウィ。特にアラウィは、撮影
中に骨折もしたというかなり厳しい演技を体当たりで演じて
いる。
脚本と監督は、2011年公開が予定されている“Hellraiser”
の新作に抜擢が決まっていると言われるパスカル・ロジェ。
アジャもそうだが、フランス人のホラー監督は痛そうな描写
が得意のようだ。
なお本作は、日本でも今年秋以降に一般公開が決定している
ものだ。
『ミュータント』“Mutants”
3月12日から六本木で開催される2009フランス映画祭の中で
13日の金曜日に「ホラー・ナイト」と銘打たれて上映される
作品。
ウィルス感染の脅威に曝されている世界。そこではウィルス
の感染者たちが人肉を求めて正常な人々を襲い始めている。
そんな状況下で、1台の救急車が負傷した兵士を基地まで搬
送しようとしていた。
その救急車に乗り組んでいるのは女性救護員と男性運転手。
2人は女性兵士と共に感染者に噛みつかれた兵士の搬送をし
ていたが…やがて救急車は、雪に埋もれた医療施設だったら
しい巨大な建物に辿り着く。
まあ典型的なゾンビ物という感じだが、雪に埋もれた巨大な
建物の風景などがアメリカやイギリス映画とはまたちょっと
違った雰囲気を造り出している。
とは言っても、次々ゾンビをぶち殺して行くのはこのテーマ
の定番という感じで、まあ、話に多少の捻りはあるが、それ
以上でも以下でもない作品というところだ。もちろんそれが
好きな観客には、これで充分と言える程度ではあるが。
ただし、主人公に多少医学の知識があると言う設定で、途中
でいろいろと実験をしてみるという展開は面白かった。その
点では、ゾンビ物の中でも元祖ジョージ・A・ロメロ監督の
作品に似た感じがする部分でもあった。
出演は、エレーヌ・ド・フージュロル、フランシス・ルノー
とディダ・ディアファ。特に、女性救護員を演じるド・フー
ジュロルのちょっとクールな感じが良かった。
監督は、2007年に“Morsure”(英語題名:Bitten)という
ホラー短編作品を発表しているダヴィッド・モレル。脚本も
手掛けた本作は長編デビュー作のようだが、そつなくまとめ
ている感じはするものだ。
ただ題名の「ミュータント」は、こういう場合も突然変異と
言えるのかどうか、邦題は原題のままだから仕方はないが、
多少疑問には感じたところだ。確かに人間が変容している場
面はあるが、これは感染による変形であって突然変異ではな
いと思うのだが。
『伯爵夫人』“The Countess”
3月12日から六本木で開催される2009フランス映画祭の中で
13日の金曜日に「ホラー・ナイト」と銘打たれて上映される
作品。
17世紀初頭のハンガリー王国で、10年ほどの間に600人以上
を若い女性を殺害し、その血を啜ったり人肉を食べたとも言
われる伯爵夫人バートリ・エルジェーベト(現地マジャール
語では姓を先に書くのが正式のようだ)の生涯を描く。
吸血鬼の原典というと串刺し王ヴラド・ドラキュラが有名だ
が、同じトランシルヴァニア地方にその100年ほど後に誕生
したエルジェーベトも、ドラキュラ伝説の基になったと言わ
れる人物のようだ。
しかも、処女の血を使って自分の美貌を保とうとしたという
物語は、正に吸血鬼伝説そのもののようにも思えるものだ。
そんな物語を、昨年3月『パリ、恋人たちの2日間』を紹介
しているジュリー・デルピーが、製作、脚本、監督、主演も
兼ねて映画化した。
正直に言って、この作品をホラーとして紹介するのには抵抗
を感じる。確かに物語は吸血鬼の原典であり、映画はその状
況を描いて行くものではあるが、デルピーが描いているのは
むしろ歴史劇であり、その歴史の時代を生きた女性の姿だか
らだ。
とは言うもののこの映画では、物語を関係者の回想形式で始
めるなど、巧みにホラー映画の様式も取り入れている。その
辺り巧みさがデルピーの上手さであり、ホラー映画ファンも
納得させようとする強かさでもありそうだ。
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03月08日(日)
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