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On the Production
by 井口健二
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■ターミネーター:サラ・コナー、イーグル・アイ、最強☆彼女、青い鳥、旅立ち、ノン子36歳
をクラスに戻し、毎朝机に向かって挨拶をするようになる。
そんな教師のやり方に、クラスの生徒たちはもちろん、事件
は解決済みだとする学校側も反発するが、教師は頑として態
度を改めようとしない。しかしその波紋は、徐々に生徒たち
の心に広がり、そこに閉ざされていたものを解いて行くこと
になる。
映画に描かれる生徒の反発や、学校側の事なかれ主義は正に
リアルで、本当の現場はこんなものなのだろうと思わせる。
その点での本作は、現代の教育現場の問題を見事に描き切っ
たと言えるものだろう。
しかも映画では、阿部寛演じる臨時教師の吃音が最初は煩わ
しくも感じられ、その時点で自分も生徒の立場に立っている
ことに気付かされる。つまりこの時点で、観客は生徒の立場
に立たされ、以後の彼らの思いにも真剣に立ち向かわざるを
得なくなる仕組みだ。
そして生徒たちは自分で考え、自分で答えを見つけ出して行
く。この生徒の行動こそが、現在の日本の教育現場で最も欠
けているところであり、それに気付かせようとする原作者の
意図がこの映画化にもはっきりと描かれている。
実際、この作品のオーディションに参加した1200人を超える
若手俳優の中で、3割がいじめを受けたことがあり、残りの
7割は自分の周囲にいじめがあると認識していたそうだ。そ
んな時代にこの作品は重要なメッセージを発信する。
もちろん、これでも甘いと言われればそれまでのことだが、
こんなところにでも希望を抱かなければ、今後の日本の教育
は全くお先真っ暗と言わなければならない。そしてそんな現
実を何とかして変えて行かなければならないのだ。
生徒側の主演は、『HINOKIO』『シルク』などの本郷
奏多。また『水の旅人』『遠くの空に消えた』などの伊藤歩
が同僚教師役で共演している。

『旅立ち〜足寄より〜』
1955年生れ、今年53歳を迎えた北海道在住フォークシンガー
松山千春が23歳の時に発表した自伝の映画化。
昭和50年、札幌で開催された「全国フォーク音楽祭・北海道
大会」に出演した松山は、ステージ上での言動が禍して落選
するが、その会場に審査員として出席していたSTVラジオ
のディレクター竹田に声を掛けられる。
そして足寄に戻った松山は、地元新聞を一人で発行している
父親を手伝いながら、竹田の言葉を信じて曲を作り続ける。
一方、竹田は札幌で松山を番組に起用しようとするが、すで
にフォークの時代は終ったとする上層部の許可はなかなか得
られない。
それでも、北海道出身の歌手を育てたいと願い続ける竹田の
努力は、ようやく実を結ぶ日が来るが…
僕は60年代後半の反戦フォークは学園紛争とも重なってよく
聴いていたし、高石友也、岡林信康、五つの赤い風船などの
渋谷公会堂で開かれるコンサートにも通っていたものだ。し
かしその後の軟弱なフォーク路線には興味も湧かず、以後は
聴くこともなかった。
従って松山千春もほとんど聴いたこともなかったし、正直に
言って最近の彼が発する特定の政治家に関する言動には、あ
まり良い印象も持っていなかった。
だからこの映画を観て一番驚いたのは、松山がまるっきりの
フォークシンガーで、歌っている内容も土に根差した全くの
フォークソングであったことだ。そうと知っていれば、この
映画を観ることにも躊躇はなかったと思ったところだ。
そんな訳で、ちょっと蟠りが解けながら観た作品と言うこと
もあるかも知れないが、映画の後半では見事に填められて、
涙を流す羽目にも陥ってしまった。
ただしこれは、映画の中でも事前に述べられているように、
実にうまく泣きが入るように仕組まれた構成の見事さにもあ
るもので、その辺に演出家の手腕も感じられたところだ。そ
の監督は、長島一茂主演『ポストマン』などの今井和久が担
当している。
出演は、松山役に『クローズZERO』などの大東俊介。な
お劇中の歌唱は全て松山本人の音源が使用されているが、ギ
ターの演奏や特に前半のアマチュア時代のシーンは上手く作
られていた。

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10月05日(日)
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