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On the Production
by 井口健二
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■ミーシャ、新宿インシデント、パニッシャー、レイン・フォール、太陽のかけら、今度の日曜日に、GOEMON
この暗殺者を椎名桔平が演じ、CIAの捜査員のリーダーに
ゲイリー・オールドマンが扮している。さらに物語は、標的
が持っていたはずの1個のメモリースティックを巡っての、
CIAと暗殺者の戦いとなって行く。
こんな物語が東京を舞台に展開される。まあ物語自体が絵空
事だと言われてしまえばそれまでだが、官僚支配の日本の政
治体制などもそれなりに反映されているし、さらにそれを裏
で牛耳ろうとするCIAの動きなども、無いとは言えなさそ
うな展開のものだ。
ただ、物語が絵空事のように観えるのは、写されている東京
の雰囲気にもあるところで、確かに秋葉原から有楽町、臨海
線までの舞台は東京の風景なのだが、そのいずれもが何処か
現実味の乏しいものになっている。
それは多分、舞台が自分の知らない街なら違和感にはならな
いのだろうが、普段暮らしている街では何か不思議な感覚だ
った。そんな違和感がさらに昇華してファンタスティックに
なればまた面白いとも思えるが、本作はそれを追求するよう
な作品ではなかった。
でもまあ、そんな一種異様な雰囲気も味わい方によっては面
白くも感じられるし、日本人ではない監督が撮ることによっ
て生じる新しい感覚とも言える。
共演は、長谷川京子、柄本明、清水美沙。因にピアニスト役
の長谷川は、ジャズピアノを吹き替えなしで演奏しているそ
うだ。
なお、原作は2002年に発表された本作を第1作として、同じ
主人公による作品が2007年まで毎年1冊ずつ計6作発表され
ているようだ。本作の評価が良ければ、映画のシリーズ化も
あるのかな。
『太陽のかけら』“Déficit”
『ブラインドネス』などで国際的に活躍するメキシコ人俳優
ガエル・ガルシア・ベルナルによる初監督作品。
父親が政治家か官僚という感じの若者が、両親の居ぬ間に自
宅の邸宅に仲間を引き入れて乱痴気パーティを繰り広げる。
そこには彼の妹の仲間も集っていて、まさに無軌道な若者の
生態が描かれていく。
また、新参加の女性を見初めた主人公が、後から来る恋人の
到着を遅らせるためにわざと間違った道順を伝えたり、酒や
ドラッグに浸るなど、まさしく刹那的に生きる若者の姿が描
かれている。
その一方で、使用人のインディオに対してはフレンドリーで
あるかのように見せて、実は差別しているなど、屈折した若
者の心理も描かれる。画面外からは打ち上げ花火の音が聞こ
え、町ではお祭りが開かれている日のことのようだ。
最初の内は、唯々若者たちの無軌道ぶりが描かれている。し
かしそこに徐々に現実の厳しさが入り込んでくる。それは人
種差別であったり、社会の経済破綻であったり、まさに今、
世界中が直面している問題も描かれている。
脚本はキッザ・テラサスという人物が書いているが、原案は
ベルナル自身のもののようだ。そのベルナルの視点は、見事
に現在の若者が抱える問題を見詰めたものであり、ちょっと
ファンタスティックでもあるメキシコの風景の中で現実的な
物語を描き切っている。
因に原題は「不足、劣性」といった意味のようで、「危機」
「低下」「不安定」などの単語と共に、ベルナルの育ってき
た環境の中に常にあった言葉だそうだ。それがメキシコ人の
考えるメキシコの現実なのだろうか。
主人公をベルナルが演じている他、親友ディエゴ・ルナの恋
人と言われるカミラ・ソディが妹役で出演。因にルナは本作
のプロデューサーに名を連ねている。その他は、モデルなど
ベルナルの普段の仲間たちのようだ。
なお本作は、2007年カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に
出品されて居合わせた監督たちから絶賛され、2008年の初夏
からのメキシコ公開では5カ月に及ぶロングランを記録した
とのことだ。
『今度の日曜日に』
2007年上期選出の日本映画エンジェル大賞受賞作。日本の大
学で映像を学んでいる韓国からの女子留学生と、その被写体
に選ばれた中年日本人男性を描く日韓交流ドラマ。
主人公は、映像を学ぶため日本に留学した先輩の後を追って
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02月22日(日)
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