ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460266hit]
■パラレル、桃まつりkiss!、エリートヤンキー三郎、フロスト×ニクソン、60歳のラブレター、バーン・アフター…、ダイアナの選択
の1人だった。
イギリスとオーストラリアでトーク番組を持ちながらも将来
に不安を感じていたフロストは、その視聴者数に驚くと同時
に、もしニクソンとの単独インタヴューに成功したら、自分
をもっと高みに導くことができると思い立つ。そしてその準
備を開始するが…
一方、政界復帰を目指すニクソンは、起死回生の弁明のチャ
ンスを伺っていた。そこで、単独インタヴューを申し入れた
フロストに与し易しと判断した側近たちは、法外な出演料で
牽制しながらも単独インタヴューに応じることを回答する。
ところが、コメディアン出身の司会者が老練な政治家相手に
単独インタヴューするという無謀な企画には、スポンサーも
容易に見つからない。そして充分な準備もできないままに、
収録の日がやってきてしまう。
1977年3月23日からイースター休暇を挟んで4回に分けて行
われるインタヴューで、フロストはニクソンから全ての真実
を聞き出すことができるのか…。1977年5月の放送ではアメ
リカテレビ史上最高の視聴率を叩き出したとされる番組制作
の裏側が明らかにされる。
基はピーター・モーガンがロンドンで上演した舞台劇。モー
ガン自身が舞台劇として完成させた戯曲をさらに映画用の脚
本として再構築し、2001年『ビューティフル・マインド』で
オスカー受賞のロン・ハワードの監督で映画化した。
出演は、舞台でも同じ役を演じたニクソン=フランク・ラン
ジェラと、フロスト=マイクル・シーン。他に、ケヴィン・
ベーコン、トビー・ジョーンズ、オリヴァー・プラット、サ
ム・ロックウェル、マシュー・マクファデン、レベッカ・ホ
ールらが共演している。
僕は、ちょうど1974年8月9日に夏休みを利用してロサンゼ
ルスに行っていて、実は生中継は観ていなかったが、辞任を
報じる新聞の号外は部屋のどこかにしまってあるはずだ。
従ってこの出来事には思い出深いものがあるが、映画はその
時の話ではなくて、その後のフロストとニクソンの対決が描
かれている。それは正に死力を尽くした戦いであり、それに
よって1人が勝ち残り、1人が葬り去られた。
しかしそれは政治上の話であって、この映画が描く人間的な
側面では互いの名誉も充分に尊重されている。だからこそ、
この作品は名作と呼べるのであって、そこにはニクソンの遺
族の協力も得られているものだ。
なお撮影は、ニクソンの住居だったラ・カーサ・パシフィカ
からビバリー・ヒルトン、さらにシネラマドームまで、ほと
んどが実際の場所で行われている。またクライマックスの後
の登場するミニチュアダックスの老犬の姿も印象的だった。
『60歳のラブレター』
2000年から毎年募集され、すでに8万通を超える葉書が寄せ
られたという住友信託銀行主催の企画からヒントを得て製作
された作品。
中村雅俊と原田美枝子、井上順と戸田恵子、イッセー尾形と
綾戸智恵が演じる3組のカップルを巡る熟年男女の生き様が
描かれる。
1組目は、建設会社の重役で定年を迎えるまで家庭も顧みず
やってきた男とその妻。2組目は、医療の研究職を目指しな
がら研究は海外に先を越され、その後は医者になっても妻の
病も見つけられなかった男と、仕事一筋で恋に恵まれなかっ
た女性翻訳家。
3組目は、GSブームの頃にはバンドを組み芸能界も目指し
た男とその追っ掛けだった女。でも結局は家業を継いでこつ
こつ魚屋を営んできた。こんな正に団塊の世代の男女が60歳
を迎えて、将来や健康やその他の諸々のことに惑い、そこか
ら一筋の道を見つけだすまでが描かれる。
映画の物語は、3つの物語が互いに交錯しながらも独立に進
んで行く構成となっており、その脚本はスマートに作られて
いる。その脚本を手掛けたのは、『Aways三丁目の夕日』な
どの古沢良太。人の情感の機微を描くことはお手のものだ。
そして監督は、昨年公開された『真木栗の穴』の深川栄洋。
監督の前作も僕は評価しているが、監督、脚本家共に1970年
代の生まれの若い感性が、年配者の気持ちを暖かく包み込ん
[5]続きを読む
01月25日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る