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On the Production
by 井口健二
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■第176回
だが、『スターゲート』から『GODZILLA』『紀元前1万年』
もこなすSF大好きの監督が、果たしてどのような未来図を
描き出してくれるか、楽しみなことだ。
* *
次も長年の計画で、2007年6月1日付第136回などで紹介
してきた“Masters of the Universe”の映画化が、ジョー
ル・シルヴァの製作と、『カンフー・パンダ』の共同監督を
務めたジョン・スティーヴンスンの実写監督初挑戦で進めら
れることになった。
計画はマテル社が発売する男の子向けのキャラクター人形
に基づくもので、その設定は、地球の中世にも似た魔法世界
エターニアを舞台に、超能力を持ったHe-Manと呼ばれるヒー
ローと、スケルターと名告るアンチヒーロー率いる悪の軍団
との戦いを描くというもの。同じ設定からは、1987年にドル
フ・ラングレンのHe-Man役、今年のオスカーに『フロスト/
ニクソン』でノミネートされているフランク・ランジェラの
スケルター役での映画化も行われている。
その再映画化を、過去にはジム・ヘンスンと『ダーク・ク
リスタル』『ラビリンス』や、ディズニーで『ジャイアント
・ピーチ』などにも参加していたスティーヴンスン監督の手
で進めることになったもので、かなりファンタスティックな
作品が期待できそうだ。因に脚本は、今月公開の『ストリー
トファイター/ザ・レジェンド・オブ・チュンリー』を手掛
けたジャスティン・マークスによる第1稿がすでに完成され
ているようだ。
ただしスティーヴンスン監督は、この計画に最初はあまり
乗り気ではなかったそうだ。それが心変わりしたのは、監督
自身がマテル社に招かれて、開発中のデザインやコンセプト
アートを見学してのことで、「そこは、エスコート無しでは
入れない場所なのだが、そこには特別な衣裳や神秘的な生物
や建物などのデザインがぐるりと置かれていて、正に我々が
作るべき世界が提示されていた。それを見た途端、『これは
やれるぞ』と思った」とのことだ。
一方、この計画にはマテル社側から製作総指揮の担当者が
派遣されるなど、玩具会社もかなり気合いを入れた映画化に
なりそうだ。その担当者のバリー・ウォルドは、「スティー
ヴンスンのヴィジョンは、マテル社が希望するメイジャー・
スタジオでのHe-Manの活躍を確実なものにしてくれた」とし
て、監督の考えを尊重する意向を表明している。
なお玩具のコンセプトを映画化するこの計画は、今年6月
26日全米公開の“Transformers: Revenge of the Fallen”
や、8月7日公開予定“G.I.Joe: The Rise of Cobra”の流
れを汲むものだが、さらにマテル社とワーナー=ジョール・
シルヴァでは、2004年7月15日付第67回での紹介当時はコロ
ムビアの計画としていた“Hot Wheels”の映画化も進めてい
るそうだ。
* *
お次はちょっとやばそうな計画で、ドイツのUFAシネマ
から“Fatherland”という計画が発表されている。
この作品、イギリスの作家ロバート・ハリスが1992年に出
版した同名のデビュー作を映画化するもので、その内容は、
第2次世界大戦でナチスドイツが勝利して、イギリスがベル
リンの支配下となっている世界を舞台にしたもの。物語は、
その設定下での政治ミステリーが描かれるとのことで、同じ
原作からは1994年にアメリカでルトガー・ハウアー主演によ
るテレビ映画もあるが、戦前のナチスの宣伝映画を作り続け
たUFAの名前の付いた会社での映画化というのは、かなり
刺激的なものだ。
なお、ヨーロッパ最大のメディアとされるRTLグループ
の傘下で昨年設立されたUFAシネマでは、総数で80の製作
計画が進行中とのことで、今回の作品もその1本でしかない
ものだが、日本でも昨年末に、第2次世界大戦がなく旧帝国
体制が継続した歴史を背景にした作品があったようで、この
手の話は特に政権が右傾化しやすい経済不況下では受けると
いうことなのかな。
因にハリスの原作では、2007年11月15日付第147回で紹介
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02月01日(日)
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