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On the Production
by 井口健二
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■ワンダーラスト、アイズ、天使のいた屋上、猫ラーメン大将、未来を写した子どもたち、ワールド・オブ・ライズ、ホルテン、チェチェンへ
をぼかす程度のものだが。しかしこのチープさが河崎作品の
信条でもある…というところだ。
そしてこの大将と将軍の声優を、古谷徹、加藤精三の『巨人
の星』飛雄馬、一徹コンビが担当。またラーメン屋の親父役
には黒沢年雄が出演して「時には醤油のように〜」とちょっ
と照れながら歌うなど、分かり易いパロディも満載の作品と
なっている。
その他、河崎監督の前作『ギララの逆襲』に出演の加藤和樹
や、『ラバーズ★ハイ』『ロックンロール☆ダイエット!』
の長澤奈央、沙綾らが共演。さらに実在のキャットアイドル
のたま駅長や、かりん&くりんなども登場する。
原作は、そにしけんじという人の4コマ漫画だそうで、とい
うことは原作は単発ギャグが中心と思われるが、そこに親子
の確執や芸能界の裏話的なストーリーを入れ込んで、長編映
画に仕上げている。
さらにグルメブームやテレビの対決シリーズなどの要素も取
り入れて、正にてんこ盛りのサーヴィス精神の作品。細かい
ことには眼を瞑って、まずは気楽に楽しもう。

『未来を写した子どもたち』
   “Born into Brothels: Calcutta's Red Light Kids”
カルカッタ(近頃ではカルカタと呼ぶようだ)の売春地帯で
暮らす子供の姿たちを追ったドキュメンタリー。
中心となるのはニューヨーク在住の女性フォトジャーナリス
ト=ザナ・ブリスキ。彼女は1998年からカルカタの売春街に
入り込み、住人たちの信頼を得て写真を撮り続けている。そ
して彼女は、そこに暮らす子供たちにカメラを渡し、自由に
撮影させることを始めた。
そこには8人の子供たちが集まり、彼らが撮影した写真は豊
かな感性に満ちあふれたものばかりだった。そしてそこから
は、若手写真家の登竜門でもあるアムステルダムで開かれる
ワールドフォトプレス・ファウンデーションに招待される子
供も誕生する。
しかしその渡欧のためのパスポートの取得にも障害が発生す
る。そんな過酷な環境の中でも懸命に生き抜いて行こうとす
る子供たちを、彼女も懸命に支援しているのだが…
映画の巻末には、必ずしも全ての子供たちを救い出せなかっ
たことが告白されている。それほどに厳しい環境の中でも、
子供たちは、あるときは屈託のない笑顔を見せてくれる。そ
の姿には、誰しも支援したいという気持ちが湧くが、それも
叶わない現実が描かれる。
もちろんそこには、対外的な表面だけを繕うのに懸命な政府
の無策もあるのだろうが、実は差別的な身分制度カーストの
中で娼婦というのは比較的上の方に属するという歴史的な背
景も、状況を改善できない理由の一つであるようだ。
その一方でニューヨークでの展示会が成功したり、その凱旋
展示会に取材が入ったりというメディアの力が彼らの意識を
変えて行くことはあるようだ。それで、現在はアメリカに留
学してM・ナイト・シャマランらが学んだ大学に進学する子
供もいるものだ。
従ってこういう状況にメディアが利用できることは確かなよ
うだ。でも全てを変えることはできない。因に、今も売春街
に暮らす子供たちは、折角入学できた寄宿学校から親たちが
連れ出したというものだ。その中には親元に戻されても大学
進学を夢見ている子供もいるようだが…
もちろん軽々しく何をできるかなどと論じられる問題ではな
い。現実の重さがひしひしと感じられる作品。そんな現実と
の狭間が歯痒く感じられる作品でもあった。

『ワールド・オブ・ライズ』“Body of Lies”
元ワシントン・ポスト紙の外信部長で、イラクのクウェート
侵攻に関する特集記事で同紙にピュリッツアー賞をもたらし
たデイヴィッド・イグネシアス原作の長編小説の映画化。因
に原作はフィクションだが、限りなく現実に則したものと言
われる。
主人公は中近東で活動するCIAのエージェント。アラビア
語も堪能な彼が追っているのは爆弾テロ組織の首謀者。とこ
ろがその組織は、犯行声明も出さず、携帯電話やeメールも
使わない。犯行の指令は全て口伝えで連絡されるのだ。その

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10月12日(日)
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